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6-3

猛暑が続きますね。

皆様、体調管理にご注意ください。

闘士見習いの奴隷となりました森山実留です。

名もなきA17番です。

自由を目指して強くなりますぅ!





翌日の朝に皆が出て行った後に暫くすると

坊主頭の大人が入ってきてボディチェックを受けた。

一言、脱げと言われ終始無言で傷痕や頭を重点的に見られた。


「怪我は問題ない体に異常もなさそうだ

 今日から外に出ても良いだろう、来い」


それだけ言うと部屋から出て行ったので後を着いて行く。

部屋を出ると薄暗い通路で進んだ先は広い場所だった。

踏み固められた土の地面と周囲を覆う高い壁。

屋根は無いので広く解放感はあるが殺伐とした空気が漂っている。


そこには俺と同じような服装をした者達が

走ったり剣を振ったりしている。

中には殴り合いをしている者達もいる。


ここは訓練場か。

種族は様々だが・・・・獣人系や亜人系は少なく見える。

人族かそれに近い者が大半のようで

若いのが多いがそうでもなさそうな者もチラホラと居る。


それらを大人達・・・教官か指導員って感じ者が指示し鍛えている。

見た感じだと訓練生数人と教官を一組として動いているようだ。

気になるのは教官達には獣人系が多いって事かな。

まぁ素の肉体の能力的には獣人系は高いから理に適ってると言えばそうだが。

それにこの国には多い種族だしな。


「おい、ディズよ

 確かお前、今は担当無しだったよな

 A17に此処のルールを教えてやれ

 どうも先日の試験の怪我で飛んじまったようでな」


坊主頭はテーブルに座ってボケっと訓練場を見ていた

暇そうな教官の1人に声を掛けた。


「お、そいつは久々ですね

 拾い物じゃないですか

 当たりそうですかね?」


「どうだろうな

 そうなれば良いが大概はハズレだ」


頼んだぞと頭の上で手をヒラヒラと振りながら坊主頭は

教官の1人に俺を託し何処かにいってしまった。

1つ欠伸をしてからテーブルから立ち俺をジロジロと見る。

片足を少し引き摺るようにしているが力強さを感じる。


「まぁとりあえず自己紹介しとくわ」


そう言って軽い口調で色々と話してくれた。


=========================

名前:ディズ

性別:男

職業:闘士養成所教官

種族:テリス族


≪テリス族≫


犬族の一種とされるが狼族に近い特性を持つ。

外見は犬族系に近く差異は少ない。

動体視力と反射速度が特に優れている。

=========================


テリス族ね・・・・。

つうか獣人系、亜人系は派生や種類が多くてよくわかんねーな。

ある程度の規模の人数が居れば種族として認められる感じっぽいし。

まぁ戸籍管理とかも徹底してる訳じゃ無さそうだしな・・・。


さて、俺に此処の事を教えてくれるとなった教官は

ディズと言う名で元闘士で今は教官をしているとの事。

足を怪我する前は結構イケてたんだぜと言う彼はまだ若く見える。

右足を軽く引きずってはいるが獣人族特有の力強くしなやかな体は強く見えるし

そこらへんの教官達よりも強そうな感じを受ける。


此処について説明して貰った内容でサエリア以外に分かった事を纏めると


・ここは持ち主の意向で人族に近い者達が集められている。

・奴隷ではあるが最低限の生活は保障される

・ここは試験前の新人を育てる施設で

 通常はA、B、C、Dの20人前後のクラス別けをされていて

 それに+αで100人程度が訓練生として居る

・怪我や病気の手当てはして貰えるが酷い=金が掛り過ぎる

 と判断された場合は放置される事もある

・身に付けられているリング類は逃亡と反乱を抑制する為の物で

 魔法を行使する事は出来ない。

 無理に行えば自分を含めて周囲にも苦痛が与えられる。

 指定エリア外への移動も同じだそうだ。


余談ではあるが魔法を使うグループを魔法組と呼び

使わないグループを無魔法組と呼ぶそうだ。

どちらに所属しても出場は可能だが魔法組が

無魔法組に出場する場合は似た様な魔道具を装着するとの事。

そう言うモノなんなのかと思ったが

純粋な戦闘を見たいという層も多いんだそうだ。

更に言えばここは無魔法組の闘士を重点的に鍛えてる養成所との事。


「まぁ、俺が説明できるのは以上だ

 理解出来たか?

 後はまぁ自分で体験してみないとわかねぇだろ」


「あ、はい」


「お前達は奴隷だが大切な商品でもある

 他所の奴隷たちよりかは良い暮らしだとは思うぞ

 最低限の生活は保障されているし

 食い物もちゃんと出るだろ?質はさておきな」


「そうですね・・・あまり美味しくはないですが」


「はは、奴隷で衣食住が最低限でも保障されてるなんて

 破格の環境だと思うけどな

 だがまぁ命を賭けるしかないってのは同情するがね

 身分を買い戻す事が出来るって望みはあるけどな」


「それは希望ですね」


「あぁ、極細い道ではあるがな

 何も無いよりはマシだろうぜ」


「そう言えば先程言っていた拾い物と言うのは

 どういった意味なんですか?」


「この国にはよ偶に居るんだよお前みたいな奴がさ

 まぁ他所の国の事は余り知らねぇからこの国だけかどうかはわかんねぇけどよ

 怪我や病気で奇跡的に助かった後に記憶が飛んだり

 変な事を言ったり知らない事を知ってたりな

 俺達は"死に戻り"って呼んでるけどな」


「でも今までの記憶が無いのは不便と言うか不味いのでは?」


「いや、そうでもないぜ

 どうせ此処は戦って生き残るしかねーんだ

 記憶なんかはあっても無くても俺達は問題にしてない」


「戦えれば良いって事ですか?」


「そりゃそうだろ

 お前達が実力を付けて闘士にならなければ

 此処も俺達も金が入ってこねぇんだからな」


「つまりは死なずに良かったって事ですか?」


「うーん、それもあるがな

 死に戻りの連中ってのは時折何かに目覚めたりするんだわ

 それがお前に当てハマるかはわからねぇが

 そうなりゃ当たりだろって事さ」


「目覚める?神の加護のようなものですか?」


「そりゃ様々だな、高い回復能力や強靭な体を手に入れたりな

 急に魔法が使えるようになる奴も居たりするらしいぜ 

 神の加護を受けるのも居るがそりゃもっと少ないな」


「ふーむ、どちらかと言うと能力とか技能的な感じなんですね」


「そうだな、神さんの加護と言うよりはもっと戦いに向いた感じだな

 もっとも死の間際から戻って来れるんだ何かしらの力はあるんだろうさ

 元々持っていたモノが出てきたのか死にかけて手に入れたのかはわかんないがな

 それに何も無ければまた死にかけるか死ぬだけさ

 たまたま運が良かっただけって事かもしれねぇしな」


「非情なんですね」


「こっちも商売だからな

 それにまぁ・・・・死んで欲しいとは思ってねぇぞ

 俺達だって手塩に掛けて育てたモンが死んじまうのは嫌なもんさ

 それに直接指導した奴が良い成績を残せば実入りも良くなるしな」


「ストレートですね」


「お互いに利害関係が一致してるって事だろ?

 俺達は戦い方を生き方を教える

 お前達は生き残る事が出来て明日を掴める

 それで俺達は潤うってな」


「それは確かに・・・・」


「まぁそんな能力持ちや加護持ちになれる奴なんざ

 戻って来たやつの中でも更に一握りだ

 殆どの奴は戻ってこれてもそこで終わりさ」 


「そうですか」


「まぁ落ち込むな

 俺は結構見込みありだと思うぜ」


「どうしてでしょう?」


「死にかけて記憶も無い奴がそんなに落ち着いてるかよ

 それに記憶が無いって事は状況を判断する材料も無いって事なのに

 お前は普通に受け答えした上に理解もしてるようだしな

 何かあるんじゃないかって思うだけさ」


「それは・・・」


「殆ど勘みたいなもんだけどな

 あながち間違ってないと思うぜ

 上手く行けばこのまま担当になる事も出来るだろうし

 俺にも運が向いて来たって事かな

 まぁ期待してるぜA17君よ」


なんとも微妙な流れになってきた・・・。

素性を気にしないのは良い所だが

自由に動けるようになるのは何時になるんだ?


それに訓練場に人族やそれに近い外見の者が多いのは

主人、オーナーの意向ってのもひっかかるな。

となると他では亜人や獣人が多い所もあるって事だろ?

基本的の肉体スペックで言えば人族は他の種族に比べて秀でている部分は少ない。

それが魔法禁止での戦いだとすると不利じゃないかとは思うんだけどなぁ。



ディズに着いて回り施設内の事を色々と説明された。

訓練生でもある俺は基本的に動ける範囲は狭い。

複数ある訓練場とトイレと風呂だけだ。

それも許可が必要だ。


訓練生1人~5人程度に一人の教官が担当しそれぞれ訓練を行う。

教官によっては色々と重視するポイントが違うので

適性に合った教官に仕えれるかは運だ。

教官同士で納得すれば訓練生の交換は可能だそうだ。


その後、ディズは希望を出し俺の担当教官となった。

先日まで担当していた訓練生が試験に合格して此処を出た事と

訓練中の事故で死んだ事で担当が居なかったのも幸いしたんだろう。

俺の元担当教官は既に新しい訓練生を受け持ってたのも要因だ。


俺にとっては良いのか悪いのかはわからないが

本人の言い分を聞くには相当な実力者だったって事だ。

実際に闘士として戦っていた経験は役に立つしな。


ところで"死に戻り"なんて言葉がある位だから

俺のような存在を欲しがる教官も他に居るかと思ったんだが

覚醒するような奴は死の淵から戻って来た中でも本当に稀な存在で

それに期待して手を掛けるのは効率が悪いかららしい。

当たればラッキーとは嘘でも何でもなかったようだ。



翌日から訓練を再開する事が決まり大部屋に戻された。

勿論、疲れ果てた同室の者達は言葉を発する事も少なく

泥の様に眠るだけだ。


それに無理矢理に脱走しても構わないが

この魔道具って最悪の場合、死に至る事もあるって言うしなぁ。

俺は多分死なないだろうけどそれで周りに影響があるのも嫌だし。

とりあえず様子を見るしかないか。


「ある程度なら治療もして貰えるし

 食事もあれば寝る場所もある

 大きな怪我や病気もしないのも強さの一部って考えか

 何ともまぁ・・・・ヤレヤレだ」




翌日は個別訓練場に連れてこられた。

一般的な闘技場と同程度の広さを確保されているが勿論、観客席等は無い。

寧ろ隔離されている場所の為、人目が無く教官独自の訓練に使われたりする。

勿論、逃亡抑制用の仕組みはキッチリと整備されていて

養成所にはこのような訓練場が幾つも併設されているんだそうだ。


「早速だが今日は実力を見せて貰おうか」


「実力ですか?」


「あぁ、どの程度動けるかを知りたい

 試験に臨んだって事は一定以上の実力はあるはずだ

 戦い方を仕込む前にどの程度動けるかを知っとかないとな」


簡易的な武具を渡してきてディズも同じ物を装着する。

鎧は革製で要所しか守られていない。

武器は剣だが刃を潰されていると言えども鉄製だ。


武具を装着し軽く運動をして体を温める。

お互いに準備が整うと武器を構え対面する。


「うし、じゃぁ適当に捌けよ

 んで攻撃してこい」


「え?」


そう言って大きく踏み出し剣を振り下ろしてくる。

身長差もあり上段から頭を潰すかの勢いだ。

踏込みも剣筋も訓練と言うには鋭すぎる気がするぞ。


「ちょ、急に!」


「オラオラ

 相手は待ってはくんねーぞ」


≪軌道予測≫で剣筋がわかるし

転生によって能力値で底上げされた体は驚くほどに良く動く。

ギリギリを躱し時には剣を使い捌いていく。


「ハハ、こりゃ当たりかな

 その動きは既に訓練生のレベルじゃないぜ

 少しずつ上げてくぞ」


ディズの剣先は少しづつ鋭く速くなり体捌きの無駄も減っていく。

多分だが素の身体能力と各スキル発動で俺の身体能力はディズを上回るだろう。

魔法を使うまでもなく完封出来そうな位だ。

攻撃を捌きつつもどうしたモノかなぁと≪思考高速化≫で間延びした時間の中で考える。


「おいおい、お前は本当に訓練生か?

 ちょと本気になっちまいそうじゃねーか」


「いやいや、これでも限界ギリギリですよ」


「ハハ、言うね!

 訓練生がこの攻撃を捌きながら受け答えが出来るかよ」


「そんなものなんですかね?」


「ハッまぁ良い

 ここには人目は無いから安心しな!

 お前も・・・俺もな!」


次の瞬間、ディズの速度が一瞬だが爆発的に上がった。

ズドンと踏込んだ音を置き去りにし距離を詰め

剣を最短の動きで俺に向かわせる。


「なっ?!」


虚を突かれた俺にディズの剣が襲いかかる。

距離も潰されてるので避けるには難しく直撃すれば結構なダメージだろう。


「チッ」


更に体を強化しディズの剣に片腕の腕力だけで俺の剣を無理矢理叩きつける。

ギィンと甲高い音がしディズの手から剣が離れた。


勝負ありと思った次の瞬間にディズが更に踏込み込んでくる。

その速度は先程ではないが勢いを伴った踏込みだ。

最初から剣を捨てるつもりだったのか?

流石は熟練の闘士ってやつかね。

ディズのニヤけた顔が妙に目につく。


拳を握りしめてコンパクトな動きで狙ってくる。

だがそんなんでスキル強化された俺に敵うと思うなよ。

視界にハッキリと映るディズの動き。

倒れ込む様に体重を落として外側にギリギリで避けるよう移動を開始。

これで外側から腕を抑え込めば終わるだろう。

伸びきる前の腕から逃げようとした時にディズの顔がニヤリと歪む。


ディズが一瞬ブレたかと思うと拳速度が跳ね上がる。

反射的にディズの拳を弾き此方から距離を詰め

力任せに足を持ち上げて膝蹴りをお見舞いする。

モロに入って崩れ落ちるようディズは倒れた。


どうも一瞬だけだが爆発的な速度を出せるようだ。

魔法を使ってる様な感じは受けないが・・・。


「あ、やっちった」


「ゲホッゲホッ」


胃の中を軽く出しながら咳き込むディズ。


「何だよお前!強いじゃねーかよ!」


ディズは息を整えドガッと座り込む。


「てめぇ、どういったこった

 俺の足は満足に動かねーが

 それを差し引いても強すぎじゃねぇか?」


「死に戻りって奴じゃないですか?」


俺はディズの目を見て真っ直ぐに答える。


「お前の今の強さは新人闘士を軽く上回るぞ?

 それで通じると思ってるのか?」


「通じるも何もそれが全てじゃないですか?

 試験で死にかけたのは本当ですし・・・

 自分が此処に来てからの記録はあると思いますよ」


目を逸らさずに見つめ続ける。


「・・・・・・ハハ、ちげーねぇ

 何があった所でお前はここの訓練生で俺は担当の教官だ

 お前が死なずに勝てば自由が近くなり俺は潤う

 闘士の世界は強さが全てだ

 罪人ですら強ければ自由になれるんだ

 死に戻ったお前の中身がどうであれ関係はないわな」


ディズはおどけた様に肩をあげて笑う。


「そう言う訳で宜しくお願いしますよ

 ディズ教官殿」


「俺に教えれる事なんてあるのかね

 訓練生A17番君」


「とりあえず先程の急に動きが良くなった理由を

 教えて貰いたいんですけどね」


「おま!アレは俺のとっておきだぞ」


「教官を潤わすためには強くならなければいけませんからね」


「ハハ、原理は簡単だけど難しいんだぜ」


片手を差し出しディズを立たせる。


「どっちが教官なんだかな」


空笑いしたディズは剣を拾った。


「さて、訓練は容赦しないぜ?

 ビシバシいくからな訓練生君よ」

転生の能力値ボーナスはちゃんと機能してたんですねー。

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