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暖かいですねー。
レビュー更新頂きました。
ありがたい事です。
現在、首都サイラスでもっとも凄い場所に潜伏中の森山実留です。
目の前では世界神の加護を持つ者達の会談が行われてます。
これってもう世界でもトップレベルの会議ですよ。
凄いなぁ・・・・。
あ、自分も同じ加護持ちでした!
「君達が揃って私の前に現れるとはね
聖女君は私が呼んだんだが勇者君も一緒とは
珍しい事もあるものだ
まぁ・・・・私の方も話したい事があったから都合が良い
歓迎しようじゃないか勇者君、聖女君」
「お時間を作って頂きありがとうございます
事が重大になると思い勇者様は私が呼びました
近くに居てくれて良かったです」
「聖女殿の頼みであれば余程の事だろう
お前と二人で会うなんて碌な事にならないだろうしな」
「聖女君の頼みでねぇ・・・・
たまたま近くに居たと言うよりは
我が国・・・と言うよりは私の事を常時監視しているの間違いだろう?
そういえば憑代の彼はサイラスで活躍している冒険者に良く似ているね」
「チッ」
直球の言葉を投げてくる魔王に否定しない勇者。
憑代をサイラスに常駐させているのは暗黙の了解なんだろう。
実里ですらそれがわかっている程に。
もっとも憑代と言えども国王たる勇者を呼べるのは
限られた人物しか居ないのも確かだ。
多分、サイラスに常設されているグリンバーグ領事館から
実里が勇者宛にメッセージを送ったのだろう。
「さて、ここで無駄話をしていても仕方がない用件に入ろう
ふむ・・・・
報告があった時はまさかと思ったが
本当に"神"が我が領地に現れたとはな
そしてそれを抑え込む迷宮か」
実里が事前に出しておいたと思われる
書類を見ながら魔王が呟くように漏らす。
やはり老人神の事についてのようだ。
「はい
事が重大と判断し代理人ではなく私が参りました
現地の迷宮は力を抑えつけるような構造をしています
かなり高度な作りの様で私も現地に出向いて気付けた位ですから」
「聖女君がそれでは私では駄目だな
私ではここからでは感知出来ないのも仕方がないか
・・・厄介だな」
「聖女殿よ
それは加護者とは違うのか?
高位神の加護者であれば神の力も強く感じるとは思うのだが?」
「アレは間違いなく"神"の力を持った存在です
加護者とは異質の・・・格の違う強さを感じました」
「まぁ・・・聖女君が言うのであれば
それは"神"またはそれに類する存在と考えた方が良いだろう」
「その神の存在によって浄化作戦に影響が出ています
現在も影響範囲は拡大しており
このままだと魔王領自体にも相当な被害が出てしまうかと
現場では浄化と聖域化の処置をしていますので瘴気の軽減は出来ても
直接の要因となる神を対処しない事には・・・」
「瘴気の原因が神とはね
だが・・・・浄化作戦が遅れるのも困るのだよ
国境辺りもキナ臭くなってきているし
領土内で大規模な影響は面倒だ」
「ハッ、キナ臭いのは魔族が原因だろうが
こっちも迷惑なんだ」
「ふむ?
確かに聖女君や勇者君のとこと我が国民が
余り芳しくない関係なのは知っている」
「えぇ・・・・残念ながら
最近は各地で聖神教と魔族の方々の緊張が高まっています」
「俺の国でもそうだ
魔王領と面してる国境線では小競り合いが多発してる状況だ」
「まぁ元々から我が魔族は排他されて来た過去を持つ
それでも近年は各国にも種族として認められていたと思っていたんだが
近頃の緊張感はどうしたものかね」
「それは魔族共が問題を起こしたのが原因だろうが」
「ふむ・・・確かに我が国民達は粗暴で
短絡的な者が多いのも事実だし 問題を起こすの輩も多いのだろう
だが今回の発端は聖女君の宗教を信仰している者達が
我が国民を一方的に虐殺した結果だと聞いているがね」
「それは・・・・そうですが・・・
ですが討たれた魔族の方々は
犯罪に手を染めた方と聞いております
それで近隣の者達より討伐依頼があったと」
「ほう・・・・なるほどね・・・
だから討たれるのも仕方がないと」
「いえ・・・そこまでは・・・・
ですが魔族の方々にも問題はあったと」
「なるほどね
我が国民に問題があったと・・・それは認めよう」
魔王の言葉に実里はほっと一息ついたようだ。
「だが重犯罪でもなく盗難のような
軽い罪でも全て皆殺しにすると言うのが
君達の正義なのかな?」
「え?・・・・それはどういう事ですか・・・?」
「そうだな・・・・私が聞いた話しになるがね
辺境に住むとある魔族の親子が
急な魔物の襲撃で元々の住処を捨てて逃げる選択をした
その父親は辺境を警備している優秀で真面目な男だ
父親は同僚と共に魔物を食い止める為に留まり
家族は別行動をとらざる追えなくなった
母と子は遠い首都よりも近い国境を目指した
魔族の体が強いと言っても辺境で子供を守りながらだ
母親もそうだが幼い子供にも相当に厳しい旅なのは考えるまでもない
一緒に逃げた者達も襲撃でバラバラになってしまっただろうしな
母親は体に鞭打ちながら子供を守り
やっとの思いで国境を越えてと人里に辿り着いた
そこで食料や休息を求めるも魔族と言う理由で拒否されて
村に入る事も出来ない
衰弱した子供にだけは食料を頂けないかと頼むも
石を投げられ槍を向けられる
少しづつ弱る子供を心配し出来心で畑からトマムの実を
一つ採ってしまうが村人に見つかってしまったそうだ
まぁ・・・後はわかるな?
子供は母親を追いかけるように息を引き取ったそうだよ
確かに盗む事は罪だ
犯罪に手を染めた者には罰則があるのは当然の事だ
だが
それでも
その母親は殺されなければならぬ罪を犯したのかな?
そして・・・怪我をし弱った・・・何もしていない子供が
死ななければいけなかったのはどうしてなんだろうな?
母子を追い詰めた者達に罪はないのだろうか?
何とか追いついた父親と同僚はとても酷い惨状を見たそうだよ
その後がどうなったかは想像に難くない
君が聞いている討たれた魔族と言うのは父親の事だろう
一緒に居た同僚が何とか逃げ出して報告をしてくれたよ
その村が魔族の母子を排除したのは聖神教の教えだそうだ
確か・・・・もう魔族を認めて結構な年数が経っているハズだがね
本当の悪とは・・・・罪とはなんなんだろうな
君の意見はどうかな?
聖女君」
魔王の問いかけに実里は何も答えれない。
そう・・・答えれる訳がないんだ。
「だが・・・・それでも魔族が及ぼした被害はもっと大きい
それこそ命を持って償わなければいけない程にな」
勇者は絞り出すように言葉を紡ぐ。
自分自身を肯定するかのように。
「各地で討たれた魔族は殺されて当然の事をした者が殆どだろう
それは間違いないだろうし私が責任を取らなければいけないのだろう
だが先の話ではないが関係ない魔族も被害にあっているのも事実だ
それに聖神教とて現場では色々とやっているんじゃないのかね」
魔王は手元にある資料を捲りながら話し
聖女にサッと投げつける。
それを読んだ実里の顔色が悪くなる。
「こ・・・これは・・・」
「まぁ我が国民を悪く言いたいのは理解できるが
そちらにも似た様な事をする者達がいるようだがね
あえて追及はしないでおこう
君達が言うにはそれだけの事を魔族はしているんだろうしな
そうだろ?勇者君」
実里とは別に勇者に投げつけた資料を読んで
何も言わないのを見ると
多分、似た様な情報を入手しているのだろう。
苦虫を噛み潰すかのような顔で魔王を睨みつける。
「それでどうするおつもりですか?」
「そこで今回の浄化依頼が大事になるのさ」
「それで帳消しにしろと・・・・?」
「ハハ、そんな簡単な話ではないがね
現状は既に原因や発端等を突きとめても仕方がない段階だ」
「ではどのような?」
「単純にメリットの話さ
君達は我が国に恩が売れるから大々的に魔王領に展開出来る
私達は手を差し伸べて貰った恩を感じ今迄の事を忘れようじゃないか
今回の大規模浄化を機に国として聖神教に友好を示し手を握る
お互いに良い話だろう?」
「何か裏があるんじゃないのか?
魔族が聖神教を受け入れる理由がない」
歩み寄る魔王を勇者が牽制する。
「まぁ・・・勇者の君にはわからないのも無理が無い
君の様に恵まれているような者にはな
おいおい・・・ちゃんと説明するから
そんなに怖い顔をするものじゃないぞ
憑代と言えども今は国代表として来ているのだろう?」
「・・・わかった・・・・話せ」
「なに簡単な事だ
聖神教は広く信仰されている宗教だ
近年では魔族も認めているしな
受け入れれば他国での我が国民の迫害が減る
それだけの事さ」
「それで今回の浄化依頼を上手く利用し
現在の緊張関係を緩和したいと」
「そうなるな
私でも浄化は可能だがここまで広範囲になってしまうと
私自身でも浄化は相当な手間でね
出来れば聖女君の力を借りたいと言うのは本音さ
それに私が時間が取られるのは色々と不味いのだよ
ずっとこちらを狙ってる者も居るようだし」
そう言って勇者をチラリと見る。
「そうは言ってもこの一件で直ぐに仲良くしましょうとはならないだろう
一番大きな理由は戦争を回避したいのさ
魔族対聖神教では我らが数で圧倒的に有利だが
聖神教は各地に展開しているからな
また連合国軍で攻められる事は流石に避けたいのさ
君達がそれを望むと言うならばその限りではないがね」
「私達は戦争なんて望んでいません」
「俺もそうだ!
まぁ・・・・お前自身は殺してやりたいとは思っているけどな」
勇者の睨みつける視線を正面から受けても魔王に動揺は見られない。
だが何かしらの思う所はあるようには感じるけどな。
「勇者と聖女・・・共に戦争は回避したい考えではあるんだな」
「あぁ」
「はい」
それぞれに思惑はあるようだけども
双方共に戦争を回避したいのは嘘ではないようだ。
「でわ、戦争回避を前提として
今回の大規模浄化について協議しようじゃないか
現場での詳細を教えてくれないかな?」
「はい」
そういって実里は説明をする。
浄化については周囲に大規模な魔法陣の展開は完了済。
今頃は届けられているハズの魔核水晶の設置も終了し
実行するだけとなっている想定。
瘴気の原因は老人神で間違いなく瘴気が大量発生する原因となっている。
その為に浄化をしても一時的な時間稼ぎにしかならないと。
概ね俺の知っている事だ。
まぁ老人神は神本体じゃ無くてそのカスみたいなもんだけどな。
「やはり神をどうにかしないと
影響が出てしまうのは避けられないかと・・・・
私も常駐するわけにはいかないですし
聖騎士達のみでは厳しい状況です」
「ふむ・・・・やはり神がネックか
現在の神の状況と動きは?」
「迷宮の地下深くに居るようで確認出来ていませんが
出入り口も無く接触は出来ていません・・・が
今後も大人しくしているとは考えにくいかと」
「だろうな
こっちの世界に来ている以上は何かの目的があるのだろう
神なりの考えがあるのだろうが迷惑な事だな」
「聖女殿よ
その神は何を司っている神なのだ?
神位的にはどうだ?」
「詳細は何とも・・・・
ただ感じる気配が酷く穢れていると言いますか
とても・・・・その・・・」
「聖女殿よ・・
それは・・・落ち神・・・・と言う事か・・・・」
「断言できませんが神と言うには
余り気分の良い感じを受けません
そもそもが瘴気の元となっている訳ですし」
「通常の神が降りた際に瘴気を伴う訳も無しか・・・
そっち系の神と言う可能性も捨てきれないが
まぁ十中八九は落ち神だろうな
また厄介な事だな」
"落ち神"という単語に聞き覚えはないが"落ち人"と言われる者達が居るんだ
同じように神がこっちに来てしまうのもある事なんだろう。
だがそう話す3人の顔は妙に暗かった。
ついに魔王、勇者、聖女が並びましたね。
実留君と明らかにスペック差がw




