5-55
今回は量が少し多いです。
魔王領サイラスにある拠点に潜伏した森山実留です。
気配抑えてスネークしていますが
直ぐ近くで世界会議の真っ最中です。
もう胃がキリキリします。
ここに段ボールさえあれば・・・・大丈夫なのにっ!
「魔王様はどう対処なさるおつもりで?」
「ふむ・・・そうだな・・・・
神・・・と言っても"落ち神"が濃厚となるとな・・・
真面な交渉等は難しいだろうな・・・・」
「ならばどうするつもりだ?」
「出来るかは不明だが・・・・・滅ぼす・・・のが一番良いだろう
封印した所で問題を先送りにするだけだ
それに私では封印出来るとは思えんしな」
「本気か?
神を滅すると言うのか?!」
「魔王様・・・・まだ落ち神と決まった訳ではないですし
早急に決めなくても良いのでは?」
どうやら神に対してのスタンスが魔王と勇者&実里で違うようだ。
「実際に影響が出ているからな
早目に対処をする必要があるだろう
神を滅ぼすか・・・・出来るかはわからんがそれも一興よ」
「き・・・貴様・・・・神を自分が楽しむ為に滅すると言うのか?」
「可能であれば敵対したい訳ではないがね
それにまぁ落ち神であれば滅ぼしたところで影響はあるまい」
「魔王様、何度も言いますが落ち神と決まった訳では」
「だが影響が瘴気による影響が出始めて結構な日が経っている
我が国への影響も楽観視出来る域をとうに超えた
それに普通に降りて来ている神であれば既に何か動きがあると思うがね
落ち神で無いとしても早急に対処は必要だろう」
「ですが・・・・
滅ぼすと言うのを現段階で決めてしまうのは
早計かと・・・・
もう少し調査を行い対話による交渉を考えた方が良いかと」
やはり神に対するスタンスは違うようだ。
聖神教に所属する実里としては神を滅ぼすって選択は選べないだろう。
勇者は神に導かれし存在って感じで連合軍に祭り上げられたんだもんな。
んで魔王は自力でここまで這い上がってきたと。
そりゃ噛み合わんよな。
魔王は目を閉じて考えるような仕草をした後に
少しため息を吐いた。
「そうか・・・・君は・・・・聖神教として
我が領地を侵し危険にさらす存在を擁護する
その方針で良いのだな?」
「違います!
私達は誰とも争いたくはありません」
「ほう?ではこのまま我が領地を害されるのを
黙って見ていろと言うのだな?」
「・・・・違います
そうは言っておりません」
「ではどうすると?
なに・・・滅ぼすだけであれば
君達の手は借りなくても
私だけで何とかしてみせるさ」
魔王に噛付くように勇者が声を荒たげる。
「落ち神だとしても神も本意ではないハズだ!
それを我々の都合で邪魔をする事は理に反する」
「理も何も無いだろうに・・・・
悪影響しか撒き散らさない神に何を義理立てする必要がある?」
「神とはそういう存在だ!
そこに理由は不要だ
貴様は神を信じないのか?!」
「さてね・・・・・
あいにくと神とやらに会った事も世話になった事もないのでね
確かに力は貰ったがそれだけさ
勿論、感謝はしている・・・・世界神様にはな
件の神には恨みも無いが恩も無い
いや、私の国に害を成しているのだから恨みはあるのかな」
「ハッ、魔族が神を語るか
貴様は落ち神と言うが
何かの理由があってこの地に来ている神かもしれんだろう
それを勝手に排除するだと?
思い上がるのもいい加減にした方が良いな」
「では君の国にでも移送したまえ
我が国の被害さえ無くなれば私はどうでもいいさ
さぁ、大好きな神を自国に招き給えよ」
魔王の言葉に憑代はギリっと歯が身をする
「出来る訳ないだろう・・・・
この姿じゃ現状でも近寄れないんだ」
「ハハ
他国を犠牲にしてまで貫きたい信仰心ってのは素晴らしいな
神、宗教、そう言えば万人が理解し受け入れるとでも?
本体は自国を守って動かない癖にな
憑代で力が足りないならば本人が来れば良いだけではないのかね」
更にヒートしそうな勇者をスッと手で制して実里が一歩前に出る。
「魔王様
確かに神を信じない方は沢山おられます
ですが実際に神々は存在し
我々はその恩恵を授けられています
それに感謝し敬わないといけません」
「何が言いたい?」
「我が聖神教も今回の原因が"神"であるとするならば
迂闊に手を出す訳には行きません
なので詳細が判明するまでは協力は差し控えさせて頂く事になります
勿論、浄化は行い影響が進行しないように努力は致します」
「勇者君の考えはどうかね?」
「我が国も同様だ
・・・・・直接の関与はしないが
補給物資や周囲への瘴気への対応に人員も派遣するし
各種支援は約束しよう
現段階でこの国に影響が出るのは我が国にも良くないしな」
「ふむ・・・・・
では我が国の問題には直接関与はしないが
間接的な支援はして貰えるとの認識で良いのかな?」
「はい」
「あぁ」
考えるように黙り込んだ魔王は次の瞬間に
その幼さが残る顔から表情が消え去り莫大な魔力が溢れだす。
「ハハ、ハハハハハ
支援・・・そう言えば綺麗に聞こえるが
実際は我が国を犠牲にして神を抑えておけと言う事だろう?
確かに浄化も支援もありがたいが
代わりに我が国が差し出す物はなんだ?
国民の命か?生活か?
それを掛けてまで我が国に何のメリットがある?」
物理的な圧力を感じるかのような濃密な魔力に
実里は咄嗟に障壁を張る。
勇者は憑代の身だ。
何とか抵抗はしているが辛そうだ。
片膝を着いて魔王を睨みつける。
「さぁ、答えるが良い
国民の命を犠牲にしてまで神とやらを拾う価値はあるのか?」
「ちが・・・違います・・・・
私は国民を犠牲にしろだとは・・・・」
「ほう?
原因となる神を滅ぼすのは反対し手伝いもしない
被害は少しづつ広がっている
それを聖女君が完全にに抑えてくれるのかね?」
「抑える努力はしますが・・・・完全には・・・」
「ふむ・・・・勇者君も聖女君も
我が国の国民の命を対価に"神"を手に入れたいと
それとも
"このまま魔王領の力が減れば良い"
とでも考えているのかな?」
俺が見る限りでは勇者は神を大切に思っていると言ってはいるが
裏の狙いは魔王領の力を削ぐ事だろう。
実里は純粋に神を保護したいとの考えだろうが
聖神教の本体としての判断は勇者に近いと思うけどな。
後は迂闊に神に手を出して良い物か?
ってのもあるよなぁ。
何はともあれ"神の力"を持っているのは間違いないんだし。
さて、俺は何時までここに隠れていればいいんだろうか。
出て行っても仕方がないしなぁ。
ちなみに俺の考えとしては
どちらでも良い。
寧ろ魔王の考えに賛同する部分もある。
俺が見るにあそこに居る老人神は狂っている。
落ちてきた時に狂ったのか元々なのかは不明だが
対話で意志の疎通が出来る存在じゃない。
そもそもアレは現世の者が利用出来るような存在じゃない。
ただの狂った力の塊だ。
魔王領がどうなろうと構わないがリースとキリルを差し出すなんて
まっぴら御免だね。
だからこそ力を抑えつけている今なら対処できる。
動き出したら害を撒き散らすだけだろうしな。
実里とファーバンの協力があればどうにか出来るだろう。
「ならば・・・どするる・・・・?
我が国と聖神教を敵に回すか?
神を滅ぼすとなると他の国も黙っていないぞ?」
勇者が辛そうにしながらも魔王に問う。
「なるほど・・・・私が神を滅ぼした場合
グリンバーグは他国に情報をリークするとね・・・・
ククク・・・・次は脅しかい?
随分と必死じゃないか勇者君よ」
「貴様・・・・馬鹿にするのもいい加減にしろよ
俺がそんな汚い真似をするか!」
「ほう・・・ならば情報をリークするのは
聖神教・・・聖女君と言う事かな?」
「そんな事はしません!」
「君はな
だが聖神教の上層部は別だろう?
間違いなく私を問い詰める行動に出るだろうな
それを否定出来るかね?」
「もちろんです!
我が聖神教はそんな姑息な真似はしません!」
「どうだかね・・・
では聖神教が我がサイラスに不利な状況を作り出した時には
君は我が配下に来てくれると言うなら考えようじゃないか」
「そ・・・それは・・・」
「ハハ・・・君自身が良く分ってるじゃないか
それは仕方がない
聖神教とて全てが白い訳じゃない
さて・・・・・何時まで話していても結論は出ないな
君達は我が国に犠牲になれとしか言わないし
私が問題を解決しようとすると邪魔をするときた
さて・・・・私はどうするべきなのかね?」
椅子に座りながら膨大な魔力で威圧しつつ妖艶な笑みを浮かべる魔王。
片膝を着いて何とか威圧に抵抗しつつ睨みつける勇者の憑代。
障壁を展開し圧を避けつつ凛とした態度で挑む聖女。
少し離れているのにも関わらず
胃が痛くなるような緊張の場だ。
「ふむ・・・・私だけでは判断出来ないな
そこに隠れている者よ
出てくるが良い」
魔王が指先を弾くと俺が隠れている側の柱が粉砕する。
「うお!あぶねっ!
って・・・何時からここに居る事がわかった?」
「あぁ、結構最初の頃からな
私以外も気付いていたようだけどな」
まじかー。
隠れてた意味が全然無いじゃない。
実里は俺を見てくるけど何も言わない。
勇者は睨みつけるように俺を見てくる。
「それで貴様の判断はどう見る?
この場に居るのだ
ある程度の情報は掴んでいるのだろう?」
言外に話さなければ殺すと圧力を掛けてくる魔王。
最悪の場合は戦闘にも発展しうるぞ。
「あれは神じゃない
神の力の残りカスみたいなモノで
あれ自体に意識は無く力の塊のような存在だと思う」
「ほう・・・なるほどな・・・落ち神とも違うと言う事か
それで君の意見は?
見守るか滅ぼすかは?」
「・・・・・・あれは力を集めているだけのように見える
それ以外のなんの意志も感じられない
動き出したら大規模な影響が出る・・・・と思う」
俺の意見を聞いた魔王がニヤリと笑う。
「その意見には概ね賛成だな
なぁそうだろ
ミノル君
我らと同じ世界神の加護を受けている者よ」
「え?・・・・何の事だ?!」
唐突に突っ込まれて焦る。
「きっ・・・貴様・・・・生きてたのか・・・・
いや・・・違う・・・の・・・か・・・・・?
だがやはり魔王と・・・・」
勇者は歯が砕けるんじゃないかと言う程に食いしばり
物凄い形相で俺を睨む。
「やっぱり・・・おに・・・・・」
多分、お兄ちゃんと言いかけて慌てて黙る。
実里は薄々とは気付いていたようだけど確信したらしい。
こんな場面に俺が居ること自体がおかしいもんな。
「ほう・・・?
他の者にも面識があるようだな
ならば話が早い
さぁ、これで反対2、賛成2で同数だ」
面白そうに魔王は笑うが俺はそれ所じゃない。
「ちょっと待て!
俺が何時、賛成すると言った?」
そもそも俺はお前に殺されたんちゃうんかい!
計画の邪魔だとか何だと理由を付けて!
つうか俺の試作ナイフ返せよ!
お前からビンビン反応を感じんだよ!
「ほう・・・君も反対するのかい?」
「いや・・・そうは言ってないが・・・・」
勇者は"やっぱりか!"と言うような顔で睨んで来るし
実里は"え?そうなの?"みたいな顔だ。
「現状のままだと君の部隊の者も危険じゃないのかね?
同行している友人達も居るそうじゃないか
聖女君よ
その命も対価として差し出すというのかね?」
「そんなハズありません!
確かに少しづつ影響範囲は大きくなっていますが
浄化を行えばまだ大丈夫です」
「はは・・・・それはどうかな?
なぁミノル君」
「あぁ・・・・・この所・・・一気に範囲が拡大してきている
多分だけど覚醒が近いんだと思う」
流石にファーバンの協力で抑え込んでるとは言えないし・・・。
「そんな・・・・」
驚くのも無理はない。
実里がサイラスに向かってからの事だしな。
だから俺が来たんだし。
「他の聖騎士だけだと限界が近いと思う
実・・・聖女様が対応してギリギリじゃないかと・・・」
「だそうだよ・・・・
それでも神を守る気かね?」
「それでも・・・それでも・・・・
私は立場上、神を裏切る訳にはいきません
少なくとも神の意図を掴めるまでは中立でいさせて頂きます」
悩みながらも凛として態度を崩さない。
立派になってくれてお兄ちゃんは嬉しいぞ。
「いい加減に回りくどい話しは止めろ
魔王とそいつは神を滅ぼす
俺と聖神教は反対って事だろ」
その後も勇者の物言いに誰もが口を開くが水掛け論だ。
特に俺は中立を保ちたいがブタ子やリース、キリル等が
巻込まれる危険性が高いので完全な中立は難しい。
抗うもズルズルと勇者と魔王の流れに乗せられてしまう。
「よろしい
この原因である神を滅ぼした暁には
勇者君の国と聖神教は我が魔王領と敵対する事としよう
もっともそちらが"魔王領に対して何もしないまま"であれば
今と同じ友好関係を気付けると思うがね」
魔王は楽しそうに嗤う。
「そちらがその気なら仕方がない
こちらも今後の対応を考えるとしよう
そこのお前も覚悟しておくんだな」
勇者はそう言って身をひるがえして出ていく。
「私はあくまでも中立です
・・・・ですが・・・・本庁が
どう判断するかは分かりません
私も進言致しますが・・・・・」
聖神教としては勇者側に付くだろうなと
実里も分かっているんだろう。
苦しい言葉を残して出ていく。
その際に俺の方をチラチラと見ながらね。
後でちゃんと話をしよう。
「あはははは
こうもバラバラになるとはね
さて・・・・ミノル君
神を滅ぼす作戦でも練ろうじゃないか」
小さな子供が友達を遊びに誘うかのように
魔王は去りゆく勇者と実里に聞こえるように俺に声を掛けた。
世界神の加護持ちが全員集まりました。
現段階での実留君の戦闘力は
瞬間最大風力なら憑代を超えれますが持久力で負けます。
どうあがいても聖女の防御は突破出来ませんが聖女も実留君を倒し切れません。
魔王はまぁボロ負けします。




