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5-24

そろそろ梅雨の時期ですかね。

もう夏が来るなぁ。

こんにちわアリスです。

最近の実留さんは"ヴィリア"に首ったけで余り面白くありません。

ルーブと一緒に市場で新しい食べ物を探す日々です。

実留さんが忙しい時は母牛さんが付き合ってくれるんです!

でも野菜の買い食いって難しいんですよねぇ・・・・。

母牛さんって見た目に反して・・・いや正しいのかな?

野菜しか食べないんですもん・・・・。

野菜であの筋肉量を維持出来るのは何故なんでしょうか?









「はいっ!ちゃんと避ける!

 駄目そうならレジストや防御系の魔法を展開するっ!」


俺の指示通りに動こうとも反応が遅く派手な音が響きエライトが吹き飛ぶ。

ここは"オーヴィラス"の訓練所だ。


「良いかっ!魔法職には判断力と対応力が求められる」


「そんな事を言ってもっ!」


「次行くぞっ!」


訓練カリキュラム通りに指導員が魔法を展開し

地面から土壁を生成し目くらまし兼ねた物理攻撃を仕掛ける。

慌てて回避行動を取った上で反撃を仕掛けてくるエライト。

それを防御魔法で打消して次の魔法を放つ。

少しづつタイミングをシビアにして追い込んで行く。


結果。


「ぐはぁぁぁぁぁぁぁ」


エライトはまたも吹き飛ぶことになる。

魔法は範囲を広めにして当てる事を重視しているので威力はそこまで無いし

大きな怪我をしたら俺が即座に回復魔法を掛けているので問題はない。




実力を試したが迷宮の攻略には実力不足だったので

話し合いの結果、エライトの訓練を実施している。


以前から戦闘訓練プランも考えていたので

試すと言う意味でも都合が良かった。


戦闘訓練を担当している者の数名で相手をし俺は指示を出して教える。

指導員はオーヴィラス"から派遣して貰っているが

"ヴィリア"からも3名が参加しノウハウを学んでいる。

俺が考えたカリキュラムを皆で叩き合って実践し

随時記録を取って補正していっている。

空いている場所や時間で両団体の担当者も実際に試して経験し

確認した事を盛り込んで行くのも忘れない。


まぁ何はともあれ今はエライトを鍛えているって事だ。

他の者は母牛達と迷宮に入っている。

"ヴィリア"が依頼を受ける条件として

"迷宮に対応した戦い方を学ぶ"事を前提としたからだ。


エライト達も"どうしても迷宮攻略をする理由"があるらしく

強くなれるのであればと同意してくれた。

カリュイも当初は渋ったが自分の力が通じなくなってきていたのは

感じていたのだろう。




訓練は朝から夕方までみっちり行われる。


「どうした?もう御仕舞か?」


倒れて動かないエライトに声を掛ける。


「フハハハ

 これしきの事で僕がどうにかなると思っているのかい?」


声は弱々しく息も切れきれで起き上がるのも限界なのか

大の字で空を見上げているだげだが調子は一切変わらない。


まぁ悪い奴じゃないのは分かった。

頑張ってるのは本当だし。


エライトは魔法が使えるが師に学んだり教えて貰えるような場所に

出入りした事が無く母親から手ほどきを受けただけらしい。

逆に言えばそれだけで魔法を使って戦えるなら才能は凄いんじゃなかろうか?


戦闘訓練の他には座学で魔法についても教える。

残念ながら講師は俺じゃない。

なんせ俺の魔法は通常の魔法と違うので教える事が出来ない。

折角だからと俺も一緒に参加してみているが

これが結構興味深く色々と分かって楽しいし実りがある。

俺の魔法制御力や構築力なんかも向上したのは嬉しい誤算だ。



俺が考えていた魔法系プランの中では最上級にハードなんだが

吹き飛ばされながらも頑張るエライトは凄いと思う。

小鹿のように足をプルプルしながらも立ち上がる根性があるし

明るく強気で上から目線の発言は変わらないので心は折れていないんだろう。


まだまだ感は否めないが成長著しい。

当初はボロボロだったエライトだが今では反応し何とか躱し攻撃を返してくる程だしな。


装備品については思い入れがあるようなのでそのままとしたが

その代わりにデメリットについては理解して欲しいので説明した。


「アハハハ

 僕には魔法の才能があるのに剣まで使えるようになったら

 それこそ無敵じゃないか

 アハハハハハハハ」


そんな事を言っていたので仕方が無く近接戦闘訓練も追加する事にした。

顔が引きつっていた気もするが本人が望んだ事だしな。

なーに、死ぬ思いをすれば訓練にも気合が入る。

それに実際に死ぬ訳じゃ無いしな。

その一歩手前位までは行くけどさ。


大丈夫!死にはしないさ!


10日が過ぎる頃には何とか各種攻撃に反応出来るようになってきた。

近接戦闘も入れたので苛烈さを増したたのに凄い事だ。

体の限界は超えていて中身はボロボロのハズで

現代の日本なら意識を維持するのも難しいレベルだろう。

だがそこはファンタジー世界の方々だ。

悲鳴を上げつつも動けるのだから凄いもんだ。


立ち上がるのもギリギリだが動かなければ剣が槍が魔法がエライトを襲う。

重い体と頭をフル回転させながらも懸命に対処していく。

うんうん、輝いてるぞ。

生命って素晴らしい。


エライト以外の4人も迷宮から出てきた。

ブイボイさんが言うには坊ちゃんが居ないだけで物凄く順調だそうだ。

前衛の3人は実力はあるので装備や道具を迷宮用に切り替えて

戦い方や行動について指導したらメキメキと上達した。


カリュイは達人レベルの腕を持ってはいるが

対人に特化し過ぎているので大変だったようだが

武器をかなり良い物に変えて各魔物の弱点や対処法を教えたら

これまた恐ろしい程に魔物を倒す程になったそうだ。

ただし大物相手は苦手だそうで前衛3人との連携が大事だと言っていた。


迷宮から出たカリュイが最初にしたのはエライトの様子を見る事だった。

吹き飛ばされるエライトを見て一瞬"殺気"が湧いたような気がしなくもないが

対応は十分にしてるし回復も即座に行われているのを見て安心した。

それにエライト自身が根をあげて無いので見守る方針のようだ。


エライトがボロボロの体を引きずって訓練所から戻ってきた。

カリュイの姿を見つけた瞬間にシュンと背を伸ばし何時もの笑顔になった。


「やぁ、爺も戻って来ていたのか

 そっちは順調かい?」


「えぇ、こちらは順調ですよ

 エライト様もお元気そうで」


「ハッハッハッ

 まぁ僕の才能がドンドン伸びていて恐ろしいよ

 まだまだ余裕だね

 明日からはもっと厳しくして貰うつもりさ」


そう言って俺を見るので笑顔で返しておいた。

エライトの強がりもカリュイは分かっているんだろう。

帰り際に俺にお辞儀をしていった。


うん・・・・良い奴なんだろうな・・・・。

でも本人が言うんだから明日からはもっと厳しくしてあげよう。

そう心に決めた。




あれから更に数日が経ち訓練は過酷さを増し

俺も心を鬼にし新兵を鍛える某軍曹の如く厳しく叩きこんだ。

体の自然回復が限界だったがカリュイが何処からか用意してきた

自然回復力を高める魔法具と飲み薬で何とかなったが

更に追い込む余地を作ったのは仕方がない事だろう。


頑張れ!エライト!


ちなみにその魔法具は寝具の周りを囲う結界タイプで

起動すると耳障りな高音を結構な音量で叩きだし薬は猛烈な苦みがある。

一舐めしたが全身が震える程に苦かった。


訓練も終わり死んだように水浴びし機械的に食事をした

エライトは目が濁った魚のようだっが

カリュイが薬を差し出すと高笑いしながら

飲み干して気絶したように寝た。


頑張れ!エライト!


更に数日が経った頃にカリュイ達の準備は終了した。

元々実力はあったのだから迷宮用の準備と戦い方を学ぶ事で

30階層でも十分に通じる程になっていった。

武具もドリアスさんを通じて高品質な物を用意して貰ったしな。

金が潤沢にあるって素晴らしい。


前衛3人は迷宮に籠り更なる研鑽を目指し

カリュイはエライトの戦闘訓練を買って出てくれた。

やはり達人の動きは無駄が無く見ている俺も勉強になる程だった。


それからも何とかエライトに基礎み叩き込み

魔法も近接もまぁ及第点に届きそうだなと思い始めたのは

訓練開始から20日間程が経過していた。


エライトは愚痴もこぼさずに無駄な高笑いと

明るく強気なまま頑張っている。

なんでそんなに頑張れるのかを休憩中に駄目元で聞いてみた。


「エライトは何でそんなに頑張れるんだい?

 自分が言うのも何だけど相当苛烈にやってるよ?」


「ハハッ

 僕はね迷宮を攻略という実績を積まなければいけないんだ」


「う~ん、それ程までに迷宮攻略しなければいけない理由ってなんだい?

 言いたくなければ別に構わないけど・・・・」


この訓練を通じて俺とエライトは少しは近づいていたのか

ポツリポツリと話してくれた。


我が家はこの国でも有数の貴族で自分は3男で兄2人が優秀だったので

年が離れ平凡な自分は父親には何も期待されていない。

母は病弱だが優しくしてくれ母親とカリュイに育てられたようなもの。

エライトは母親に良く似ており

母方も貴族だが父方よりは劣るのも父が無関心の原因らしい。

そんな母方に不幸と不祥事が重ねて起きた事により

今すぐとは言わないが家の存続が危ぶまれる事態になった。

父方は優秀な長男と次男が居るのでエライトが母方の跡目候補に。

だが実績が無く国としての仕事も無いので家督を継ぐ訳にはいかない。


そんな事情らしい。

エライトの性格もそんな感じで形成されていったんだろうな。

弱音を吐かず明るく強くか・・・・。


「それが迷宮に潜る理由なの?」


「もちろん実績を出す為ってのはあるけどね

 それが全てではないよ

 それを元に本命に挑戦さ」


「本命?

 あぁ、実績を掴んでって事か

 となると国の騎士団とかに入団するって事?」


「ハハハッ

 僕を馬鹿にして貰っては困るね

 迷宮攻略者が騎士団如きで収まると思ってるのかい?」


「う~ん、国の騎士団以外だと何だろう・・・・?」


「興味があるかい?

 それなら教えてあげようっ!

 それはね"聖神教の聖騎士団"さ

 それも聖女付きの"護衛団のミニョール"さっ!」


「・・・・・・」


「もちろん迷宮攻略する程の強さと実績があっても

 普通はそんな事は出来ないのが当たり前だ

 だがそこは我が家の名前を利用するまでっ!

 母方の・・・・母上の・・・・・・家を潰す訳にはいかないからねっ!」


「・・・・・・」


「その為には手土産として迷宮攻略の実績が欲しい訳さ

 強さと家名を持って入団するって事だね

 ・・・・実は既に打診は終わっていて後は実績だけだったんだ

 だから僕は迷宮を攻略しないといけないんだっ!」


「・・・・・・」


「あれ?どうしたのかな?

 余りの事に驚いてしまったかい?

 うんうん、それは分かるよ

 なんと言ってもあの聖女の護衛団って話だからね

 おっとこれは内密にしてくれよ

 君だから話したんだからね」


「・・・・・・」


「あれ?どうかしたのかい?」


「・・・・おい・・・・その話を詳しく教えろ」


「ハハ?

 何を言ってるんだい?

 そんな急に怖い顔をしなくても・・・ヒィ」


「良いから教えろっ!」


俺が余りにも怖い顔をしていたんだろう。

頭は冷静のつもりだがだが口調もおかしくなっており

何か妙な威圧感プレッシャーも駄々漏れとなっていた


エライトはガクガクしながらも詳細を教えてくれた。

まぁ家事情が詳しくわかっただけに過ぎないが

何かの手掛かりを得れたのは確かだ。


そこで俺は1つの考えを導き出す。


「推薦でも良いしエライトの護衛でも良い

 コネだろうが何だろうが

 どんな形でも良いから俺をそのミニョールとやらに入れる事は出来るか?」


物理的な重さでも感じるんじゃないかと言う程に濃密な

俺からの威圧感に汗だくで顔色も悪い。


「いや・・・でも・・・・だけど・・・・」


「勿論、それなりの事はする

 迷宮攻略は全面的にバックアップするし

 俺の身元保証だってする」


そう言って俺は迷宮ギルド、冒険者ギルド、商人ギルドの

カードと各種資料を出す。

これはあくまでもヴィリアの運営時に身元保証が必要な時に

出そうと思って事前に取得しておいたんだ。


まぁ色々と問題はあったが無事に上手く発行できたので大丈夫だろう。

有難う神謹製スキル。


それを見てエライトが驚く。

商人ギルドと冒険者ギルドの両ギルドが保証している俺の貯蓄額は

個人が持つには多すぎる上に定期的に増えている。

これは両ギルドが俺個人を信用している証にもなる。

迷宮ギルドでは攻略者として登録されているので実力の裏付けも出来る。


「いや・・・・確かに凄いが・・・・・

 やはり入団は叶わないだろう」


「なら推薦してくれるだけで良い

 チャンスさえ作れれば後は何とかするし

 迷惑は掛けない」


更なる威圧感が溢れだすも俺は真剣だ。

ここで掴んだ糸を離す訳にはいかない。

エライトの顔が青を通り越して白くなっているが気にしていられない。


「そそそそそそれならばなななんんとかしよう

 ほほほんとうにしょうしょうししょうしょう紹介しかででできないが」


嬉しさにグイッと身を乗り出してエライトの手を掴む。

多分、この時も興奮で力加減を考えて無かったようで

余りの力にエライトの顔が白から赤くなったが気にする余裕はなかった。


「しょ、しょ、紹介だけだっ!

 入団出来るかどうかは試験があるハズだっ!

 それを受けれる様に紹介しようっ!

 そこまで!そこまでなら約束する!」


「本当だな!よし!

 じゃぁさっさと迷宮を攻略しようっ!」


俺は喜びと興奮に包まれて早速行動に出ようと振り返ると

カリュイが短刀を抜き放ち冷たい笑顔で此方を見ていた。


もちろんコッテリと怒られました。


よ~し、迷宮なんてサクッと攻略だぜ。

エライト君は実は頑張り屋さんでした。

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