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5-22

暑かったり寒かったりですね。

皆さん、体調は大丈夫ですか?

支援団体代表の森山実留です。

実績も実態も無いですが名乗るのはOKですよね?

名乗った所で何も無いですけどね。

でもナニナニの代表って響きが良くないですか?

名刺でも作っちゃおうかなぁ・・・・。






目的の支援団体は"オーヴィラス"って名前だ。

冒険者ギルドと迷宮ギルドの中間辺りに位置し街の外部に近い


見た目は何処かのギルドなんじゃないかと思う程に立派な建物だった。

訓練場所も兼ねているので裏には結構な広さの運動場もある。

街の外れが近いとは言え個人で所有しているというから驚きだ。


中は結構な賑わっている。

其処かしこで色々な声が聞こえてくるが全体的に明るい雰囲気だ。

まぁ此処に居る方々は"頑張るぞー"ってのが大半だから

当たり前と言えば当たり前だよなぁ。


母牛は運動場の方に行ってしまったのでジミーと2人だ。

どうやら話し合いは俺達に任せるようで

自分は情報収集をしてくるつもりらしい。

そんなジミーも正面の受付らしき所で誰かと話している。


左手には大きなテーブルが幾つも用意されている。

そこで何人かの冒険者が集まって熱い議論を交わしていてる。

時折ヒートアップするが年長者に窘められつつ

それぞれの考えを出し合っているようだ。

あれは駆出しのパーティーなのかな?

年長者はここの職員なんだろう。

教えるだけでなく考える力も伸ばしてくれているようだ。


右手では様々な武具やアイテムが販売されていたので覗いてみる。

ここにあるのはシンプルな使いやすそうな物ばかりだ。

逆を言えば実質剛健で飾り気が無いとも言える。

目新しい物はないが初心者向けには良いだろう。

中古も扱っていたが全て丁寧な整備をされている。

アイテム類も一通り揃っているので便利だな。


値段も随分と安いと思うがどうなんだろうか?

利益出ているのかな?


他にも職員に色々と聞いたり出来る相談受付のようなモノや

座学を行う部屋まである。

支援というよりは職業学校のようだな。

ちなみに俺はルーブとアリスを頭に乗せたままなので

相当に目立っているが気にしない事にする。



「おーい、ミノル行くぞー」


ウロウロとしているとジミーから声が掛り

奥の部屋に連れて行かれた。

ノックをして部屋に入ると・・・・・見覚えのある方が居た。

馬・・・・そう・・・馬が居た・・・。

白くてイケてる馬だ。


『実留さん、この方って以前にお会いした方では?』


『うん、そんな気がするな

 なんだっけ・・・・名前を聞いた気がするんだけど』


『う~ん、"ドリアス"さんじゃ無かったですか?』


『そんな名前だっけ?』


でも確かに以前、ポーラスで会った事のあるイケウマさんだ。

紹介されてジミーに良くして貰ったんだよな。

懐かしいなぁと思いつつ如何しようかと頭を悩ませる。


「どうも、君がミノル君だね

 私はドリアスと言う者だ

 ここ"オーヴィラス"の代表を務めている」


そうそう思い出したよ。

この馬が普通に話すギャップを。

最初の時はまだこの世界に馴れてなかったもんなぁ。

グリフェリアで虫人に会った時は驚いたもんだ。


「あっ、はい

 宜しくお願いします」


「それにアリス君とルーブ君と

 そんなに緊張しなくても構わないよ」


和やかな雰囲気で話しかけてくれるが

ドリアスさんの目は何かを見つめているような気がする。

不快ではないんだが不安だ。

確か・・・前の時も・・・・・。


「ふむ?ミノル君は以前に私と会った事あるかな?

 アリス君・・・・も見覚えがあるような気もするが

 流石に妖精族の顔をハッキリとは覚えていなくてね

 いや、申し訳ない話しだけどね」


朗らかに笑うドリアスさんを横目に

俺とアリスは裏で必死に作戦を練っていた。

こんな所で両親に強制認識を使わなかった影響が出るか。

今からでも遅くは無いけどやっぱりジミーには認識させたくない。

何時もの≪誤魔化し≫で何とかしよう。

スキルを発動しつつ知らないふりをする。


「いえ、初めてお会いしましたよ

 生まれて直ぐに迷宮に籠ってしまいましたし」


「そうですか・・・・・まぁそうですよね

 私もジミーさんの息子さんにお会いしたのは初めてですし

 会っていたら忘れる訳がないですよね」


あははと笑うともう普通の優しい目になっていた。


「それで話と言うのは冒険者支援組織を新しく

 立ち上げたいとの事でしたが・・・」


「えぇ、ドリアスの旦那が既に同じ事をしているので

 場を荒らす事になってはいけないと思ってね」


「あぁそういった事でしたか

 具体的な内容を伺っても?」


そこからは両親と詰めた具体案を俺が説明し

足りない部分をジミーがフォローしてくれた。

流石は現場の人だけあって例えが抜群に上手い。



「説明を聞く限りでは迷宮に重点を置いた支援となるようですね」


「はい、両親共に迷宮でのノウハウがあります

 まずはそれを手掛かりとして始めようと」


「なるほどなるほど・・・・・

 それに緊急時の帰還手段や帰りを心配しなくても良いのは

 大きなアドバンテージとなりますね」


「そうなんだ・・・・だから旦那の迷惑になっちゃうかもしれないと思ってね」


「いや・・・・そんな事には・・・・うん・・・・そうだな

 ジミーさんとミノル君はどのような運営をお考えで?

 独立して立ち上げるのか何処かのグループに所属するのか?

 と言っても良いですが」


ジミーは俺を見て"自分の好きにやってみろ"と目で伝えてくる。

こんな俺でも信用しているんだな・・・ありがたい。


「独立で立ち上げる予定です

 "帰還の宝珠"の重要性もありますので」


「そうでしょうね・・・・・うんっ!

 うちと提携するつもりはありませんか?」


「え?どういった事ですか?」


「此方も迷宮についてのノウハウは持っていますが

 迷宮の深階層までをサポート出来る程の力はありません

 それに専門分野の方が居るならお任せした方が良いと思うのは

 当然の事ではないでしょうか?」


「いや、しかし初心者を相手に深層階まで

 サポートする必要は無い訳ですし」


「浅層階でのサポートでも実力が高ければ安心度は高いのですよ

 それに一つ考え違いをしていますが

 此処は初心者に限っている訳ではありません

 今はまぁ・・・そうなってしまっていますけれどね 

 冒険者全般をサポート出来るようにしたいのです

 その為であれば技術やノウハウを集めたり

 有能な提携先を作るのは問題ではありません

 寧ろお願いしたいと考えています」


ドリアスさんは目を逸らさずに真摯な姿勢を見せてくる。

この人が人望あるのもわかるな。

まぁ馬だから馬望と言った方が良いのかもしれないけどさ。


「・・・・・わかりました

 正直な事を言えば助かります」


「いえいえ、こちらも今後が楽しみですよ

 此方も冒険者支援のノウハウも教えられると思います

 何故、お金もない駆出しの方々を相手にして

 成り立っているとかは疑問に思いませんでしたか?」


「あぁ、そうですねそれは思いました

 武具やアイテムも低価格で売られている割には

 粗悪品等は在りませんでしたし」


「えぇ、正式に提携するとなればその辺りのやり方も

 教えてあげる事が出来ると思いますよ」


完全に手の平で転がされた気もするなぁ。

最初からこうなる事を考えていたんじゃないだろうか。


「どうしてここまでの事を?

 明らかにこちらに有利な条件だと思うのですが」


「私の夢はこの街を盛り上げる事です

 それには多数の方の協力とそれぞれの目標や夢が必要です

 それを得る為であれば助力は惜しみません」


「いや・・・しかし・・・それでは・・・」


「もちろん誰にでも手を差し伸べる訳ではありませんし

 こちらにも見返りはあると考えています

 多少は利益が減るでしょうが近いうちにそれを上回る程の

 収入が見込めるハズです」


ドリアスさんは真顔で語って来るが俺はどうにも不安だ。

それに気が付いたのだろうフッと笑われた。


「心配なのは分りますが

 私も商売人の端くれです

 こう見えてもこの仕事は結構長く続けていますし

 目端は利く方だと自負していますよ」


「そうだぞミノル

 旦那は俺が迷宮ギルドに入る前から冒険者を応援してる方なんだ」


「あの頃のジミーさんは若くて元気が良かったですね

 私も今ほど大きくは支援出来て無く細々とやっていただけですし」


「今でも若いと思っていますがね」


「「あはははは」」


ジミーとドリアスさんは顔なじみと言うか

昔からの知り合いなんだな。

ドリアスさんも見た目じゃわからないが結構な年なんだろうか?

馬だとするとそんなに長生きは出来そうもないが

まぁ馬に似た種族だからと言って寿命まで一緒って事はないか。


その後も詳細を詰め具体的な方針等を話し合った。

結んだ契約内容を見る限りでは不利益は無いようだ。

ジミーが確認しても穴は無いとの事だ。

それ以前に本当に提携だけでこちらの運営には口を出さないつもりのようで

寧ろこちらが得れるメリットが多すぎるのに

コレと言ったデメリットが見当たらない程にだ。


最後まで転がされてる感は拭えなかった。

それが不快感も無く和やかな雰囲気で安心感さえあったんだから

全く勝てない人(馬)ってのは何処にでも居るものだね。






翌日から早速行動を開始した。

資金は俺が迷宮から持ち帰った物で

影響が大きく無さそうな物を売って作った。

流石に30階層クラスまでの素材だけでも大量にあったからな。

予算はそれなりに用意出来た。


場所は迷宮ギルドの近くの店舗を借りた。

ソコソコ広いが運動場等は無い。

これは提携先のオーヴィラスを借りれる事になったからだ。


武具やアイテム等も迷宮攻略に重点を置いた物を仕入れた。

アイテムも嵩張らずに効能を重視した物等だ。

通常よりも値段が張るが一般店頭で買うよりも安く販売する事が出来た。

そこらのノウハウもドリアスさんから教えて貰えた。


簡単に言えば会員制にして登録料とサポート料金を払えば

安く買い物が出来た上で護衛等も安く頼める。

登録料やサポート料金は安く設定しているし

オーヴィラスに登録していれば登録料は無料だ。

ここで利益を得ようとは思ってないからだ。


サポート料金は内容によって色々と変わるが

迷宮利益の数パーセントを支払うか定額で払う方法が選べ

そこにオプションで色々と選択できる。

例えば荷物持ちを増やす、収納鞄を使用する等ね。

勿論、"帰還の宝珠"はオプション指定なので使えば料金は掛るが

使わない場合は請求しない。

現状だと1個しか無いので予約制なのが悩ましい所だ。


まだ人数は少ないが護衛や荷物持ちもランクがあるので選択できる。

ジミーや母牛が信頼を置いている方々に登録して貰った。

これは無料で指名出来るので評判が良ければ個人にも旨味が強いだろう。

報酬は護衛者本人が80%でうちらに20%入る事になっている。


ジミーはまだ裏方での参加だが俺と母牛による

迷宮支援"ヴィリア"はスタートした。


最初の1週間は客が殆ど来なかった。

オーヴィラスからの紹介で一日に数組の迷宮初心者が来ただけで

浅い階層での迷宮戦闘レクチャーが殆どだった。

流石に母牛は中階層以降まで行くのをターゲットにしているので

値段は高く折り合わず依頼は無かった。


あぁ、そういえば俺が迷宮から出てきたら母牛が妙に強くなってた。

はち切れんばかりのムキムキボディは変わらないが

力の密度が半端なく向上してる。

身体能力が格段に向上し魔力も増えているとの事。

これも"転生者の聖母"の効果なんだろうな。

今なら20階層に居た弱ったロッドロドリスなら良い勝負が出来るかもしれない。

単独での深階層突破は無理だが同程度のメンバーでパーティーを組めば

40階層も目指せる程度には強くなっていた。

今後も更に成長するだろうしね。


2週間が過ぎるとチラホラと噂を聞きつけて来る人が増えてきた。

まだ15階層程度までしか潜っていないが手持ちの金が無くても頼める事や

きめ細かなサービス内容と選べるオプションの評判が良いようだ。

現代社会から来た俺が考え抜いた内容だ。

ファンタジー世界のサービスに負けるわけにはいかない。

まぁそれを収支に結び付けるのは難しいかったが何とか基礎は出来た。


実績を見ながら色々と調整をしていく必要はあるが

評判は少しづつ上がってきている。



1ヶ月が過ぎた頃には迷宮に始めて入るなら

とりあえずヴィリアで教えて貰った方が良い。

そんな風潮が駆出し達の中で定着しつつある。

金は惜しいが安全が買えるなら安い物だろうし技術も学べるしな。

1回利用すれば便利なのが分かって貰えるようだ。

初心者以外にも中級者も何人か訪れてくれた。

上級者はまだ来ないので母牛が暇そうなのは仕方が無い。

俺も登録はしてるが最深層行きをターゲットにしているので依頼は勿論来ない。

代わり事務作業や各種手続きなんかで妙に忙しい。


そんな俺にも出番が来る事になった。

1人の冒険者が"ヴィリス"に訪れたのが切っ掛けだ。


「やぁ、ここが迷宮の奥深くまで僕を誘ってくれる所かい?

 僕の先導をさせてあげようじゃないか」


それが彼の第一声だった。


「お断りします」


これが俺の返答だった。

母牛は相当強くなっていますが実留君の方が断然強いです。

アッサリと親越えされて悲しそうですね。

ジミーさんは気にしないで上げてください。

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