15 樹海は群雄割拠
絆召喚術の検証をしたかった俺。
そのために『イデオニール大樹海』へと入ったんだが、気づけば着々と勢力を広げているのだった。
コレーヌ(ゴーレムもしくはオートマタ)と契約を結んだことで本拠地(丘)をゲットし、夜露をしのげる家まで建ててしまった。
そのあとウルシーヴァ(オオカミ)を降伏させる形で絆召喚獣に仕立てたんだが、何故か姿が魔獣から美女へと変わって度肝を抜かれた。
しかもウルシーヴァはオオカミの群の長を務めているため、必然彼女を従えると他のオオカミたちもついてくる。
するってーと、俺たちの本拠の丘はオオカミだらけで動物王国みたいなことになってしまった!
「はー、お腹モフモフ、いつまでも撫でていられる……!!」
すっかり服従して腹部を見せるまでになったオオカミさんたちを小一時間ほど撫で回し続けております。
もちろんウルシーヴァの部下の通常オオカミたちを、だが……。
「主様、部下たちにばかりかまっていないで、私のお腹も撫でてください。群れの長である私こそ、主様に撫でてもらえる栄誉を真っ先に賜るべきです!」
「その姿のキミに触れると差し障りがあるんですよ!!」
遠慮なくワシャワシャ撫でてほしかったら、どうして女の子の姿になった!?
そんなキミのお腹やら背中を撫で回したら別の意味が発生してしまうだろう!?
「まったく抜け目ない獣たちです。結局、居座られてしまいました」
「たしかに」
コレーヌも強化外装をパージして、元の女性型オートマタの姿を取り戻している。
それはそれとして、この丘をナワバリとするために強襲してきたオオカミたちだが、俺たちに倒されて屈服することで無事狙っていた丘の上に住むことができるようになったのだから侮れぬ。
試合に負けて勝負に勝つ、ということはこのことだろうか?
一気に大所帯になってしまった我らだが、古株と新顔の融和はとりあえず順調なようだ。
向こうでは、スライムのスラッピィが絆召喚でまき散らす水を、オオカミたちが嬉しげに浴びている。
『キュピピピピッ!!』
『ワンワンワワン!!』
スラッピィを中心に群がるオオカミたち。
湧き出す水を口に含んでは喉を潤し、体を洗って満足そうだ。
「元々、他種族とのナワバリ争いを優位に進める拠点として欲したこの地が……水まですっかり確保されているなんて……! 素晴らしすぎます! でもそれはこの土地が好条件だからではなく主様の力なのですね!」
「お、おう、そうだね……!?」
グイグイ来るウルシーヴァに、むしろ俺が押され気味となるのだった。
「従って今こそわかりました! 主様こそ、この樹海の王者となるに相応しい御方! そんな御方へ真っ先に忠誠を誓った我々は、まさに勝ち組!」
「新参者が何をほざいていますか」
「これから主様が樹海全土を制圧するならば、従うモノは千や万では足りません! ならば三、四番目程度は充分最古参の範囲でしょう!」
一体彼女は、俺を何王に仕立て上げようというのか?
「よ……、よくわからないんだが大樹海って、そんなにナワバリ争い熾烈なの? 人間の俺には、モンスター同士の争いってよくわからないんだが……!?」
「さすれば私がご説明いたしましょう! いずれ樹海の王となられる主様なれば、これからいかなる敵を下して版図を広めていかなければならないか、必ず役に立つ知識になることと思います!」
とウキウキで話すウルシーヴァ。
飼い主にかまってもらって嬉しくてたまらない犬のイメージが重なる。
「大樹海は、その広大なエリアに数え切れないほど多くの種族が住み着いています。いずれも厳しい環境を生き抜く手強いヤツらです」
無論ソイツらは、人知を超えたモンスター。
「オークやゴブリンといった亜人大族、数え切れないほどの小種族に分かれた蠱虫大族、そして我ら獄狼族も含めた猛獣たちの集団……魔獣大族が主な勢力ですね」
これらの種族たちは常に互いをけん制し合い、より有利な地形をナワバリに獲ろうと狙い合っている。
大種族の中でも細かく分かれた小種族……例えば亜人大族の中でのゴブリンやオークなども土地を奪い合って殺し合うこともあり、樹海内は群雄割拠の様相らしいわ。
「我ら魔獣大族の中でも、忌々しい王虎族や烈牛族、猛禽族などといった小種族に分かれて日夜争っております。ヤツらが我らのナワバリを狙って襲ってくることもありましょうから主様、充分にご注意を……!」
「我らの、って……!?」
それまで人間が、入り口近辺を右往左往するばかりで窺い知ることすらできなかった『イデオニール大樹海』。
その全容が意外なところで窺い知れて、俺も凄さに体が震える。
「ケッ、新顔が偉そうに喋くりやがってよぉ……!」
面白くなさそうに鼻を鳴らすのは、ゴブリンのゴブリーナであった。
「そんなにダンナを強くしたいならいい方法があるぜ? 他のオオカミどももダンナと契約を結べばいいんじゃねえか?」
なんか突拍子もないこと言いだした。
「それはダメだ!!」
そして何故かウルシーヴァが全力拒否する。
「主様と直接の誼を結ぶのは群長である私だけに許された特権! 部下たちにやすやす許すわけにはいかん!」
「オレも契約してるけどな。つーわけでオレとテメーは同格だ。ちゃんと敬うんだぜ」
「ゴブリン風情がぁ!?」
いや、片っ端から契約したらその分強くなれるってものではないからね絆召喚術は。
それ以前に、契約可能な数は術レベルによっていまだに制限されているので、新しい契約相手は慎重に選ばなければ。
これまで本当ノリで選んできたような気もするけれど。
「それよりそれより! もっと肝心なことを片付けようぜ!」
「肝心なこと?」
突然興奮しだしてどうした?
「新しい手下ができたんならソイツで何が召喚できるか、試してみるのが基本じゃん! この犬っころとの絆で何が召喚できるか試してみようぜ! まあオレほど役立つものが召喚できるとは思えねえがな!!」
存分に煽らないで。
しかしゴブリーナも随分パターンを把握してきたことよのう。
たしかに、新しい絆を得るたびにどんな召喚ができるかワクワクするし、今後のためにも試しておかない選択はない。
「ではやってみよう、絆召喚!」
「「「おおッ!?」」」『キュピピッ!?』
【絆召喚術Lv18>絆:ウルシーヴァ(ヘルウルフ)>召喚可能物:ドッグフード(カリカリ)】
……。
またよくわからないものが出てきた。
なんだか茶色く乾いた、無数の粒上のもの。
召喚した途端それが山盛り出てきたのだが、何かと思ってマジマジ見詰めていると……。
「……ん? うわぁッ!?」
俺の脇をすり抜けてオオカミたちが殺到した!?
そして茶色い粒の山をガツガツ貪り出す!?
「ガウガウガウガウガウ!!」
「キャウキャウ!」
「ウガワワワウワウ!!」
なんか猛然と食いまくっている!?
え!? それ食べていいものなの!?
めっちゃガッついているけれど、そんなに美味しいものなの!?
「そんなに美味しいなら俺も一口……!?」
「いけませんマスター、人の尊厳が損なわれます」
何故かコレーヌに止められた。
どうして?
「凄いです主様! 素晴らしい!」
そしてウルシーヴァが大興奮。
「堅固な土地! 尽きることのない水に加え、腹いっぱいに食べられる美味しいエサまで用意してくださるとは! 我ら獄狼族は、主様のためならば命尽きるまで戦いますぞ!」
安全な住み家。
尽きる心配のない食料。
それらが揃って飢えることも凍えることもなければオオカミさんたちも、そりゃ居心地がいいに違いない。
まさに天国。
ウルシーヴァの言うように、他の大樹海にする魔獣たちもこぞって狙いに来るかもしれないなあ、これなら。
精々居心地のいい場所を取られないように注意しないと。
◆
『にゃっふっふっふ……! なんだかとってもよさげな場所にゃん!』
などと思っていたら早速新たな侵入者が現れた。
大きな猫……もとい虎だった。
『我らは自由なる猛獣、王虎族! そしてウチは王虎族を率いるリーダー、ニャンフーと申しますにゃ! たった今から、この丘は我々のナワバリとするにゃー!!』
本当にウルシーヴァの言う通りになった。
オオカミの次は、強大なる虎型のモンスターが群れを成してやってきた!?
『猫科は高いところと暖かいところが大好きにゃん! だからこの土地が気に入りましたにゃん! オオカミや人間どもにはもったいねー! さっさと明け渡すにゃー!!』
虎たちは、ウルシーヴァWithオオカミ軍団同様に、群れを率いるリーダーだけが人語を解して宣戦布告してきた。
やはり、あの虎軍団も群れの長だけは上位種なのかな?
まあ細かいことは気になるけれどもせっかく挑まれたので、前件同様にゴーレム化したコレーヌに薙ぎ払ってもらった。
一瞬で決着がついた。




