表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/56

第八話 ねこグッズ

 貰い手が見つかるまでとはいえ、やはり一緒に生活する以上、ねこさんのグッズはなにかしら必要である。いつまでも段ボール生活をさせるわけにもいかないし、人間用の器を使い続けることもよろしくない。獣医さんに行くにしても、日中仕事で家を空ける間の留守番をさせるにしても、やはり彼の居場所となるところは欲しくなる。それに先住犬のひなさんとはまだ仲良く一緒のスペースで生活は困難である。


 そこで近くのペットショップに買い物に出かけた。ねこさんがいつまでいるかわからないとはいえ、ねこさんが自由に歩き回れる場所の確保としてゲージを考える。犬しか飼ってこなかったぼくはねこケージを見てびっくりした。


 二階建て? 三階建てもあるのかよっ!?


 そう、犬のケージは一階だけの平屋建てに対し、猫のケージは二階や三階があるマンションタイプなのである。確かに犬と違って、猫は高いところまでジャンプするのだから、平屋タイプでは物足りなくなる……のかもしれない。


 お値段はピンきり。しかし、やっぱり一週間くらいで見つかるかもしれないと思っているぼくは、とりあえずケージの購入は諦めた。食べる量も少ないし、ミルクもあまり飲まないことを考えて、哺乳瓶だけを購入し、ホームセンターにも足を延ばした。


 普段、犬用品しか見ていないからなのだが、猫のグッズはやはり昔に比べて随分充実した印象が強い。いや、むしろ犬用品よりもスペース広いんじゃないの?な感じさえ受ける。


 ケージの種類も様々だが、爪とぎまで種類が豊富。さらに遊び道具やトイレの砂のバリエーションの豊富さには驚きっぱなしだ。昔、ほんの一年ほど猫を飼っていたときがあるのだが、そのときは、トイレはとにかく臭いというイメージが強かった。砂を敷き詰めても、固まる砂であっても、おしっこがトイレの下へ流れてしまい、そこに溜まった尿がひどく臭ったし、固まったおしっこの砂をビニール袋にまとめて捨てていたため、その袋の中がとにかく臭くてたまらなく、猫のトイレ掃除をするのが嫌で仕方なかった。とはいえ、親に猫に触りたければ、ちゃんと世話をしろと言われれば、仕方ない、やらざるをえないのだが、それにしたってだ。


 特に猫の尿は強い独特な臭いは今だって苦手である。しかし、昨今、その部分は特に改良されているようで、トイレの下にシーツを敷き、一週間に一度の交換でOKというようなうたい文句がされている。トイレも砂を敷き詰める器の下に、シーツを挿入できる部分が作られていて、衛生さが強調されている。トイレ本体も、砂もシーツも高額ではないし、砂は紙でできているものもあり、トイレにそのまま流せるタイプまで登場しているというではないか!? 猫ブームによってなのか、ここまで改良されていることに、本当に驚かされた。というか、このトイレシステム考えた人、頭いいなと唸ってしまった。


 とはいえ、このとき、ねこさんはまだ排泄は自力ではできないと思っていたこともあり、トイレの購入も見送った。爪とぎも獣医さんで爪切りをしたばかりなので見送り。にしても、フラットタイプの爪とぎも多いが、ちょっと遊び心のあるものまであるなんて、ねこさんの住む環境はこうも昔と違うものかと思わされっぱなしだ。


 興味深くねこグッズコーナーを見て回った最後にぼくが目にしたのはキャリーケースコーナーだった。見たことがある猫用のキャリーケースがずらりと並んでいた。あの、編みカゴに窓がついた、獣医さんに現れる大半のねこさんが入っているものである。上から入れるタイプで、いかにもねこさん用なのだが、その隣に見慣れないキャリーケースを発見する。


 三つしかなかったのだが、とにかく斬新に映ったのは間違いない。一言で表すと、カプセルホテルみたいなかんじだ。上と横から入れることが可能で、未来の宇宙船的な印象を受けた。表の扉を上にしまいこめば、部屋のように使うことも可能だという、そのキャリーケースに胸を打ち抜かれてしまったのである。


挿絵(By みてみん)


 これだ! この、誰も持っていなさそうなところもいい!


 お値段も三千四百円と実にお手頃価格。そして、持っていてもなんだか、とってもお洒落だった。仮にねこさんが貰われていったとしても、ひなさんが動けなくなったときにも利用できそうだと、ぼくはそのキャリーケースに決めた。


 平らなタイプの食器と、陶器製の水入れも同時に購入。また、キャリーケースの下に敷くようにメッシュタイプのマットを購入。しめて五千円。思ったよりも経費が掛からなかった。


 けれど、やはり心残りはあるわけで……こうやって、ねこグッズを見て回り、実際購入してみて、本当に誰かの手に渡してしまってもいいものかと。


「ねこケージかぁ……」


 かなり後ろ髪を引かれながら、ぼくは家に戻る。しかし、それから二日後、再び、このホームセンターを訪れたぼくは、もはや迷うことなく二階建てゲージを注文するのである。


(余談)


挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=751138634&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ