第五十二話 うちのオトモです
ぼくはモンスターハンター(略してモンハン)というゲームが大好きだ。ひたすら狩りをするだけのゲーム。ドラクエやファイナルファンタジーのようなRPGと違い、レベルアップしてHPやMPが増えていくなんてこともない。より強いモンスターを狩り、そのモンスターから材料を剥ぎ取り、集め、武器や防具を強化していく。やりこみ要素満載の人気ゲームである。このゲームシリーズの途中から、オトモアイルーと呼ばれる、ねこキャラクターを連れていけることになった。これが実にキュンキュンする。
オトモアイルーにはもちろん、自分の好きな名前がつけられる。最新のシリーズでは毛並みや目つきなども選べるようになった。一緒に狩りに行くから当然、武器や防具も作ってやらねばならない。そして、最近では一人で狩りに行く場合、二匹のオトモを連れていける。彼らは回復笛のような狩りを支援してくれる角笛を吹いたり、落とし穴を設置したりとサポートしてくれるだけでなく、健気に大型モンスターに突っ込んでいき、やられても、やられても、ハンター(自キャラ)が生きている限り、体力を回復して戻ってきてくれる。
これだけ聞いても、ねこ好きにはたまらない設定、キャラであるのはわかっていただけるだろう。だが、それだけではない。彼らは自分達を『ご主人』と呼び、どんなときも常に後ろをついてくる。二足歩行をしたり、四つ足で駆けたり。控えのメンツは狩りに必要な物を取ってきてくれたり、修行したりもできる。ちなみに最新シリーズでは、このオトモアイルーを自分で操作して狩りに出られる。可愛すぎて、ニヤニヤが止まらないこと、この上なしである。
ねこさんを飼う前から、このゲームにハマりこんでいるぼくは当然のことながら、このオトモアイルーというキャラクターが大好きだった。うちにねこはいないから、連れていくオトモの名前は『ひな』がテッパン。
さらに大好きすぎて、UFOキャッチャーでぬいぐるみをゲットしたり、ストラップをいくつも持っていたりするくらいには、このゲームとオトモアイルーが好きなのである。
前置きが長くなったが、最近、うちで、このリアルオトモアイルーが出現している。言うまでもなく、うちのねこさんだ。彼はどんなときも、ぼくについてきてくれる。もちろん、眠たいときは、まったく相手にしてくれないが、気づくと側にいる。これは、かなりキュンキュンする。
だが、反面、困ることもある。トイレにも、風呂にもついてくるのだ。
これは、ひなさんもそうだ。ぼくがトイレの扉を閉めていると、扉の向こうから「フーン、フーン」と鼻で鳴く。開けろのサインである。開ければ入ってくる。中途半端に開けても、鼻で扉を押してまで入ってくる。トイレの臭いを嗅ぎ、ぼくが出るまで居座る。こんな先輩を見習ったのか、ねこさんも来る。
扉を閉めれば、扉の下の隙間から、白い小さな手がニョキッと姿を見せる。開けたいのか、高速になる。開かないと「にゃうーん」と鳴く。開けると入ってくる。中途半端に開けても、なんとか入ってくる。そして、トイレの裏に回ったり、中を探検したりする。出るまで出ないのは、先輩と同じくである。
では、風呂はと言えば、ここは二人、様子が違う。
ひなさんは脱衣所で、ひたすらじっと、ぼくの出てくるのを待ち続ける。開けてくれとは言わないし、出てくると安心したのか、戻っていく。
ねこさんは……洗い場に入ってくる。開けてくれと扉の前に影が見え、開けると中までやって来る。湯を肩に掛ける音が気になるのか、浴槽に手をかけ、何度も覗く。ぼくが覗き見ると離れる。濡れた洗い場で座り込み、じっとぼくを見つめる。時折、濡れた足を舐めるが、出ていこうとしない。シャワーのときも入ってきて、濡れても平気でいる。それでも、先日はお湯にびっくりして逃げようとして、風呂場の入り口でつるんっと滑ってしまった。しかし、めげずにまたやってくる。
一度、あまりに濡れてしまって、タオルで拭いてから乾かそうと、ドライヤーをかけたら、音にビックリして、爪を立ててぼくをよじ登り、逃げ去っていった。首もとは出血する傷となったが、小さい傷なので、数日で治りはしたが、洗ったあと、どう乾かしたらいいのか、問題が浮上したのであった。
なにかをすると側に来てくれる、後ろをついて歩いてくる、彼らのこんな姿は本当に健気で可愛い。
だが、せめて……トイレくらいはゆっくりと、一人にさせてもらえないだろうかと、扉の前で開けてとアピールする二匹のオトモたちに心の中でお願いをしながらも、仕方なく扉を開けて招き入れてしまう今日この頃なのであった。
(余談1)
(余談2)




