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第十五話 ネットで買えばいいのに

 獣医さんに行ったその日、ぼくは再びホームセンターを訪れた。本格的にねこさんとの生活を始めるため、二階建てマンション(ゲージ)を購入するのが目的だった。


 ところがである。二階建てマンション売り切れで、展示された現品しかなかったのだ。しばらく、睨めっこする。三階建てマンションの在庫はあるが、二階建てマンションだけがない。どうやら広告が入っていたようで、売り切れてしまったらしい。


 仕方なし、予約をし、トイレと、トイレの砂、トイレシーツを購入し、ホームセンターを出て、また百円ショップにタオルを買いに行った。三枚目にもなると、違う色が欲しくなるのが不思議である。今度は緑が優しいツリー柄のタオルにした。


 うちの子にすると決めてからは、とにかく、ねこのグッズを見ることが楽しみになっていた。バラエティに富んだフード、トイレの砂、遊び道具を見るのも、楽しくて仕方なかった。ホームセンターだけでなく、スーパーや薬局に立ち寄ったときも、ついつい、ねこさんの道具に目が走って仕方ない。こうなると、もう、子供を持った親となんら変わりない状態だと思う。自分の子が可愛くて仕方ないと、次から次になにかを買いたくなる衝動は抑えがたい。


 そんな親バカになりながら、ゲージ納品を心待ちにしていた。しかしである。なかなか、納品連絡がないのである。三日くらい経過して、うずうずし始めたぼくに、あの男がサラッと言った。


「なぁ、ネットで見たら、結構あるんだな、ねこのグッズってさ。ゲージなんて種類豊富じゃん。は? なに? おまえ見てないの? いや、見てみろよ。値段ピンきりだけど」


 その言葉に、ぼくは急いでネットを検索した。とあるメーカーのサイトで目を見張る。


 うそーん。


 ぼくがホームセンターで発注したメーカーのサイトなのだが、とにかく、その種類の多さに驚かされた。さらに衝撃的だったのは、発注したゲージと一緒のお値段で『初心者用キット』なるものが売り出されていたことだった。


 二階建てマンションの他に、トイレ、爪とぎ、玩具がついたナイスパッケージ。さらにピンクかブルーか、二色から選べるプリティ商品。正直、これを見たときは唸った。発注してしまったのだから、本当に今更のことであったが、こんなキッドがあるのなら、これで揃えたよ、オーマイガーである。そして、格闘した。発注を取り下げて、これを注文してしまおうかとも。トイレが二個あっても困ることはないだろうし、玩具もあったほうがいいだろうし、爪とぎも消耗品だからと。


「なんかさ。おまえ、ネットでガンガン買い物するわりには、どうして思いつかなかったわけ?」

「キャ……キャンセルしようかな……でも、見ないとわからないし」


 数字だけを見ても、実際に見ていないから、どういうものかわからないのと、実際、注文したとして、発注商品の方が早く届いてしまっては意味がない。ここでかなり心の葛藤があった。


「ホームセンターに納品日、聞いてみりゃいいじゃん。それで、納品されなかったら、ネット買いすれば?」

「明日、連絡入れてみるわ」


 翌日、お昼すぎにホームセンターに電話を掛けると「今日、納品されました」と返答をもらう。あっさりと『初心者キット』の夢はついえたのである。


「夕方……行きます」


 納品されてしまったのは仕方ない。しかし、これだけ便利になった世の中で、どうしてネット購入を頭に入れていなかったのか、浮かびもしなかったのか、今となってはかなり謎である。いつもなら、ポチッと買い物な人間なのに……ねこさん熱に浮かされていたとしか考えられない……本当に。


 今後、なにか、新しいアイテムを購入する場合はネットも考えようと思った話である……がしかし、この先、これ以上の大きな買い物をすることになるのだろうか? と考える。きっとない。おそらくない。同居人が増えない限り……


 その日、ぼくは爪とぎと、小さなねこパンチマシーン(鈴をつけた鳥のスタンド型おもちゃ)を購入し、ホームセンターを後にする。帰宅して、早速ゲージ作りに勤しんだのだが、組み立てに苦労しすぎて(苦労するほど難しいものではないのだが、急ぎ過ぎて、組み立て方を間違え、また組み直すを繰り返した)、手首を痛めてしまうという虚弱な己の肉体に辟易したのは言うまでもない。


(余談)

挿絵(By みてみん)



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