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イメージに振り回される人々


『お客様がお望みならどこへでも駆けつけます。自動式人形サービス、ヴァイオレットエヴァーガーデンです』


という口上を聞くと、おいおい何かすごいのが出てきたぞと、与太郎に驚く長屋の住人のようになってしまう。


劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンを観てきた。京都アニメーション制作、テレビシリーズの続編に当たる。


代筆を生業とするヴァイオレットという少女が戦争で生き別れた上官と再会してハッピーエンド。予想通りの結末なので、ネタバレしても別に良いだろう。CMとかでもやってるし。


ストーリーを言ってしまえばそれだけなのに、何故かここまで追いかけてしまった。ひとえにヴァイオレットというキャラのアイコンが魅力的だったと思う。


ヴァイオレット本人はそういった解釈を拒んでいた。王女の代筆をした美しいドール、戦火を生き抜いた英雄という周りが勝手に作り上げたイメージに反発するような描写が見られる。


では本当の彼女は何なのかというと、よくわからない。子供のようで、職業的な倫理観も持っているし、単純に過去に縛られた可哀想な女の子というわけでもない。


冒頭で紹介した口上は、自己紹介というより線引きのように感じる。私のことをこれ以上探るなというような。


このようにガードが固くあらゆる解釈を拒むので、逆にアイコンとして見るしかなくなる。


唯一、彼女が心を許すのは前述の上官、ギルベルト少佐だけだ。だが、ギルベルトにしたって、ヴァイオレットを可愛い女の子としてしか見ていない気がする。彼自身も父親の作り上げた軍人像に従って生きてきた過去がある。


ヴァイオレットも、少佐のそういう一面はよく知らないはずである。二人の間に衝突が起こるはずだと思った。ヴァイオレットが生きる縁にしていた『愛してる』にしても、様々な解釈がありそうなので。けれどそういったズレが描かれることはなかった。


『少佐は私のことをえっちい目で見てたんですか。気持ち悪』


とか、言われても嫌だしね。仕方ないか。恋愛というのは作り上げたイメージとひたすら格闘するシャドウボクシングみたいなものなのかもしれない。



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