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依って立つもの(この世界の片隅に ネタバレあり)

こうの史代の「この世界の片隅に」を読んだ。


戦中戦後を舞台に一人の女性が生きる姿を描いた漫画だ。ついこの間までドラマがやっていたが、内容にそこまでの違いはないような気がした。


あとがきで作者のこうの史代氏が語っているように、ダラダラとした日常が最初は続くが戦争が激化するにつれ、悲惨な出来事も起こる。


主人公のすずは、始終ぼんやりしており、時折鋭い一面を見せるが、能動的に何かを解決するタイプではない。せいぜい、夫と昔関係があったと思われる女性に会いに行くくらいである。それも結局うやむやになる。


ドラマはあまりなく、淡々と過ぎる日常。すずが、艦娘になり神風を起こす展開もなく、戦争は終わる。


これだけだと、つまらない漫画に聞こえるが、印象に残った場面を上げる。


海兵になった幼馴染みが、すずの家に泊まりに来た時のシーンだ。


彼は軍人の仕事に誇りを持っているけれど、その矛盾に悩み、すずに拠り所を求める。


すずは夫がいるからそれを一旦断る。幼馴染みはすずを普通だと言ってからかう。


普通、平凡、つまらないという意味ではなく、おかしな時代における最後の希望をすずに託したのである。


この作品のテーマは居場所という事に尽きると思う。


夫と関係のあったと思しき女性も、居場所は簡単になくなったりしないと言っていたし、作品の最後ですずと夫が、孤児を拾う所なども象徴的だろう。


イデオロギーとアイデンティティーを混同するのが現代の風潮かもしれないが、そこから解き放たれているという点でも興味深い。


政治もロックも宗教もアニメも死んだ。受け皿を探し続けた私だったが、そこに一石を投じられた気分だ。


まだ他にも良かった箇所がいくつかあるが、割愛する。興味のある方は読んでみる事をお勧めしたい。



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