祈り
初詣に行く時は、私の姿を誰にも見られないようにして近所の神社に向かう。
こそこそと、野良猫のような足取りである。後ろめたいわけではなく、こうしないと願いが叶わないような気がするのだった。
神社で手を合わせ、お参りを済ませるとそのまま家路につく。
帰りは人目を気にする必要はない。そもそも、神仏に願掛けするような案件が、私自身には残っていないので無駄な行為なのだ。
これでも昔は恋愛成就や、セロリを食べられるようになりたいなど、可愛い願いを持ち合わせていた。不思議なことにそれもなくなった。
執着が年々薄まりつつあるようだ。
それは神様の方に、預けているのかしらんと考えたくなるのだ。
欲が深いと色々苦労する。それを預かってくれるのなら、それほどありがたいことはない。
あるいは、期待するような事柄が減った可能性もある。
未来に一体何を期待せよというのか。皆がどんなことを考えてお参りしているのか、私には見当がつかない。祈りだけでは何も変わらないのだ。
一つだけ願いが叶うとしたら、来年も同じ場所で同じ祈りを唱えることを許されたい。
世界が平和でありますように。