※神話と第二の人生をダイジェストでお送りします。
異世界 アルガイム
創造神に二柱の神がいた。
二柱は互いに協力し、大地を、海を、動物を創造した。
そして自分達と同じように知恵を持つ人間族を創造した。
だが、二柱が協力していたのはそこまでだった。
片方の神が人間族をベースに新しい種族を創造した。
別の神も張り合うように新たな種族を創造した。
お互いが競い合うように幾つもの種族が乱立していった。
ある時、地上では種族間で生存を賭けた戦いが起きた。
自分が生み出した種族が劣勢になると、神は魔力の元となる魔素を創って関わった種族全てに操る術を与えた。
戦況が逆転すると、別の神もまた霊力の元となる霊子を創って関わった種族全てに操る術を与えた。
神に力を与えられた種族達の戦いは苛烈さを増していった。
このことに嘆いた神々は互いに協力し、新たな神々を創ってこの世界を去っていった。
存在を司る神 セシル。
種族を管理し、感情を持つ事が出来ない神--システム。
システムは種族毎に対応するため、六つの配下を用意した。
天の神、人の神、獣の神、龍の神、精霊の神、魔の神である。
多くの時が流れた世に、一つの種族が大陸の覇権を得る為に動き出す。
大陸の西の果てに住む、魔人種の中でも魔力に最も長けた種族--魔人族。
強力な魔術、魔法を無詠唱で使いこなし、魔力を体の外に装う魔装にて他の種族を圧倒していった。
大陸では霊力よりも魔力が重視されていた為、瞬く間に大陸は魔人族に支配されようとしていた。
だが、魔人族の進撃も長くは続かなかった。
東の果てにある、魔力よりも霊力を重視していた列島の人間族の国、ヤマトが攻勢に出たのだ。
魔力に対して優勢を得る霊力を駆使し、霊術、精霊術、神霊術を用いて魔人族を押し返した。
接近戦にて他を圧倒していた魔装の戦士も、魔装の理を利用した霊装をもって撃退し、ついに大陸の半分を取り戻す。
取り戻した大陸にはヤマトの開拓者が続々と押し寄せた。
魔人種以外の種族が入り乱れて、開拓が進むこと五十年が経ったのち、開拓村の一つに男の子が生まれる。
名をヒデキ。鳴神英輝の転生した男の子であった。
ヒデキは他の赤ん坊達と変わらぬ子であったが、四歳の時に高熱をだして生死の境を彷徨う。
この頃から徐々にヒデキの才能が発揮されていった。
五歳も間近のある日、血だらけで帰ってきたヒデキに両親は卒倒した。
慌てて駆け寄った両親の目に、流れてきたヒデキの血を舐める一匹の獣の姿がうつった。
歴戦の刀術士ですら危険視する、魔獣・銀狼種の子供だ。
この時、ヒデキには魔獣使いのジョブが発現していた。
その才能を祝う為、父親は五歳の誕生日に行商人から魔獣の卵を購入することにした。
卵の魔素が安定しないため、何が生まれるか判らない乱種の卵。
西の領域から流れてきた魔鎧種の卵。
ヒデキは、自分の血を与える事で魔獣が元気になる事を知っていたので、二つの卵にも血を与えた。
『シルバーファング』の異名をもつ銀狼種のシルファン。
行商人の言語で『天』を意味する天竜種のティアン。
西域の女性の名前から名付けた魔鎧種のエイミー。
ある日、ヒデキの住む開拓村が多種族で構成された盗賊団から襲撃を受けた。
辛くも逃げ出す事に成功したヒデキは父親から翻訳の魔導指輪を持たされ、山を越えた先にある祖父の開拓村へ逃げる事を指示される。
逃げのびたヒデキは盗賊への恨みを押しこんで、自衛のために祖父から刀剣術を主体とした戦闘技術を修得していった。
10年がたち、ヒデキは大人として扱われる事になって幾日。
虎視眈眈と復権を狙っていた魔人族が行動を開始する。
全種族が絶滅寸前まで追い込まれる、魔霊戦争の始まりであった。
戦争の最中、ヒデキは魔人族でも指折りの魔剣を扱う魔剣士と山岳地帯で闘っていた。
まだ若いヒデキだが三体の従魔と共闘、祖父の仲間が鍛造してくれた霊刀をもって魔剣士を打倒した。
激しい戦いの傷痕は地盤を支える事が出来ずに、崩落が始まりヒデキ達はこれに巻き込まれてしまう。
運よく地下空洞に落ちたヒデキは意識を失った。
ヒデキが意識を失ってからも戦争は続き、泥沼状態となった。
戦争に終止符を打ったのは神々が眠りつくと云う異常事態だった。
異種族であっても滅ぼしてはならないと悟った人々は生まれた地へと帰路をとった。
そして、この戦争がお伽噺になってしまうほどの時間が―――1000年の時が流れた。
神々が僅かに力を取り戻した時代に、小さな欠片が一人の少年に宿る。
少年が目を覚ました時、新たな物語が動き出す。