#16_ハーフエルフの少女、ミリアリア
「アベル様、セドルさん、ご主人様のおかげで元気になれました。
ご主人様に出会えたのはエミリアやお二人のおかげです」
ロミーナが丁寧なお辞儀をして、アベル達に挨拶をしている。
商館の守衛に呼んでもらったら、二人ともやってきた。
「おお…なんと…よくぞ無事で…ドワーフを守護せし精霊の神よ、ありがとうございます」
「話には聞いていたが、元気になったようだな、ロミーナ。
ふふふ…これもまた私がヒデキに奴隷を薦めた運命の結果! はっはっは!!」
アベルの高笑いはどうでもいいが、セドルさんは涙を浮かべていた…やっぱり世話役だったのかな。
ジョブ修得祭から翌日になり、今日はミリアリアとの初顔合わせだ…やはりベッドは狭かった。
隣室の空室を知ったので、一日千二百セシルで二部屋を借りて、姉妹は雑貨屋に買い物中だ。
エミリアは「相手を知らねば…」と言っていたが、せっかくなので姉妹水入らずにしておいた。
「おや? 今日は黒騎士は別行動かい?」
「ああ、エミリア達に買い出しを頼んだから、そっちに行ってもらった」
最初にシルファン達を知ってもらった方がいいと思い、エイミーを姉妹の護衛に残して一緒に来ている。
一応、土足で歩く廊下だが、シルファンの足を守衛の人が拭いていた…最初はビビっていたのに慣れたか。
いつもの応接室に通されてソファーに座る…シルファン達は床に伏せて、ロミーナは立っていた。
事前にエミリアから主人と奴隷のあり方を聞いているので言わない…一緒に座ってもいいと思うのだが。
「セドル…ミリアリアを呼んできてくれ。…ロミーナの生死不問を解除する、でいいのだね」
「ああ、俺には不要だからな。それでロミーナは幾らで買い戻す必要があるんだ?」
「わ、私はご主人様に…ごめんなさい、勝手に発言しました」
アベルがロミーナに厳しい視線を向けると黙り込んだ…おちゃらけても商人か。
己を買い戻す事は奴隷の権利らしいし、聞いておいて損はないだろう。
「さて、彼女の場合は特殊な事例でね。…妥当な金額ではないのだが、契約は契約だ。百万セシルだよ」
「ブフゥ!!」
思わず拭いてしまった…えっ、五年経過で百分の一になるのかよ!!
「幾らなんでも…いや、口止め料か」
「正解。元々の目的が目的だからね…欲求を満たす為には金など惜しくないって奴等もいるのさ」
やれやれ…この件は最後まで胸糞悪い話だったな、ロミーナも落ちこん…でいるどころか興味なさそうだ。
「へぇ~、百万ですか…世の中分かりませんね」などと小声で呟いている。
本人が気にしてないなら…いいか。
アベルがロミーナの手を引いて、距離をとった…ロミーナの手をとってスキルを使用している。
変更が終了したのか、ロミーナが小走りでこちらに戻ってきた…ドアをノックする音が部屋に響く。
「失礼します、若旦那。連れてまいりました」
「…失礼します」
セドルさんの後に聞こえた声は澄んだソプラノだった…感情は不機嫌全開だったが。
プラチナブロンドの長い髪が後ろに隠れていても見える…セドルさんがドアの横に控えるように移動する。
身長は150cmよりも少し低いくらいか…深緑の民族服に薄緑のズボン。
胸は控えめ、着痩せするタイプの服じゃないから…おそらくAよりのBくらいか?
髪型はツインテールだが、よくある位置よりも低い場所で結んでいる…長いな腰まであるぞ。
顔はエルシアを知らなければ一番の美人であっただろう…背丈は幼いのに美人。
「…!?………はじめまして、ミリアリアと申します。今年で14歳になりました。
エルフと聞いていたのに、ハーフエルフで残念でしたか?」
「いや、別に気にしないけど」
こちらが即答したら、目をパチパチとして動きが止まった。
例の如く、初対面の相手には驚かれたし…まあ、いいけどね。
「…え?………えええええ!? だってハーフエルフだよ!
わかった、ハーフが何かわからないんでしょ!!」
「他種族で言うところの混合だろ?」
また即答したら、かける言葉を失ったかのように黙り込んでしまった。
どうやら、自分は彼女があしらった購入者とはかなり違うようだ。
「ククク…ハッハッハッハッハ!」
今まで笑いを堪えていたアベルだが、遂に決壊したようだ。
ミリアリアの様子がツボだったのか高笑いをしている。
「…失敬。ププ、そろそろ…ちゃんと自分を売り込んでみないとな」
「わ、わかってるわよ…失礼致しました。先の無礼をお許しください」
自分が今いる場所が何処なのか思い出したのか、澄ました感じで喋りだした。
先に本音がみれたのはよかったな…でないと騙されていそうだ。
「いや、素のミリアリアが見れたのは、こちらとしても嬉しい事だ」
「!? …本当に気にしないんだ。こんな人間、初めて…」
声が小さくて、よく聞き取れないが…。
「名前を呼ばれる事に驚いているが、普通にアベル達も呼んでいなかったか?」
「ああ…奴隷商会の規則でね。…犯罪奴隷には一切の妥協も許されていないのさ」
「望んでしたわけじゃないわよ! あそこが、大事な場所だって知ってたら行かなかったわ」
アベルの言葉に反応して一瞬だけ激昂したが、すぐに怒りを押させて普通に返す。
精神コントロールは最初は甘いが、リカバーは早いな。
「…つまり欲で罪を犯したわけじゃないと」
「当たりま…もちろんですわ」
リカバーも注意が必要か…これは14歳という彼女自身の問題なのかね。
「狩りをしていた聞いたが、弓の腕に自信はあるか?」
「弓が上達したと感じてから、狙いを外した事はないわ」
もはや言葉遣いを直す気はないらしい…こちらとしては好ましいから良しとしよう。
「ダンジョンでは弓主体でも構わないが、弓以外は覚える気はないか?」
「エルフ族は力や耐久が上がりにくいけど、必要とあれば覚えてみせるわ」
そういえば、千年前はドワーフとエルフの仲違いが多かった。
どうなのだろう…後ろにいるロミーナに確認してみるか。
「ロミーナ…ミリアリアを見て、どう感じる?」
「元気な人だと思います。奴隷の立場に落とされても、こんなに元気な人も珍しいなと」
あれ? そんなに悪い感情は持ってないのか?
「そうか。他には?」
「えっ!? え~と…あっ! ご主人様、ドワーフとエルフが諍いを起こしたのは遠い昔です。
今では気にする人は殆どいません」
そうなのか…だが、ロミーナはそうでも、ミリアリアはそうとは思っていないようだ。
こちらに意識を集中していたのか、黙って立っていたロミーナの存在感が薄かったのか…気付いたようだ。
「え? ドワーフ? だって、髪は黒紫でドヴェルグの特徴だけど…顔や耳、目はドワーフ…」
「はい。私はドワーフとドヴェルグの『ダブル』です」
どうやら種族ではなく、容姿に違和感を感じていたのか。
ミリアリアはダブルと聞いて、諦観した表情をして言葉を漏らした。
「…そう、そうなんだ。ようやく分かった。そういった趣味のひ「ご主人様を馬鹿にしないで!」…え?」
「エルシアから聞きました…貴方を購入しようとしたのは弓の腕を買ってだと。
逆に私はご主人様と全く縁なんてない、エミリアが気にしてくれなかったら、出会う事すら無かったの」
最初は怒りを込めた声で、次第に涙声になっていった。
寝ていた間にエミリアと同様にエルシアとも友達になったと喜んでいた事があった。
「ご、ごめんなさ「気にするな、ロミーナ」…はい、ご主人様」
「ごめんなさい! わ、私…12歳を過ぎてから『ハーフ』とか『ガラクタ』とか言われてて…。
それを目当てで買われるのかと思ったら…」
落ち着いたのか、謝ろうとするロミーナの頭を撫でながら遮る。
逆に、そんな光景に罪悪感を感じたミリアリアが謝りだした。
ええい、こっちにだってコンプレックスぐらいあるのに、どいつもこいつも。
「ともかく! 俺に必要なのは弓の腕であり、ミリアリアは美人なので問題なし!!
最終確認だ…弓に自信は? ダンジョン、フィールドで魔物と戦う覚悟は?」
「弓の腕で誰かに負ける気はありません! 魔物に臆す気は毛頭ありません!!…あと…び、びじん…」
「よし…アベル。笑ってないで仕事、仕事」
勢いのまま、こぼしてしまった言葉を拾われる前に事を済ましてしまおう。
アベルに声を掛けようとしたら、フフフと笑っていやがる。
「…本当にヒデキの相手は飽きないね。奴隷を買うのはどいつも色眼鏡でしか見ないのにね。
もちろん、きちんと仕事はするさ。金額は五十万だが…ヒデキ、税金の件は覚えているかい?」
喋りながら対面のソファーに座って、足を組む…様になっているのがムカつく。
横にはこちらを向く形でミリアリアが立っていて、ロミーナがその横についた。
同じ主人を持つ者同士、仲良くしたいのだろう…ミリアリアはちょっと戸惑っているようだ。
税金か、確かエルシア姉妹を買った時にも言われていたな…後でエミリアに確認を取ったけど。
「まず、年間の税は一万だけど、エルシア、エミリアは初年度で三万だったか」
思い出しながら語っていると、ミリアリアがロミーナに耳打ちしていた…すぐに返答をしている。
姉妹の話を聞いて、どんな人物か確認しているのだろうか…ついでにシルファン達も説明しておいてくれ。
「そうだね…ついでだし、この国の年間税でも話そうか。
まず一番年間税が安いのは村民の五千セシル。
次に小規模指定の町にされた町民の七千セシル。
中規模の町…ここ、フーリアの町だが八千セシル。
交通の要、大規模の町…近くならポータルの町だが九千セシル…そして王都が一万セシルだ」
職業別の税など色々あるが、探索・冒険者の場合は命の危険が群を抜いているので年間税だけとか。
全ランク共通で三万セシル…ただし他国籍である自分は五万セシルが必要となる。
「だが、犯罪奴隷に指定された彼女は、税や処遇が特別になる。
まず税金は購入初年度が五万セシルで、年間税は倍の二万セシルだ。
次に処遇は刑期の間、絶対に奴隷身分が解除されない。
通常の奴隷は主人が解放すればいいが…彼女を解放すれば主人共々、盗賊に落ちる」
「わかった、肝に銘じよう」
確か税を払うのは年初めかららしいが…全部で幾らになるんだ?
ロミーナは一万だから全部で十七万か、加えて一年が三百六十五日と考えると…経費は六十万八千。
ダンジョンの狩人生活は、他の冒険者のことを考えれば一日五十体が妥当だろう。
二階層なら、毎日入っても年間に必要な半分しか稼ぐ事が出来ない。
装備や経費を考えれば三分の一がいいとこ…性急にならないように上層を目指すしかない。
「…さて、名残惜しいが商談を終わらせようか」
「ああ、この袋に金貨五十枚が入っている…確認してくれ」
アイテムボックスから金貨を入れていた袋を取り出す…金額は事前に分かっていたから準備は抜かりない。
アベルは受け取ると重みだけ確認して、セドルさんに渡す。
扱いに慣れた人は重量だけで計れるとテレビであったが、そのレベルまで達しているのか。
セドルさんが確認している間に世間話となった。
「これでヒデキに頼まれた件は全て完了したね」
「ああ、世話になった…さすがに新しい奴隷を、とは言えないしな」
「そういえば、住む所は決めたのかい? さすがに宿生活はきついだろう」
「とりあえず、話にあった家を今日の夕方頃に確認するつもりだ…時間指定で嫌な予感はしてるがな」
「そうか。そこに住む事が決まったら教えてくれ。引越し祝いを持参しよう」
その後も他愛ない世間話をしていると、セドルさんから声を掛けられた。
「若旦那、確認ができました」
「わかった。…今日から君の主となるヒデキだ。挨拶を」
「はい。ありがとうございます、ご主人様。精一杯頑張りますで、よろしくお願い致します」
「よろしく頼む」
恭しく礼をしたミリアリアに声を掛ける…昼まで時間はあるし、このまま冒険者ギルドにいくか。
アベルから主従契約を受けるのも三回目…よし、今度こそ見切った! 遂に見切ったぞ!!
使う機会はないジョブを手にしてしまった…意地で見切ろうとするのはよくないな。
金貨を持っていったセドルさんが木の弓…いや、霊木の弓と頭陀袋を持ってきた。
大地から生じた霊力を吸収して成長した木から作ったのか…中々の威力を秘めていそうだ。
「霊木の弓か…。倒すなら簡単だが、魔石や魔素の回収に問題が生じないか?」
「へぇ…わかるの? あっ!? いえ、お分かりになるのですか?」
「畏まれるのも困るな…慣れてもらうしかないか。それで…調整はできるのか?」
「できるわよ。今からだってご主人様に御見せできるわ」
ミリアリアが自信満々な感じで薄い胸を張る…げふんげふん。
「ロミーナ、心の準備をしておけ。昼まで魔物狩りだ」
「はい、が、頑張ります」
「なにやら今後の予定もできたようだし、お開きとしよう…彼女の荷物だ」
「ああ、長居して悪かった」
気にしないよと笑うアベルとセドルさんと別れて、商館を後にする。
少し歩いたところで、ロミーナの皮装備一式を出して付けてもらうか。
今日は午後からダンジョンに向かって魔物馴れさせるつもりだったから、全員、冒険者服を着ている。
ミリアリアの民族服も一応、魔物の材料を使用しているとはいえ…。
「装備不足が深刻だな…予定を変更した方がいいかもしれない」
「す、すみません。私がご主人様の防具を…」
「いや、俺はどうとでもなるから、ロミーナが怪我をしない方が大事だ」
「ありがとうございます、ご主人様」
はにかんだ表情が可愛いので、よし。
ミリアリアは物珍しそうに辺りを見ていた。
「フーリアの町は初めてか? ここに来るまで、町の様子を見せてもらえなかった?」
「そうね。ずっと王都の牢屋だったし、この町に来たときは西ゲートから馬車移動だったから」
すっかり、口調が戻っていた…まぁ、いいけどね。
「…一応、女性用の外套もあるが。ミリアリア、どうする?」
「別にいいわ。もう慣れてるし、ご主人様の目がこれまでの人と違うだけで充分よ」
「そうか。まぁ正確には俺『達』だな。 別の場所にいる姉妹も気にしないし、ロミーナは?」
「私自身がそうですし、ミリアリアさんとも友達でいたいです。私の事は呼び捨てでお願いします」
「…そうなの…ね。…変な人達。これからよろしくね、ロミーナ…あと私も呼び捨てでいいわ」
「はい、ミリアリア…よろしくです」
笑顔で握手するロミーナと、ぎこちなくも笑顔を浮かべるミリアリア…とりあえず仲良くなったようだ。
同じ場所で生活していれば色々と問題も起こるだろうが、このまま仲良くしていて欲しい。
探索・冒険者ギルドに到着すると、冒険者が…二人しかいない。
「ようこそ! たんさ…またですか、ヒデキさん!?
そんなにお金が余っているんですか! 私に奢って下さい!!」
「人聞きの悪い事を言わないでください、アザリーさん。奢りは何時かまた何処かで、考えますよ。
とりあえず、登録をお願いします」
「はぁ。しかし、14歳のハー…ごほん、失礼しました。
エルフのミリアリアさんですね…はい、登録完了です。クエストも受けられますか?」
やはり、有名なのだろうかハーフエルフの特徴は。
アザリーさんは追求してこないから嬉しいが、差別意識は勘弁してもらいたい。
「いえ、今日はやめておきます。…人が少ないですが、ダンジョン攻略ですか?」
「半分は元のポータルの狩場に戻っていますね。残りは一階層と二階層に分かれています。
下層は稼ぎが少ないので中々、人が集まりません」
「なるほど。登録ありがとうございました」
「いえいえ、お仕事ですから。頑張ってきてくださいねー」
東のゲート場からいつもの大岩に移動する。
例の如く、女神像とジョブ発現を説明して、納得をしなくても実行し、例の如く驚かれた。
あとはエミリア→ロミーナ→三人娘で情報共有した事をミリアリアにも伝えてもらう。
今日も今日とて魔物探しをシルファン達に頑張ってもらう…本人達は狩りを楽しむのでWinWinの関係。
「そういえば、ロミーナは鍛冶師ジョブがあるけど、ミリアリアは何かジョブが発現しているのか?」
「ええ、縫製師や工芸師があるわ。エルフ族は縫製師の発現時から熟練度が高いのよ。
工芸師は…森の中で馬鹿にした連中を罠にかけていたら発現したわ」
「さらっと、怖いことを言ったな」
「あ、聞いた事あります。
爺ちゃんの職人仲間にも同じジョブが発現した人、いました…その人は像を作ってました」
なるほど、工作や製造作業をしていると発現しやすいのか。
ロミーナに銅板を作ってもらって…ミリアリアも何か作れるのだろうか?
「暇つぶしに、固有スキルを使ってみてくれていいか? ロミーナはナイフは幾ついる?
ミリアリアは…綿、木片、兎の毛皮、狼の毛皮があるけど出来そうなの、あるか?」
アイテムボックスのドロップアイテム用リュックサックを取り出して、二人にみてもらう。
二人とも文句も言わずに物色をしていた。
「五本あれば銅板ができます。ギルドに持ち込めば七十セシルになりますから…頑張ります!」
「…いや、スキルの使用は精神力を使うから、ほどほどにな。銅板は他に使えないのか?」
実は、錬金術師だと二本で百セシルになるとは言えない。
あとはスキル欲しさに買ったと思われたくない…やるなら自分でやる。
「えっと…魔力銅の武器ができます。鉱物からできる青銅の武器より強いです。
複数の銅板があれば鎧もできますが、時間もかかります…私の精神力が少ないからです」
ロミーナは話をしながらも、精神を集中して鍛冶師の固有スキルを発動させる…よし、覚えた。
五本のゴブリンナイフが消滅して、光の塊が出現し、別の形へと変わっていく。
厚さ五mmの三十cm四方の正方形の銅板ができあがった。
「大量にナイフを使用すれば、形、大きさや厚さを変える事もできますが、基本はこの形ですね」
ふと気になって鑑定をしてみると魔力銅板とある…それはいい。
しかし気になる点は別にあった…品質がAとある。
確かにセドルさんは優秀な鍛冶師と言ったし、エミリアもドワーフは熟練度が最初から高いと言った。
ちなみに自分で作ったウォーリアナイフは品質がCだった…才能の差を感じる。
「誰がスキルを使用しても同じ銅板になるのか?」
「いえ、なんでも道具鑑定の熟練度が高い人が視ると品質を見る事ができるそうです。
その品質が違うと、劣化や強度に違いがあるそうです。
熟練度と一緒でS~Iがあって…Dもあれば一人前だそうです」
「ほほう…そこにも同じ評価の仕方が…」
よかった、そんなに品質が悪くなかった! 自分のは一人前だ!!
ミリアリアも一緒になって鍛冶師の固有スキルを見ていたが、徐に立ち上がる。
「それじゃ、今度は私の番ね。アイテムの綿は色々できるけど…今回は綿生地にするわね」
ロミーナと同じように集中しながらミリアリアが縫製師の固有スキルを発動させる…順調、順調。
五つの綿が消滅して、同じように光の塊が出現し、長方形の生地が出来上がった…品質がA。
これが種族の違いと云うものだろうか。
「で、工芸師は…この木片五つから、木材や槍に使う棒ができるわ。
私のレベルだと短槍の長さが限界だけど…棒でいい?」
「ああ、せっかく銅板があるんだ…最終的には武器にしよう」
こちらの提案に二人が頷く…無事、工芸師の固有スキルも覚える事ができた。
再度、銅板と木製柄を材料にロミーナがスキルを使用して武器が出来上がった。
「…これが魔力銅の短槍か。…重さは鉄の短槍より少し重いくらいかな」
「はい。あとは普通の銅の短槍よりも丈夫で、魔物に攻撃が通りやすいのが特徴です」
「なるほどな。魔力を帯びているなら当然か…」
魔物を剣や矢で攻撃するのは、武器が未発達なだけが理由ではない。
例えば地球の武器をこちらで作れたとしても効果はかなり薄い。
別にファンタジーだから銃や爆弾が弱い訳ではない、世界の成り立ちが物理法則を下位に落としている。
最初に世界が完成し、後から魔力や霊力が追加された歪な世界が…この世界。
人間が原子、素粒子だと名付けたモノを、最初から知っている奴らが負けそうって理由で追加した力だ。
最初に創られた理――化学反応で得た運動エネルギーに負けるようなモノではない。
おそらく、銃や砲に似たものは出来るだろうが、結局は魔力、霊力量を比べるだけになる。
魔晶、霊晶石を除けば、魔力や霊力の性質が問題となる。
魔力、霊力量は質量に依存するし、流動し、無機物に留まりにくい…その性質を克服したのが魔装、霊装。
その為に剣や弓矢など、手で持つ事によって自身の『力』で魔物の魔力を削るのが一般的だ。
一通りのジョブも手に入ったが、昼まで時間がある…ついで温泉施設も教えておこう。
※ヒデキ・ナルカミの今回の新ジョブ
奴隷商人…固有スキル『隷属遵守』
奴隷売買から己の利を求める者に発現するジョブ。
人物鑑定など鑑定スキルが備わっている。
鍛冶師…固有スキル『鍛治錬成』
鉱物や鍛治に精通する者に発現するジョブ。
道具鑑定など鑑定スキルが備わっている。
縫製師…固有スキル『縫製錬成』
繊維や縫製に精通する者に発現するジョブ。
道具鑑定など鑑定スキルが備わっている。
工芸師…固有スキル『工芸錬成』
工作や製造に精通する者に発現するジョブ。
道具鑑定など鑑定スキルが備わっている。
感想、誤字脱字の指摘、ご意見などお気軽にお書きください。
読んで下さってありがとうございます。