戦塵は謳い巨狼は嗤う
第二作の案をまとめてたら投稿遅れる、やばい
まだ出さないけど
夜一作戦提案後、迅─────
いいのだろうか、置いてきてしまって。
断花迅は今更の不安に襲われる。
団長から「絶対」と言われた任務を、死なせてはいけない者を、不慮の事故とはいえ戦争に招いてしまった。最終的には同じ道筋を辿るとはいえ、明らか時期尚早だ。しかも幹部クラスまで出てきてしまった。あまつさえ、その無謀低能とも思える作戦を任せてしまった。全て過去形なのがまた悲しい。
しかし、あの少年──木山夜一にはそうさせるなにかがあった。迅はそう言い訳をしながら全力で砂漠を疾駆する。
汗は風に飛ばされ、皮膚は圧力に悲鳴を上げる。
「ここまででいいか⋯」
丁度一分くらい走った末に辿り着いたのは、ある街の端。まだ砂の黄色が足元にあるが、戦場からは幾許か遠いところである。
当たり前だが加速には距離が必要。しかもこの男にとって、”距離”とは”速度”である。長ければ長いだけ速度は上がる。
迅はクラウチングの姿勢で詠唱を開始する。
『流る煌暈 剥がれる天井 疏す快楽 収束する霊名 加わる悪頂上 逸る双刀を鳴り討て』
完全詠唱と予約詠唱の合技。完全詠唱だけでも集中力が削がれてしまうものなのに、そこに予約詠唱をも加える。それは一本の糸をその紡がれる言の葉は途切れない。
『光の束 量子の契合 揺蕩う蜜壺 角無しの大針 正す今宵の侵攻開闢 奔れ』
その連唱は一言⋯いや二言によって締めくくられる。
その超速を観測し、処理するその眼に巨狼が映る。
「【無際加速】」
無際の加速でその疑似雷は進化を見せる。
「【臨界越速】」
音速を超えた亜光速。付近の砂地が抉れる。
「ッ!」
身体は見た目以上にダメージを負っているだろう。全身が軋む。しかし、信じて立っていてくれた異代からの来訪者に感謝を送り、巨躯のど真ん中に鋭爪を突き立てる。
「死ね⋯!【点描】!!」
巨狼が反応する間もなく、唸る巨躯を亜光速が穿つ。超速の刺突の衝撃に砂は舞い、鮮血に塗れる。
その速度からの一点集中尖撃に耐える荒剛はどうにかしているだろう。
大敵がうなだれているのを一瞥し、疲労に身を任せ倒れ込む。熱された砂漠が文字通り熱い歓迎をしてくれるが今は必要のないし、鬱陶しい。
今回の新人は優秀だなと脳内で褒めちぎりながら初秋の赤空を仰ぎながら仲間が迎えに来るのを待つ───
◆
帰宅途中の謎鉄球内部、木山夜一質問タイム
「──つまり?」
「電化製品における電気のようなものってことだ、要するに」
現代の電車に比べれば比較的揺れの少ない鉄の籠の中で、溜まっていた疑問をぶつける。クガラはとうに寝てしまっているようで、時々意味のわからない言葉を発しているがまぁBGMとして置いておこう。
「支配魔力は使い方次第では爆発だって起こせる。ま、途方もない時間がかかるだろーが。それだけを追求するゼムもあるらしいから有用なんだろう」
「じゃあうまく使えば飛んだりも出来るのか?」
脳内に足からジェット噴射のように支配魔力を放出して飛戦する人間を描く。ちょっとかっこよさそうだな。
「できるできる。なんなら攻撃の初速を出すために推進力にして使うやつもいる」
いろんなことができんだな、と感心し次に進む。
「じゃあ次は支配能力について」
「支配能力ってのは司る概念とか物質を使用者の想像のとおりに実現する。これがさっきで言う電化製品。知っての通り俺の支配能力は『速度』。さっきみたく亜光速も出せはするが、身体が強化されてるわけじゃない。支配魔力で守れるとはいえ限度はある。現に俺の身体は今ボロボロだな」
足をだらけさせたまま、見せ付けるように腕を開く。外見からは傷は少ないが、服の前面が傷だらけにくたびれている。
「さっき戦った荒剛は『筋肉』だな。あいつは単細胞だからあんな雑な使い方をしてるけどホントは有用な支配能力だ」
少し羨ましそうな、いたずらっ子のような顔をして迅はだらりと力を抜く。
「そういえばゼムのこと言ってなかったな」
姿勢を正し、俺に向き直る。
「ゼムってのはなにかの目的を持って活動するチーム?みたいなものだな。荒剛は〈ヴァリアート〉。俺達は〈クロワゼ〉っていうゼムだ。それぞれ何かしらの二つ名がついてきててなヴァリアートは【絶対強信】、力だけを求める実力主義だな。うちは【骸薊】、これは俺らが言ったわけじゃなくて回りが付けた名前だけどな」
ふーん、かっこいいやんけ
「お、そろそろ着くぞ」
そうモニターを見ながら言う。どんなところなのだろうか。
そう期待と妄想に胸を膨らませながら鉄球から降りる。
「あれ、なにもない」
着いた場所はおそらくトトラスの城壁外周であろう森の中。建物はもちろん扉なんぞも見当たらない。
「ここだここ」
城壁の根元部分。草をかき分け何かの板に手をかざす。
「コール:骸寝XI-AH。オペンズロック、オン」
そう慣れた口調で無空へと唱えると、目の前の地面が割れ、白い磨かれた階段が現れる。
「うおぉ⋯」
俺はそう息を漏らす他、反応ができなかった──
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『ゼム』
この世界で言う団体やチーム、大きくなれば国規模にも。それぞれが何かしらの指標を持っている。ゼム同士の戦争は日常茶飯事で、長期に渡って終結しないものもある。
『詠唱』
無詠唱、式句詠唱簡略詠唱、完全詠唱の三種類に分かれる。その他にも予約詠唱や後与詠唱などの技法も多々存在する。詠唱の長さとイメージの鮮明さによって技の精度が昇降する。
【骸薊】
クロワゼの別称。何度殺しても生き返る狂戦士集団のためこの名がつけられた。
『支配能力』について
支配能力は司る物質、概念を支配するのであって、それに耐えうる環境や身体には変化しない。
この目録のタイトルの規則性とどこの『』なのかを当てた人はマジで凄いと思う。
トマトが枯れていく




