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51:摘出完了!

 もう昼が過ぎた。

 昼食を食べ損ねたなぁ。

 でも、ガラスケースの中のモノを想像すると、さすがに食欲が失せるからね。

 昼抜きでもイイか。


「トオル様。あと百人です!」


 そうカトレアさんに言われたけど、でも、ここに並んでいるのは五十人くらいじゃないかな?


「そんなに、いないんじゃ?」

「いいえ。他に出不精な人とか、足が悪くて外に出られない人もいますので。私達が連れて来ます」


 カトレアさんは、そう言うと転移魔法でその場から消えた。



 それから数分後。

「ヒヒーン!」

 馬の鳴き声だ。


 それと同時に、

『トオル、殺す!』

 ムチャクチャヤバイ声が頭の中に響いて来たんだけど?

 これって、間違いなくアグリィ子爵……いや、元子爵の無差別テレパシーだよ。



 ボクが、馬の鳴き声が聞こえてきた方を振り返ると、そこには刀を手にしたアグリィの姿があった。


「お前のせいで、私は身分を剥奪されたんだ」

「いいえ。私のせいではなく、領民のことを考えていないからでしょう?」

「何だと!」


 この声と同時に、

『殺す殺す殺す殺す殺す……』

 アグリィの心の声が、この近くにいる魔力を持つ全ての者達の頭の中にこだました。全員、気が狂いそうになっていたよ。

 ボクも狂いそうだけどね。

 そして、アグリィは刀を振り上げるとボクに切り掛かってきた。


 しかし、

「そうはさせません!」

 ルイージさんが、ボクとアグリィの間に割り込むと、もの凄いスピードでアグリィの腹に蹴りを入れた。

 身体が『くの字』に曲がるアグリィ。


 さらに、ルイージさんは、力が抜けたアグリィの手から刀を取り上げると、それをアグリィの顔に突き付けた。

 こんなルイージさんを見るのは初めてだな。

 さすが、転移魔法使い兼世話係兼騎士!

 それに、アグリィの負のテレパシーを受けながら機敏に動けるなんて、もの凄い精神力だと思う。



 一方のアグリィは、

「ヒッ!」

 剣を突き付けられて後ずさりしたんだけど、そっちに行かないで欲しいなぁ。

 そのままアグリィは、不運にもフィラリアの大群が入ったガラスケースに背中をぶつけてしまった。


 そして、ガラスケースを覆っていた布を掴んだ状態で、アグリィは、バランスを崩してその場に倒れ込んだ。

 同時にガラスケースから布が剥ぎ取られ、見せてはいけない気色悪いモノが公共の場に晒されることになった。


 さすがに、この場に居合わせて人々は、全員、顔面蒼白していたよ。

 まあ、ガラスケースが破損していないだけ良しとしよう。破損していたら大変なことになっていたと思うからね。



 ただ、このイヤな虫の大群を至近距離で目の当たりにしたアグリィは、その場で気を失ってしまった。

 まあ、そうなるのも分かる気がするけどね。


 それで、ボクはアグリィから布を取り上げると、急いでガラスケースに被せた。

 さすがに見せられる代物じゃないよ。

 モザイクをかけたいくらいだ。



 アグリィのことはルイージさんに任せて、

「治療再開します!」

 ボクは、残りの人達からのフィラリア摘出を急いだ。

 とにかく、患者さん達の体内に巣食う寄生虫を、次々と物質転送魔法でガラスケース内へと転移させまくったよ。



 さらに、カトレアさん達が五十人近くの人々を連れて来た。

 ほとんどが老人で、歩くのも辛そうに見える。

 カトレアさん達が、ゆっくりと先導して連れて来てくれているって感じだ。


 それから、ニート臭のする雰囲気の若者が二人ほどいたよ。

 それこそ、強引に連れて来たんだろうね。

 お疲れ様!



 そして、この五十人から順番にフィラリアを摘出して……、これで終了!

 ……だと思うんだけど、念のためチャットボット機能で状況を確認した。


『Q:これでフィラリアは全員から摘出できた?』

『A:一人残っている』

『Q:どの辺に住んでいる?』

『A:町の北北東端』

『Q:状態は?』

『A:このまま行けば、近いうちに亡くなる』


 これはマズいね。

 急がないと。


「カトレアさん。御使いシリシスの言葉では、まだ町の北北東端に一人残っているそうです!」

「えっ? あっ! 分かりました。今行きます! 転移!」


 大急ぎでカトレアさんは転移魔法で移動したけどさ……。

 でも、これって絶対に忘れていたよね?

 多分だけど、相当影が薄い人なのかも知れないね。

 みんなから忘れ去られるほど。



 そして、数分後、

「済みません。連れて来ました」

 カトレアさんが一人の女性をボクのところに連れて来た。


 たしかに影が薄い。

 これは、カトレアさん達を責め切れない気がしてきた。

 その女性には申し訳ないけど。



 早速、診断。

 体内には、本人とは全然違って思い切り影の濃いヤツがいたよ。

 今まで見て来た中で最大のヤツだ。


 ボクは、大急ぎで、

「(除去!)」

 その寄生虫をガラスケースに転移させた。

 これで、全員終了のはずだけど、再び念のためチャットボット機能に質問した。


『Q:これでフィラリアは全員から摘出できた?』

『A:できた』


 終了確認!

 これで、一先ず摘出までの区切りがついた。



 でも、このガラスケース内のヤツ等をどうしようか?

 何処にも捨てられないしなぁ。


 なので、ボクは女神様から頂いたペンダントを握り締めて、

「(シリシス。力を貸して!)」

 って念じてみた。

 すると、

「(それって、通信機じゃないんだけど)」

 シリシスが答えてくれたよ。

 助かったぁ。


「(このガラスケースの中身を処分したいんだけど、下手に捨てられなくて)」

「(じゃあ、マントル層の下まで移動させる?)」

「(さすがに、そんな魔法はボクには使えないし)」

「(力を貸してあげましょうか?)」

「(もしかして、ボクに憑依するの?)」

「(憑依じゃなくて……)」

「(でも、似たようなモノでしょ?)」

「(そうだけど、でも、こちらでトオル様の身体をコントロールできませんと、そのガラスケースの中身を処理できませんよ)」

「(分かりましたよ。じゃあ、お願い!)」

「(了解!)」


 まあ、これは仕方が無いかな。

 確実に処分するためにはね。



 ボクの身体の中にシリシスが入り込んだ。

 すると、ボクの背中に一対の大きな翼が生えてきた。

 御使い疑惑とか女神疑惑が、より一層強まりそうだな、これ。


 もはや、ボクの身体はボクの意思では動かせない。

 完全にシリシスのコントロール下にある状態だ。


 そして、ボクの身体は宙に浮くと、両手を広げて足元直下の地面に両掌を向けた。

 すると、地面が裂けて広がり、直径五メートルくらいの穴が出来た。



 再びボクの頭の中にシリシスの声が聞こえて来た。

「(この穴は外核まで繋がっています。ここにガラスケースを落とします)」


 ボクの身体が、シリシスの意思に従って、両掌をガラスケースの方に向けた。

 すると、ガラスケースが浮いて、そのまま、その穴の上へと移動。

 そして、いきなりロックが外れたかのように、地中奥深くへと向けて落下した。



 さらにボクの身体は、穴に向けて両掌を向けた。

 すると、次第に穴が塞がって行き、そのまま何事も無かったかのように、元通りの平坦な地面に戻った。



 あのガラスケースは、特に魔法で強化したガラスを使っているわけじゃないし、外核まで落ちたら高温高圧状態に耐え切れないよなぁ。

 フィラリアも耐えられるはずは無いし。


 いずれにしても、これで、あとは月一回の薬処方を六年間か。

 長いけど、みんな、我慢してよね!



 ボクの身体からシリシスが抜け出た。

 これと同時にボクの背中からは翼が消え、ボクの意思で身体を動かせるようになったんだけど、案の定、

「御使い様」

「天使様」

「女神様」

 みんな、ボクの方に向かって両手を合わせて拝んでいたよ。アグリィだけは気を失ったままだったけどね。


「一先ず、みなさんの体内から成虫となった寄生虫は除去しました。しかし、この寄生虫は蚊によって媒介します。蚊に刺されることで、非常に小さな寄生虫が体内に注入されるのです。それが体内で大きく成長し、血の流れを止めてしまいます。今後は、寄生虫が小さいうちに殺す薬を毎月一回服用していただきます。カトレアさん」

「はい?」

「薬は、アナタに取りに来てもらいます」

「承知しました」

「また、既に説明申し上げました通り、薬代はイサベリア女王陛下の御取り計らいで、国が負担してくださるとのことです。服薬期間は六年間と長いのですが、根絶を目指してご協力ください。では、ルイージさん。イサベリア女王陛下のところまでお願いします」

「分かりました。転移!」


 そして、ボクとルイージさんは、お城に向かって瞬間移動した。


 …

 …

 …


 一瞬にしてお城の前に到着。

 既に門番には顔を覚えてもらえているからね。顔パスで入城させてもらえた。


 謁見の順番も、かなり繰り上げて頂けたようだ。

 お城に着いて、十分程度でボク達は謁見室へと通された。


「トオルちゃん。もしかして、もう終わったの?」

「はい。結界の方はご対応いただき有難うございます。お陰様で無事、全員の体内から成虫となった寄生虫を除去出来ました」

「じゃあ、あとは毎月一回、六年間の服薬で完了ね」

「そうです。それで、薬はククラタ町の転移魔法使いのカトレアさんにボクのところまで毎月取りに来ていただくこととしました」

「そう。ただ、念のため城の者を同行させるわよ。支払いのこともあるし。毎月一回、薬を受け取る時でイイわよね?」

「はい。よろしくお願いします」

「でも、ホント、お陰で助かったわ。他にもヘテロ盆地のピリドン村とかオレエート国のメンチル町でも奇病を治したって聞いて……」


 ここに来て、イサベリア女王陛下のおしゃべりスイッチが入ってしまった。

 この後、しばらくボクは女王陛下に拘束され続けることになった。


 …

 …

 …


 そして、その後もドロセラ国に戻ったら、フルオリーネ女王陛下から、

「今回の寄生虫ってどんなヤツだったの?」

 と聞かれた。

 興味ありそうだね。


 なので、ボクはアイテムボックスからガラスビンに入ったフィラリアを出して見せてあげた。

 これは、ミラさんの体内から取り出したヤツね。


 これには女王陛下も、

「気色悪い」

 ソッコーで見るのを拒絶したけどね。


 この日は、アクティスがいなかったため、ボクは、女王陛下への報告を終えると、そのままルイージさんに家まで送り届けてもらったよ。

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