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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗vs 暗殺組織『血まみれの指』
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義眼VS邪眼

 一方その頃、屋上では――――――


「嘘・・・・・」


 姫香が、目を剥いていた。


 北見方は相変わらず、とても正確にヘルズの攻撃を捌き、カウンターを返している。おそらく、それが北見方の能力なのだろう。それは分かる。


――――問題は、ヘルズの方だ。


 ヘルズの動きは相変わらず、速い。ただし今度は、違う部分があった。


 攻撃が、的確なのだ。


 先ほどまでヘルズは、北見方の姿を見てから特攻していた。そのせいでカウンターをくらい、ダメージを負っていた。だが、今度はそうではない。まるで敵の動きを事前に読んでいるかのように、北見方の防御の隙間を縫って、カウンターを回避し、針の穴に糸を通すように、正確なダメージを与えていた。


「リベリオンコンプレックス」


「え?」


 下を食い入るように見つめながら呟いた降谷の言葉に、姫香は反応する。


「この世界に反逆せずにはいられない、一種の病気だよ。まあ、厨二病の最上位みたいな物かな。常識を打ち破る事を生きがいとして、この世界に反逆することで存在価値を証明する、まさに厨二病のために作られた単語。アイツは今、それに成っている」


「『成っている』?」


 それって病気だから、常時成っているものではないのだろうか。

 姫香の問いに、降谷は頷く。


「そう、『成っている』だ。奴は時々、リベリオンコンプレックスを覚醒させることがある」

「そ、それをするとどうなるんですか⁉」


 厨二病の最終形態と言っても差し支えない、『リベリオンコンプレックス』という病気。

 それが覚醒したからと言って、何がおこるのだろう。


「厨二力が格段に上がる」


 降谷の言葉に、姫香は脳がフリーズするかと思った。だが、今の降谷の表情は真剣そのものだ。その時、姫香は先日、訓練中に二ノ宮にされた問題を思い出した。


『ねえ姫香ちゃん、もし同じスペックを持った一般人と厨二病が武器を持って殺し合いをしたら、どっちが勝つと思う?』


 答えは―――――――厨二病。


 それも、偶然ではなく、確実に。10回行えば10回勝てるレベルで。


 理由は簡単。彼らは、常に想定(シミュレーション)しているのだ。敵とのありとあらゆる闘いを。いざという時に、動ける力を。


『厨二病っていうのは、日常生活において役に立っていないだけ。もし仮に学校にテロリストが襲い掛かってきたとして、動けるのは厨二病か殺し屋くらいなものね』


 敵、状況、武器、異能力・・・・・etc.


 厨二病患者(かれら)は、それら全てを、常に想定している。


『私達が日頃割いている思考を、彼らはそっちに使っている、ただそれだけ。でも、それだけで、実際に事が起こった時に動ける速度は、各段に違う』


 二ノ宮はそう言ったあと、ヘルズに聞こえないように、姫香に耳打ちした。


『これを言うとヘルズが調子に乗るからあまり大声では言わないけどね。厨二病っていうのはいい病気なの。そして―――――厨二病は、能力よ。《誰よりも早く動くことができる》っていう、使い方によっては最強の能力』


 もし、その能力を覚醒させることができる人間が居たら、どうなるか。

 それを今、姫香は目の当たりにしていた。








 北見方のカウンターを、ヘルズは躱す。そして北見方の懐に潜り込むと、その胸倉を右手で、腕を左手で掴んだ。そのまま身体を捻り、北見方を投げ飛ばす。俗に言う『背負い投げ』という技である。北見方の背中が地面に叩きつけられ、ビキリ、という音がヘルズに耳に伝わる。北見方の腹を踏みつけ、ヘルズは後方に跳び退る。直後、ヘルズの居た位置を北見方の足払いが薙ぐ。痛みをしかめた顔をしながら、北見方が立ち上がる。


「なるほど、打撃を全て読まれるならば投げ技にしよう、と。そういう事ですか」


「ああ、いいアイデアだろ?」


 相手の身体を掴んで投げる投げ技ならば、《計算(カウンティング)》で読んだとしても対処のしようがない。ヘルズはそこを狙って、次々に投げ技を繰り出していた。そのたびに、北見方の骨にヒビが入るような音がする。


「よし、じゃあ行くか」


 ヘルズは気楽そうに言うと、北見方に突撃した。邪眼が一瞬、怪しげに光り、北見方を見据える。北見方はそれを見て、歯を食いしばった。


「《計算(カウンティング)》!」


 ヘルズのフルスイングが奔る。北見方はそれをかろうじてブロック。瞬間、ヘルズが腰のホルスターからベレッタを引き抜き、北見方に連射。超至近距離で放たれた弾丸を、北見方は危なげながらも回避する。それを見て、ヘルズはニヤリと笑う。

「ハハハハハッ!」


 ベレッタを捨て、両手をフリーに。右腕に筋肉を凝縮させ、北見方に向かって放つ。


「最大出力! 《死角残樹(ダークネスアッパー)》!」


 拳が北見方の下顎を捉え、猛烈な勢いで吹き飛ばす。北見方の身体が宙に舞い、足が地面から離れる。すかさずヘルズはジャンプして、跳び蹴りを叩き込む。さらに上空に吹き飛ぶ北見方。空中を蹴ってさらに跳び、北見方の下顎にもう一発叩き込む。


「があっ!」


 北見方が血を吐きながら、上に飛んでいく。まるで重力を逆転させたかのような現象に、ヘルズは大笑いする。


「ハハハハハッ! こりゃいいな! フィナーレにぴったりだ!」


 そして、さらに空中を蹴って飛び上がる。そして、空中を吹っ飛んでいる北見方に追いついた。


 ――――ここまでやるとは。


 ヘルズのアッパーをもろにくらって吹き飛びながら、北見方は思う。ここまでの猛者は初めてだ。顎を激しく揺さぶられたのと過度のダメージ量で、思考ができない。《計算(カウンティング)》を使えば話は別だろうが、この状況で使っても何も変わらないだろう。


(僕は、ここで終わりなのか?)


 半場諦めかけたその時、何かが地面から飛んでくるのが見えた。その人物を見て、北見方の脳が覚醒した。


(そうだ、僕は奴を、怪盗ヘルズを、倒さなくては。死んでいった仲間のためにも、僕は戦わなくては!)


 全身に、生命力が漲ってくる。死を覚悟で《計算(カウンティング)》を使用しようと思ったその時、ヘルズが何かを呟いた。高性能の義眼が、唇の動きから、彼の言いたい事を読み取る。


「そろそろだな」


(何が――――――)


 その時、近くでドン! という音が鳴った。身を捻ってその方向を見てみると、そこには鮮やかに爆発する物体があった。続いて自分の真後ろで、同じ現象が起こる。驚愕してる北見方の耳に、ヘルズが一言。


「花火大会、そろそろだな」


「ッ!」

 確か今夜のイベントに、そんな物があったことは覚えている。だが、まさか―――


「そう。今から花火が次々と撃ち上がる。今俺達が居る高度は2000メートル。――ちょうど、撃ち上がった花火が、爆発する高さだよ」


「ッ!」


 ヘルズの言に、北見方の思考が凍り付く。いくら改造人間の彼であっても、2度も爆発をくらって生きているほど、頑丈なわけではない。次爆発をくらえば、間違いなく死ぬ。それこそ木っ端微塵だ。機会の身体ごと一緒に吹き飛ばされてしまうだろう。

(くそっ、こうなったら《計算(カウンティング)》を―――――)


 躊躇わずに《計算(カウンティング)》を行使する。無理な使用で脳が悲鳴を上げるが、死ぬよりはマシだ。花火の来る角度、距離、スピードなどを仮定し、脳が計算式を組み立てていく。


(よし、これならーーーーー)


 計算は完璧だ。現に、《計算カウンティング》を使用した後、北見方は火の粉すら浴びていない。


(まだ行ける!)


「甘いぜ、生徒会長様!」


 ヘルズが北見方の腰を蹴り上げる。北見方がさらに上空に吹き飛び、吐血。ヘルズはその姿を見ると、ニヤリと笑った。


「なあ、生徒会長様。ここで1つ問題だ」


 空中ジャンプという、常識ではあり得ない跳躍を繰り出し、ヘルズが北見方に問う。


「俺の必殺技の1つに《叛逆未遂はんぎゃくみすいいかずち》って技があるんだがな、どうして『叛逆』なんていう格好いいワードが付いてるのに、『未遂』なんだと思う? これじゃあ、反乱を起こそうとして失敗した雑魚みたいじゃねえか」


 確かに、その通りだ。この必殺技を聞いた時、北見方も同じことを思った。だが、それを聞くのも野暮かと思い、あえて聞かなかったのだ。


「答えは、その先があるから。あえて『未遂』と付けることで、その次の段階がある事を示唆させようとしているから」


 ヘルズが、北見方に迫る。北見方は義肢の力を使って逃げようとするが、やはり空中だからかあまり遠くに動けない。


「『叛逆』の意味を思いしれ、生徒会長様!」


 その動きを見て、北見方は悟る。


(まさか、花火は保険に過ぎず、本当の狙いは、この一撃なんじゃ・・・・)


 焦燥が込み上げる。慌てて《計算カウンティング》を使おうとするが、もう遅い。ヘルズが北見方の間合いに入り込んだ。





「《叛逆堕天はんぎゃくだてん叢雲むらくも》!」


次回は9月13日更新予定です。


 かなり日付が飛んでしまい、申し訳ございません。9月13日以降は前のペースに戻すので、ご了承下さい。

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