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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗vs 暗殺組織『血まみれの指』
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開戦 ヘルズVS『視覚』

 さあ、いよいよ決戦の始まりーーーーの前に、『奴ら』の登場です!

 ヘルズと北見方が互いに正体を明かし、戦いを始めたその頃―――


 とある人物も、動いていた。


「待て、ヘルズ!」


 松林尚人、26歳独身。

 趣味はクロスワード(一問も解けない)、好物はカツ丼(あまりにも好きすぎて時々容疑者のカツ丼も食べてしまう)、現在の夢は『ヘルズをこの手で捕まえる事』(まあ無理だと思うが)である、破天荒な刑事だ。つい3日前にようやく刑事である事が判明し、留置場から出てきたところだ。そしてヘルズを逮捕しようと72時間この会場に張り込んで(その間一睡もしていない)、ようやくヘルズを見つけたというわけだ。


「ヘルズ! 今日という今日は、絶対に――――」

「おっと。そうはいかねえぜ」


 しかしそんな松林の行く手を、大柄な男が阻んだ。その後ろから、数人の人間が姿を現した。


「久しいな、松林さんよ。一カ月ぶりか?」

「お前は――――アシュル・ウィナーか!」


 そう、それはつい先日、降谷と共にヘルズ逮捕のためにイギリスまで出向き、開始10分で王宮の落とし穴に落ちてお役御免になったモブキャラだった。


「な、何故お前がここに・・・・作者の話では、確かお役御免になったはずだが・・・・」


 松林が驚いた声で聞くと、アシュルは鼻を鳴らした。


「フン。あの程度の落とし穴、4時間あれば抜け出せたぜ。それと1つ訂正がある、『お前』じゃなくて、『お前達』だぜ。おいお前ら、出て来い」


 アシュルが後ろに居た人達に命じる。すると、アシュルの後ろに居た人達がぞろぞろと出てきた。松林は彼らを見て、絶句した。


「お前らは――――」


頭脳明晰(ジーニアス)』デリシギ・シュウサイ。


迷彩変装(パンダ)』ザック・ウェストコット。


殲滅者(ナイフ)』ザキラ・アクス。


科学者(マッドサイ)』キール・フーマ。


竜騎士(ドラゴン)』ファイム・ドリマ。


一般人(パンピー)』フツウ・ジン。


囮以外無能(センリョクガイ)』ニゲク・グミヨ。


戦国武将(センゴク)(ほう)隆寺(りゅうじ)(じん)


『(笑)(かっこわらい)』エクマ・ポーノ。


完掘王(トレジャーキング)』タクオ・ムル。


 ・・・全員、先日の落とし穴で落ちた、ICPOの刑事達である。


「皆、テメエに恨みがあるんだとよ。よくも仲間を見捨ててくれたな、とな」


 アシュルの眼に、敵意が宿る。松林は慌てて手を振って否定した。


「あ、あれはヘルズを逮捕するためだ! 決してお前らを見捨てようと思ったわけじゃない!」

「問答無用! 行くぞ!」


 アシュルの合図で、彼を含む11人が松林に襲い掛かる。それを見て、松林は覚悟を決める。


「くらえ! うおおおおおお!」


「くそっ! 警察の鉄槌(ポリス・クラッシャー)!」


 ―――長い闘いになりそうだ。


 その場にいた誰もが、そう思った。














―――いくら尋常ではない運動神経を持っていたとして、高所から降りればただでは済まない。


 ヘルズはひさびさに、それを実感していた。


 現在進行形で自由落下中に考えるにしては呑気すぎるが、他に考えることがないのだから仕方がない。この建物、いくら掛けているのか知らないが、3階建てなのにも関わらず高さが60メートル以上もあるのだ。金の掛けすぎにもほどがあるだろ、素数でも数えようかな、とヘルズが思った時、ようやく地面が見えてきた。流石のヘルズも人間である以上、このまま落下すれば死ぬだろう。


 そう、人間ならば。


「さて、と。仕方ねえな」


 冷たく言うと、ヘルズは落下地点をしっかりと見据えた。そして、自身の能力を解放する。


「――――邪眼、解放」


 瞬間、瞳の奥が熱くなった。瞳の色が黒から血色へと変わり、体温がみるみる上昇していく。


「よし」


 呟いた直後、両足から地面に落下。膝を曲げるのと人外の筋力を持って衝撃を完全相殺すると、ヘルズは立ち上がった。ポケットから眼帯を取り出し、人外の眼を覆うのも忘れない。


「奴はどうなったんだ?」


 ヘルズですら奥の手を使わなければならないほどだ。いくら彼が改造人間だとしても、無傷ではすむまい。


「僕なら大丈夫ですよ。ちょっとした技を使いましたから」


 声のした方を向くと、そこにはパラシュートを丁寧に外している北見方がいた。こんな事もあろうかと事前に用意していたようだ。用意のいい奴だ、とヘルズは呟く。


「では始めましょうか。―――と、その前に1つ。どうして君はそんなに不機嫌そうなんですか?」


「・・・・別に」


 ヘルズは不機嫌そうに言う。姫香と北見方がキスしているのを見て、何故か不機嫌になったのだ。何故だかは分からない。だが、それを見て気分が悪くなったのは確かだ。あともう1つ、理由があるのだが、それは戦いながらぶつけるとしよう。


「まあいいでしょう。始めますか。あ、分かっているとは思いますが遠慮は要りませんよ。今の僕は生徒会長、北見方修吾ではなく『血まみれの指』のボス、『視覚』なのですから」


「分かってるよ。それに、手を抜く気なんて鼻からねえよ」


 刹那、ヘルズが動いた。彼我の距離を一瞬で詰め、北見方に襲い掛かる。


「《絶滅迅雷(ジェネラルストリーム)》!」


 ヘルズの回し蹴りを、北見方は右腕でガードする。ヘルズは回し蹴りを放った姿勢からさらに体を捻ると、追撃を打ち込んだ。


「《獣王(キングダム)無塵(フラッド)》!」


 両の足によって打ち出された踵落としが、北見方を狙う。北見方はそれを平然と回避すると、拳を振りかぶった。ヘルズは必殺技の体勢からバク宙を繰り出し、北見方の拳の間合いから離れる。


「なかなかやるな」


「そちらこそ」


 互いに声を掛け合い、再び激突。ヘルズの右腕と北見方の右足が衝突し、派手な音を鳴らす。ヘルズが後ろに跳び、北見方と距離を取る。それを見て、北見方は笑った。


「いいんですか? 距離を取れば貴方が不利になりますけど」

「はっ、それはどうかな――――」


 ヘルズは両足を踏みしめると、力強く地面を蹴った。残像すら置き去りにする速度で敵に超突進すると、ヘルズは叫んだ。


「《反逆未遂(はんぎゃくみすい)(いかずち)》!」


 超高速の拳が北見方の右胸を打ち据える。トラック一台を余裕で吹き飛ばせるエネルギーを持った攻撃をもろにくらい、北見方がうめく。


「うッ」


「そこだ! 《死角残樹(ダークネスアッパー)》!」


 北見方がうめいた瞬間を逃さず、ヘルズが懐に潜り込む。右腕を突き出し、北見方の顎に強烈な掌打をくらわせる。北見方の体が吹き飛び、地面を数回バウンドしてからようやく止まる。


「その程度かよ。大した事ねえな」


 地面に倒れてピクリとも動かない北見方を見て、ヘルズは退屈そうに言う。邪眼の力はとっくに切れている。つまり、純粋な人間としてのヘルズに負けたということだ。


「ったく、いろいろ言いたいことがあったのに、もう終わりかよ。これじゃあ、テメエに沸いた怒りはどこにぶつければいいんだよ」

「――――直接、僕にぶつければいいんじゃないですか?」


 見ると、北見方がよろよろと立ち上がっていた。その体は擦り傷だらけ、バーテン服はあちこちが擦り切れていて、見るに堪えない。だが本人は意に介せず、バーテン服のホコリを叩くと、背筋を伸ばした。


「お見事、さすが天下のヘルズです。ですが僕も仲間を殺されている手前、ここで倒れるわけにはいかないんですよ」


「そうかよ。じゃあもっと頑張れよ。俺はお前にぶつけたい不満があるんだ」


 ヘルズが吐き捨てるように言うと、北見方は爽やかに微笑んだ。


「分かりました、聞きましょう。ですがそれは、バトルが最も盛り上がっている時。その際、お互いの不満をぶつけ、全身全霊闘いましょう。それが、死んだ仲間たちに対する弔いです。違いますか?」


 北見方の確認に、ヘルズは豪快に笑う。


「ハッ、三次元の癖にいいこと言うじゃねえか―――――」


 そして地面を蹴ると、再び超高速で北見方に突進する。


「だが大丈夫なんだろうな? そう言ったからには、俺を楽しませるだけの奥の手でも隠し持ってるんだろ?」


「ええ、まあ。奥の手と言えば奥の手ですね」

「じゃあ使ってみろよ、生徒会長!」


 ヘルズは拳を引くと、北見方に突っ込む。


「《反逆(はんぎゃく)未遂(みすい)(いかずち)!》」


 必殺技名を叫び、北見方の顔面目がけて拳を打ち放つ。北見方はそれを見て――――


「《・・・(ティング)》」


 ただ一言、呟いた。


次回は8月30日更新予定です。



『お役御免』と言ったキャラを出してしまい、すみません。



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