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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗vs 暗殺組織『血まみれの指』
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ついに全面戦争⑧

 更新遅れて申し訳ありません!

 貴婦人が叫ぶ。姫香はその挑発を無視すると、ほふく前進で前に進んでいく。これなら盾にしているテーブルが原型をとどめている限り助かる見込みがある。


「ほら、出てこないならこっちから行くぞ!」


 貴婦人が叫ぶと同時、再びの銃撃音。弾丸が姫香の背後から聞こえ、背筋が寒くなる。だがここで止まっていたら殺される。姫香は焦る気持ちを抑えながら一歩一歩慎重に進んでいく。


 あと数歩となった所で、銃弾が背中をかすめる。昔両親にカッターで切り裂かれたときのような痛みが走り、思わずうめき声をあげそうになる。だが歯を食いしばり、次の一歩を踏み出す。


 と、その時、「お客様すみません」という声を耳にする。どうやらようやく黒服が出陣することにしたようだ。姫香はそれを察知すると、より一層ほふく前進の速度を速めた。この後の状況は想像に難くない。


「会場内での揉め事は他のお客様のご迷惑に――――」


 その声が途切れた。どうやら瞬殺されたようだ。姫香の胸が痛むが、今はそんな事を気にしていられない。黒服が稼いでくれた数秒を使い、姫香は何とか出口までたどり着く。姫香が会場の外に出ると同時、銃撃の嵐が巻き起こった。テーブルや椅子が粉砕し、床が穴だらけになる。おそらく何人かは死んでいるだろう。姫香は唇を噛んだ。だが自分が死んだら元も子もない。姫香は全速力で逃げ出した。








「次は鬼ごっこかよ! いいぜ、付き合ってやるよ!」


 両手にショットガンを構えた貴婦人――――『嗅覚』は、狂ったように高笑いした。その体は、返り血を浴びていて真っ赤だ。床には大量に死体が転がっている。全て、銃弾の餌食になった哀れな人間たちだ。


「許さない・・・よくも『味覚』を! 『触覚』を!」


 怒りのままに叫ぶ。『嗅覚』はこう見えても組織でも1,2位の仲間思いなので、仲間を殺されたら悲しむし、怒るのだ。


「しっかし、やりすぎたかねえ・・・」


 床に転がった大量の死体を見ながら、『嗅覚』は呟く。すでに他の客は避難しており、この会場には『嗅覚』しかいない。ショットガンに付いた血を舐めながら、『嗅覚』は感慨深く嘯く。


「アタシも、結構やれるんだな・・・」


『嗅覚』も『聴覚』と同様、いつも後方支援の役回りなため、暗殺の腕が鈍っているかと思ったが、そうでもないようだ。むしろ殺意が沸いている分、いつも以上に戦える。


「よし、攻め込む前にまず―――」


 突然、何を思ったのか『嗅覚』は自分の血まみれのドレスを脱ぐと、ビリビリと破った。その下から現れたのは黒のサラシだ。『嗅覚』は露出した腕を2,3回回すと、満足そうに頷いた。


「うん。やっぱり動きやすい服の方がいい」


 そしてショットガンを構えなおすと、床を蹴って走り出した。







「はあ、はあ・・・」


 荒い息を吐きながら、姫香は走っていた。


 今自分がどこを走っているのか分からない。ただ、今止まれば背中を撃たれるかのような怖さがあり、止まることができない。


「まさか敵に遭遇するとは・・・・・」


 だが想定していた事態ではあった。パーティーは全部で7日間。そして7日目は昼までで終わってしまうため、タイムリミットは1日半。攻めてくるタイミングとしては悪くない。


 そう、タイミングは悪くない。狙い相手が、姫香である事を除けば。


「どうして、私なんでしょうか・・・」


 まさか復讐の1人目が『味覚』殺しのユルとチャルカでも『触覚』殺しの降谷でも黒幕のヘルズでもなく、ただの一般人に近い姫香だとは。姫香は自分の運の悪さにため息を吐いた。


 その時、背後から人の気配を感じた。まさかと思って振り返ると、そこには先ほどの貴婦人―――もとい、復讐の女が立っていた。


「見つけたよ。次こそ死ね!」


 女が両手のショットガンを構えると同時、姫香は走りだした。勢いをつけた状態からのスライディングを披露した直後、頭上の空間を弾丸が抉る。震える体を叱咤して立ち上がると、隣の壁に逃げ込む。そして、死にもの狂いで走る。


「鬼ごっこは終わらないってか⁉ いいぜ、もう少しだけ付き合ってやるよ!」


 女の声を受けながら、姫香は走る。ヘルズの訓練を受けていたおかげか、こんなに走ってもまだ体力の限界が見えない。しかし、それも一時的なものだ。いずれ体力がなくなり、姫香はばててしまう。そうすればその時こそ、チェックメイトだ。


 その時、姫香はある事を思いついた。


「そうだ、隠れれば・・・」


 もう姫香は昔の姫香ではない。今の姫香には力がある。正面戦闘であの女に渡り合う事は無理でも、不意打ちなら勝てるかもしれない。それにヘルズも言っていた。


『不意打ちを「卑怯」だとか「姑息」だとか言うやつがいるが、それはただの負け惜しみだ。油断してた奴が悪い。勝負の世界では一瞬の油断ですら命取りになる。それを相手が「知らなかった」だけの事。要するにただの知識不足だ。だから、隙があればどんどん不意打ちを使っていけ』


 ――――そう、ここは殺し合いの世界。どんな手段を使っても、殺せば勝ちだ。


 姫香は気を引き締めると、隠れる場所を探し始めた。







隠れ場所は案外簡単に見つかった。階段近くの掃除用具入れ。ここなら、見つかる心配はないだろう。しかも運の良いことに、ここは中から鍵の開閉ができる。好都合な事この上ない。


「ここに隠れて、あとは・・・」


 狭い掃除用具入れの中に隠れ、鍵を閉める。真っ暗になった部屋の中で、姫香はナイフを握りしめた。


「殺すだけ・・・」


 殺す、という単語に一瞬体が反応したが、思ったより何も感じない。姫香が首を傾げていると、カツ、カツという音が聞こえてきた。


「チッ、どこ行ったんだ、あのアマ」


 間違いない、あの女だ。姫香はナイフをグッと握りしめた。


「てか、そろそろ『アレ』が効いてくるはずなのに・・・おかしいな」


 その意味深な発言に、姫香は首を傾げた。


(『アレ』・・・?)


 だが、とにかく今は敵の事に集中だ。『アレ』とやらも、敵を殺せばわかるだろう。


「ホント、どこ行ったんだあのアマ・・・」


 姫香は目を閉じる。敵の気配、感知。

 ―――あと2歩。そこがベストスポット。


 姫香は心の中で呟くと、ナイフを服の袖から出した。そして息を殺し、様子を伺う。

 ―――あと1歩。それで私の勝利。


 敵が踏み出し、姫香は拳を握る。たった数秒が、とても長く感じられる。姫香ははやる気持ちを抑えながら、気配察知に神経を集中させた。


「気づかないとでも思ったのかい?」


 ―――だから、敵が自分の隠れている掃除用具入れに向かって攻撃したとき、すぐには対応できなかった。


「きゃ!」


 吹き飛ばされた扉と共に後方に倒れる。その上をまたも銃弾が通過する。間一髪、助かった。


「アンタがそこに居ることはとっくに知ってたんだよ! 作戦失敗、残念だったな!」


「くっ・・・!」


 姫香は唇を噛むと、持っていたナイフを投げつけた。女が怯んだ一瞬の隙を突いて、跳び蹴りを見舞う。


「はああああああッ!」


「甘いんだよ」


 姫香の跳び蹴りを女は片手で受け止め、上半身を捻って階段の踊り場まで投げ飛ばす。受け身を取れずに踊り場に叩きつけられ、背中に痛みが走る。


「くうっ!」


 見ると、女はショットガンの弾を交換していた。どうやら自分も攻撃手段を失ったために姫香と距離を取ったようだ。


(今がチャンス、いや、ここは一旦撤退するしかない・・・)


 好機に見えるが、今はまずい。姫香は手すりを掴むと、全力で階段を駆け上った。一歩でも遠く、敵から離れなければ。



次回は8月21日更新予定です。


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