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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗vs 暗殺組織『血まみれの指』
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ついに全面戦争②

更新遅れて申し訳ございません!

 ユルとチャルカが身構えると同時、『味覚』が動いた。口をガバッと開き、複数の《酸味》を発射する。その中のいくつかが衣装に当たり、服を溶かしていく。


「ふッ――――!」


 ユルはバックステップで跳び退く。足元を《酸味》が抉り、ユルの靴先が僅かに溶ける。


「君達に分かるかい? 僕がこの戦いをどれほど待ち望んでいたか。一度殺し損ねた敵を蹂躙する時って、とてもいい感覚なんだよ!」


『味覚』が嗜虐的な笑みを浮かべながら《酸味》を撃ち続ける。ユルとチャルカはひたすら回避に徹するが、しかし場所が場所だ。猫の額ほどしかない衣装室では、避けるのにも限界がある。


「くっ、これでは―――」


 敵が《酸味》を撃ち続けている限り、こちらから攻撃は出来ない。それではあまりにも不利だ。


「それなら!」


 ユルは三角飛びで壁に張り付くと、思いっきり蹴り飛ばした。強烈な破砕音がして、壁が音を立てて崩れる。その直後、ユルの真横を《酸味》が擦過した。メイド服の袖が溶け、ユルが悔しそうな表情を見せ

た。


「これは・・・まずいですね」


 その時、チャルカが前に躍り出た。チャルカは右の拳を大きく振りかぶると―――


 床に盛大に叩きつけた。


「なッ―――」


 チャルカの叩きつけた位置を中心に亀裂が展開し、床がめくれ上がる。めくれ上がった床に『味覚』が怯んだ一瞬の隙に、ユルとチャルカは衣装室を脱出した。


 幸か不幸か、衣装室の隣は廊下だった。しかも一度『味覚』と戦った場所だ。


「なんだ、強いじゃないか」


『味覚』の飄々とした声が聞こえ、ユル達を遮っていた壁が溶ける。そこには相変わらず赤いランドセルを背負った『味覚』の姿があった。


「改造人間なのに全然らしくなかったから、てっきり失敗作なのかと思ってたよ。でもその考えは間違ってたみたいだね。君はやっぱり改造人間だよ。まあ、僕よりも遥かに弱い性能の、駄作だけどね」


 あえてチャルカを挑発するように言う。おそらく―――というか間違いなく誘っているのだろう。チャルカはムッとしたようだが、流石に二の轍は踏まない。じっとこらえている。


 代わりに、ユルが進み出た。


「挑発はそこまでです。行きますよ」


 言うが早いか、『味覚』に肉薄する。接近ざま懐からダガーを取り出し、『味覚』目がけて投擲する。


「おっと」


『味覚』がそれを首の動きだけで回避した瞬間、本命の跳び膝蹴りが炸裂した。


「《顎砕きの膝蹴り(アイアン・ブレイク)》。これならどうですか」


 ユルの跳び膝蹴りは的確に『味覚』の顎に命中し、『味覚』の身体を大きく吹き飛ばした。常人なら顎の骨が折れて一撃退場だが、おそらくそれはないだろう。蹴った時の感覚が妙に硬かった。顎も改造しているのだろう。


「面倒ですね・・・」


 ユルは小さく呟くと、床を蹴った。そして現在進行形で吹き飛んでいる『味覚』の髪の毛を掴むと、天井に放り投げた。『味覚』の背中が天井に激突し、派手な激突音を鳴らす。ユルはそれを感情の籠らない瞳で見ると、指を曲げて間接を鳴らした。そして『味覚』が落ちてきた瞬間を狙い、特大のつま先蹴りを喰らわせた。


「肝落とし(ニーズ・タラップ)!」


 ユルのつま先蹴りは『味覚』の顔面にクリーンヒットし、『味覚』は鼻血を噴出しながら5メートル離れた位置に吹っ飛ばされる。これだけ吹っ飛ばされれば改造人間と言えども全身の骨がバラバラになってもおかしくないのだが、流石は自らを『成功作』と自負するだけの事はある。見事な身体性能だ。


「これで終わりにします」


 ユルはメイド服の袖から拳銃を取り出した。それを『味覚』に向けようとして――――


「ッ!」


 大きく跳び退いた。瞬間、ユルの居た場所を弾丸が抉る。


「これは・・・狙撃!」


 眼球運動で辺りを見回す。だがここは室内な上に、近くに割れた窓はない。では、一体何処から撃って

いるというのだ。


「―――狙撃ばかり心配している場合かい?」


 背後で殺気が膨らみ、ユルはとっさに前転する。だが背中に鉛玉をもらいうめく。


「うぐっ!」


 背中が熱い。弾は肩甲骨の下あたりに当たったらしい。もう少し弾が大きければ死んでいた所だ。不幸中の幸い、という物だ。


「僕はそんなに簡単にやられる男じゃないんだよ」


『味覚』は顔にべったりと付いた鼻血を拭くと、《酸味》を放った。ユルはまた回転して避けるが、無理な態勢からの回転が祟った。グキリ、という音がして脚が変な方向に曲がった。脚を挫いたのだ、それでも無理に立ち上がろうとすると、バランスを支えきれずに倒れてしまう。


「くっ―――」


「終わりだ! 死ね!」


『味覚』が口を開き、《酸味》を撃ち出す。撃ち出された《酸味》はさながら砲弾のようにユルに飛んでくる。


―――ここで終わりか。


 ユルは諦めて、目を固く閉じた。しかし、いつまで経っても身体が溶けるような感覚が訪れない。


「ユル、大丈夫。ユルが回復するまでの時間、私が稼ぐから」


 聞きなれた声が聞こえ目を開けると、そこには槍を構えたチャルカが立っていた。どうやら、その槍で《酸味》を弾いたようだ。


「それは――――」


「主席からもらった武器。硬くて重いけど、多分大丈夫。私、強いから」


 何が嬉しいのか、チャルカは自信満々に言うと、『味覚』に突進した。『味覚』はそれを見ると、やれやれと首をすくめた。


「失敗作が成功作に正面から挑んで勝てるわけないじゃん。うちのボスほどとは言わないけど、賢くなろうよ、ね?」


 確かにその通りだ。ユルもそう思う。


 これを言うとチャルカが傷つくから言わないのだが、正直チャルカの改造人間としての性能は弱い。

『攻撃の命中率と破壊力を上げる』という能力は、改造人間の中でも最弱レベルだ。対して敵は一つ一つが殺人的な威力を誇る技を5つ持っている。どう考えても勝ち目がない。


 勝ち目があるとすれば『味覚』がユルの攻撃で体力を大幅に削られているという点だが、それもあまりあてには出来ない。第三期暗殺者次席の攻撃が2発クリーンヒットして生きているなど、並みの体力ではない。ひょっとすると、鼻血を拭いているだけでノーダメージかもしれない。


「さあ、劣等作品君。せいぜい僕を楽しませてよ!」


『味覚』は嘲るように言うと、口を開いた。―――《甘味》の構えだ。


「大丈夫、私は馬鹿じゃない。勝率? とか知らないけど、貴方に勝てる見込みはある」


 そこまで言うとチャルカは槍を振る。刺突の構えに持ち込むと、槍を『味覚』目がけて突き出した。


「えいやっ」


「《甘味》発動。槍ごと食ってやる!」


 突き出された槍に、『味覚』はあろう事か噛みついた。宣言通り、槍ごと食べるつもりなのだろう。


 その様子を見て、ユルは絶句した。


「やっぱり、貴方は―――」


 チャルカの右手が食べられた時点で、薄々感づいてはいた。だがまさか、それが本当の事だったとは。


「舌以外、いえ、顔の下半分を、全て改造したんですか⁉」


 考えてみれば、当たり前の事だ。


 舌一つ改造されていた所で、《酸味》は放てない。舌で《酸味》を生成し、それを発射するための『砲台』が必要になる。その役割を担っているのが、口だ。


(『触覚』の事も照らし合わせると、やはりこの人達は―――)


「ぐぁぁぁぁ!」


 不意に絶叫が響き、ユルの思考が一時中断させられる。


 見ると、『味覚』が口を抑えて悶えている。無様に地面を転がり、攻撃し放題の態勢だ。


「歯が、歯が痛いィ! 何だその槍、硬すぎる! 硬すぎるだろう! 何なんだよぉ⁉」


 チャルカの槍を見ると、確かに傷一つ付いていない。金属で出来た『味覚』の歯を破るとは、一体どれほどの硬さなのだろう。


「殺す! 絶対に殺す! ぶっ殺す!」


『味覚』が起き上がり、殺意の籠った目でチャルカを見据える。チャルカはそれを相変わらずの無表情で見ると、頷いた。


「うん、いいよ。かかって来て」


 チャルカは槍を大きく振ると、戦闘の構えを取った。


 槍使いの劣等機械兵と、残虐の機械兵の戦いが、火蓋を切って落とされた。


次回は8月5日更新予定です。

・現在分かっている詳細

・仁ノ見留薬味・・・二ノ宮来瞳

・ピエロ・・・・松林尚人(現在はトレンチコート)

・バイトらしき青年・・・ヘルズ

・赤いランドセルを背負った小学生・・・『味覚』

・バーテンダー・・・『触覚』


 いつもこの作品を読んでいただき、ありがとうございます。

 この作品の誤字・脱字や感想がありましたら感想欄にどんどんお願いします。

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