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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗vs 暗殺組織『血まみれの指』
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二ノ宮の思い

 更新遅れて申し訳ございません!

現在分かっている詳細

・ニノ見留薬味・・・二ノ宮来瞳

・ピエロ・・・・・・松林尚人

・バイトらしき青年・・・ヘルズ

・メイド・・・ユル

・シルクハットの男・・・チャルカ

・赤いランドセルを背負った小学生・・・『味覚』

「はあ、はあ・・・」


 二ノ宮は傷ついた右腕を左手で支えながら、通路を歩いていた。


「まだ、一つ目なのに、こんなダメージ・・・・」

 

 あの時、かろうじて爆発から身を守る事はできたものの、上から振って来た瓦礫をくらい、重症を負ったのだ。正直、立っているのも辛い。服はボロボロで、付けていたカツラもどこかへ行ってしまった。


「右手と右足、それに左の肩甲骨ね・・・死んでないのが幸いだわ」


 その時、身体がふらっと揺れる。瓦礫をくらった事で体力の限界が来たのだろう、そのまま地面に倒れる。右肘に痛みが走り、地面を転がる。


「痛た・・・」


 自分を地面に倒した重力という存在を呪いながら、二ノ宮は顔を上げる。すると、緑色の瓶が目に入った。


「何、これ?」


 自由になる左手で手に取ってみると、それは普通の瓶だった。なんの変哲もない。蓋はなく、中に液体が半分ほど入っている。

「これって、もしかして・・・」


 こんな場所に、ただの瓶が置いてあるはずが無い。


 ―――『血まみれの指』の武器の一つかもしれない。


 そう思った二ノ宮は、瓶を持ち帰ることにした。

 この瓶を調べて本当に『血まみれの指』の武器なら、その原理を解析して新たなおもちゃを作れると思ったのだ。


「新しい、武器を・・・皆が無事に盗みを成功させられるような、おもちゃを・・・」


 うわ言のように呟き、瓶を自分の元に引き寄せる。瓶を胸元まで引き寄せ、二ノ宮はニコリと笑う。


「よし、これで・・・」


 その時、頭上から何かが外れる音がした。反射的に上を見上げると、二ノ宮に向かって天井の一部が落下していた。

「冗談でしょ・・・」


 起き上がろうにも、もう身体に力が入らない。おもちゃを使おうにも、指先の感覚が無くなりかけている。二ノ宮は自分の運命を悟った。


「ここで、終わりか・・・」


 ―――自分の人生は、ここで終わるのか。


「でもまあ、しょうがないか。私、犯罪者の手助けしてたんだし、いつかこんな日が来るとは、思ってたけど――――」


 ――一年前、世界に絶望した二ノ宮を救ってくれたのは、ヘルズだ。


『この世界に刺激的な物なんてないっていうのなら、俺が与えてやる。俺が三次元の刺激って奴を与えてやる』


 その言葉を信じた二ノ宮は、ヘルズの仲間になった。


―――いや、その時から既に、ヘルズに惚れていたのかもしれない。


 常に自分を信じて疑わず、己の道を突き進むヘルズに。ふざけた格好をしながらも、自分の仁義を語れるヘルズを。


「あの日から私、たくさん笑えた・・・。生きてて良かったって思える時が、何回かあった・・・。色の無かった私の人生に色を付けてくれたのはヘルズ、君なんだよ」


 まるで時が緩やかに流れているかのように、瓦礫がゆっくりと落下してくる。それが死を悟った脳が見せる現象だという事を、二ノ宮は知っていた。


「だから・・・もういいよね」


 その瞳から、涙が流れ落ちる。


「あの日からずっと、クールに振る舞おうと頑張った・・・けど、もういいよね。クーデレだって、最後の時くらいはデレたっていいよね・・・・」


 瓦礫が近づいて来る。


「もう無理かもしれないけど、絶対に無理だけど――――」


 瓦礫が迫って来る。あと一秒もあれば、二ノ宮は死ぬ。それを理解したうえで、二ノ宮は呟いた。


「助けて、ヘルズ」







 瞬間、瓦礫が正面から左に移動した。


「え・・・・?」


 比喩は無い。瓦礫は二ノ宮の眼前から左に高速で飛んでいき、壁に当たって盛大に砕け散った。それと共に、何者かの怒声も聞こえる。


「―――俺の仲間に、落ちてんじゃねえよ」


「その声は――――」


 受け入れがたい状況。脳が拒絶しようと試みる。だが事実だ、真実だ。


 二ノ宮は震える唇を開き、その名を口にした。


「ヘルズ!」


「正確には〝ヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニング〟だけどな」


 ヘルズがおどけた口調で言い、二ノ宮の傍に歩いて来る。その格好は、いつものヘルズの格好だ。一つ違う所があるとすれば、右手に黒いガントレットが装着されている事だろう。


「それは・・・」


「ああ、お前が作った最高傑作の内の一つだ。これのおかげでお前を助けるのが間に合った。サンキューな」


 ヘルズが照れくさそうに頬を掻く。その時、また天井が崩れるのが見えた。どうやら先程の爆発で、天井が脆くなっているらしい。運悪く瓦礫は、ヘルズの真上から落ちてくる。


 二ノ宮は思わず叫んだ。


「ヘルズ、上!」


「分かってる」


 ヘルズは簡潔に返答すると、右腕を振るった。瞬間、瓦礫が粉々になった。拳大くらいの破片がヘルズに降り注ぐも、ヘルズがまた右腕を振った途端、哀れな粉塵と化した。


「安心しな、『助けて』って頼まれた以上、お前は絶対に俺が守るからよ!」


「き、聞いてたの⁉」


 二ノ宮の頬が赤くなる。軽く死にたい。まさか、あんな言葉を聞かれていたなんて。


「よし、こんな辛気くせえ所、さっさと脱出するぞ。ここは俺にとってもお前にとっても、居心地のいい場所じゃねえ」


 そう言うと、二ノ宮の身体を抱きかかえた。


「ちょっ、ちょっとヘルズ⁉」


 動揺しているせいか、何をされても驚いてしまう。

 二ノ宮の反応を見たヘルズは、ニヤリと笑った。

 

「安心しろ、俺はお前の味方だから」


 二ノ宮の耳元で囁くように言うと、地面を蹴った。ヘルズの体が上に飛び、宙に浮いたまま静止する。


「くくっ。この重力を操作する感覚、たまらねえな」


 ヘルズは小気味良く笑うと、二ノ宮を横抱きにしたまま、宙を滑るように移動した。


「このまま病院に向かう。そこで一旦休め。安心しろ、後は全部、俺達がやっておくから。お前はしっかり休んで、次の仕事で活躍してくれ。分かったな?」


「え、えっと、その」


 上手く舌が回らない。ヘルズはそんな二ノ宮の様子を見ると、フッと表情を綻ばせた。


「俺は暗黒竜の覇者と呼ばれた男だぞ? この右腕に宿りし力を解放すれば、『血まみれの指』なんて秒殺だ、秒殺。だからゆっくり眠れ」


「う、うん。だからその、」


 会話を諦めた二ノ宮は、手に持った瓶をヘルズに見せた。


「こ、これ、奴等の武器かも知れないから、その、」

 

 二ノ宮の片言の日本語に、ヘルズは頷く。


「分かった。じゃあそれは退院後に解析してくれ。武器とお前の命なら、お前の命の方が大事だ」


 そのヘルズの口に、二ノ宮はカードを挟ませる。


「これも、持っていって。私の最強の、道具」


「お、助かったぜ。これさえあれば、取り敢えずなんとかなる」


 ヘルズは嬉しそうな表情を浮かべると、出口を目指した。 



次回は7月17日更新予定です。

現在分かっている詳細

・ニノ見留薬味・・・二ノ宮来瞳

・ピエロ・・・・・・松林尚人

・バイトらしき青年・・・ヘルズ

・メイド・・・ユル

・シルクハットの男・・・チャルカ

・赤いランドセルを背負った小学生・・・『味覚』

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