表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗vs 暗殺組織『血まみれの指』
62/302

ただいま潜入中①

 現在分かっている詳細

・ニノ見留薬味・・・・二ノ宮来瞳

・ピエロ・・・・・・・松林尚人

 姫香の言葉に、二ノ宮は眉をひそめた。


「それ、本当?」


 ヘルズは変装の達人だ。そんなヘルズがこんなに早くから招待がバレるなどとあり得ない、と二ノ宮が思うのも無理もない。


 だが、姫香には彼の招待がヘルズだという確固たる証拠があった。


 それはーーーーーシチュエーションだ。


 厨二病であるヘルズは、結果よりも過程を重んじる人間だ。現に彼はこの前不良と戦った際、『へべれけ大絶叫バンチ』というよく分からない必殺技でトドメを指していた。


 その事からも分かる通り、彼は姫香達と会うときにもこの『過程』を大事にするのではないだろうか。


 そう、姫香とヘルズが初めて会った状況を再現する事で。


「まあ、いいわ。姫香ちゃんがそこまで言うのなら、信じてあげる。で、ヘルズはどこにいるの?」


「こっちです」


 二ノ宮の手を引き、先ほどの場所に戻る。バーテン服の青年は、まだそこに立っていた。


「あ、君はさっきのーーーーー」


「こんにちは、ヘルズさん」


 相手に話す隙を与えず、姫香は青年に向かって言う。


「この人が、ヘルズ?」


 二ノ宮が困惑の表情を見せる。青年は黙ったままだ。


「変装、見破りましたよ」


 姫香が畳み掛けると、青年はニヤリと笑った。唇が最小限動き、言葉が紡がれる。


「よく気がついたな、姫香、二ノ宮」


 その一言に、姫香は警戒を解いた。ーーーーー正直、自分でも自信が無かったのだ。


「という事はーーーーー」


「ああ、そうだ。俺がお前らの仲間、ヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニングだよ」


 その、本物にしか分からないような長い名前を読み上げられ、姫香はホッと息を吐いた。その時、身体が後ろに引っ張られる。


「会いたかったわ、ヘルズ!」


 後ろに引かれた姫香の代わりに二ノ宮が前に出て、ヘルズの手を握る。ヘルズは数秒驚いた顔をしていたが、やがて爽やかな笑顔を見せた。


「ああ、俺も会いたかったよ」


その時、一人の老人が歩み出た。


「うぃーっす。店員さん、お代わり頼むわ。ひっく」

 

「はい。今お持ちしますね」


 客からの注文にもヘルズは嫌な顔一つしない。もはや別人だ。


「それじゃあ、俺は仮の職業があるから、これで」


 そして二ノ宮の手を振りほどく。意外にも二ノ宮はすんなりヘルズの手を離すと、ヘルズに手を振った。


「じゃあ、頑張ってねヘルズ」


「ああ、頑張って来るさ」


 ヘルズの姿が人混みに消えると同時、二ノ宮が息を吐く。


「お手柄ね姫香ちゃん。まさか開始早々、ヘルズを見つけるなんて」


 初めて仕事ぶりを誉められ、姫香の心臓が高鳴る。


「はい、ありがとうございます!」


 姫香の返事に二ノ宮は微笑むと、すぐに真顔に戻り指示を出す。


「それじゃあ、しばらく自由行動にするわよ。くれぐれも目立たないようにしてね。せっかくパーティーに来てるんだから、少しは楽しみなさい」


 二ノ宮はそう言うと、ポケットから鍵のような物を取りだし、姫香に放った。


「ああ、一つ言い忘れていたのだけれどこのパーティー、7日間ぶっ通しで行われるからね。これは姫香ちゃんの部屋の鍵だから、休みたい時は休みなさいよ」


「えっ⁉」


 確かに、貴族のパーティーというからなんとなくそうではないかと思っていたが、まさか本当に数日連続で行うとは。


「ちょっと待ってください。それじゃあ学校がーーーーー」


「どうせ降谷先生が何とかしてくれてるでしょ。それに、貴方の親友はパーティーに参加してるわよ? もし学校に行きたいのならそれでも構わないけど、親友も仲間も居ない学校生活は果たして楽しいのかしら」


「た、確かに・・・・」


「そういう事。じゃあね、姫香ちゃん」


 間違ってはいない正論に姫香が納得すると、二ノ宮は勝ち誇った顔で立ち去って行った。


 残された姫香は数秒その場に立ち尽くすと、やがて呟いた。


「とりあえず、ドリンクでも頼みましょうか」


 その顔には、若干諦めの色が浮かんでいた。







「なあ、やっぱりこれ、おかしくないか・・・」


「しっ! 聞こえるぞ!」


「でもやっぱり、なんか変だよな」


「確かに・・・」


 ひそひそ、と。

 

 自分の周りで小声で話す部下に、松林は一言。


「お前ら、何を話してるんだ?」


「「「うわああ!」」」


 部下達は一斉に驚く。やがて、部下の一人が松林に聞いた。


「あ、あの、松林さん・・・」


「ん? どうした」


「やっぱりその格好、おかしくないですか?」


「ん? そうか」


 松林は自分の格好ーーーーーピエロの服装を見て、首をかしげた。


「はい。だって、皆見てますよ?」


「ふっふっふ」


 部下の指摘に、松林は不敵に笑った。


「お前はまだ分かっていないようだな、この服装の本当の意味を」


「ほ、本当の意味、ですか⁉」


「そうだ。この服装の本当の意味だ」


「そ、それは一体ーーーーー」


 部下の質問に、松林は余裕そうな口調で答えた。


「木を隠すには森の中という。だが普通の変装をして周りに溶け込んでいれば、いつ刑事とバレるか分かった物ではない。だがしかし! 逆に目立つ格好をしていたらどうだ? まさか誰もピエロの中に刑事が入ってるなんて思いもしないはず! どうだ、我ながら素晴らしいアイディアだろう⁉」


 松林の発想に、部下達は声も出ない。


 やがて、一人の部下が手をあげた。


「あ、あの、松林さん」


「どうした、言ってみろ」


「その怪しい格好のせいで、犯人だけではなく一般人からも危険人物として認識されるような気がするのですがーーーーー」


「ふっ」


 その部下の指摘に、松林は不敵に笑った。


「この格好はピエロだぞ? あの遊園地に居る、着るだけで子供が群がってくるこの服装のどこが怪しいとーーーーー」


「ちょっといいかな」


 熱弁を振るう松林の肩に、警備員の手が置かれた。


「君ちょっと怪しいね。仕事は何してるの?」


「えっと、その・・・・」


 こんな所で刑事と名乗る訳にもいかず、松林は言葉に詰まる。


「詳しくは署で聞こうか」


 警備員に松林が連れていかれる。


 その後ろ姿を見ながら、部下の一人は呟いた。


「・・・・松林さんの分まで頑張ろうぜ」


「「「そうだな・・・・」」」


 その言葉に、全員が賛同した。








 次回は7月10日更新予定です。

 現在分かっている詳細

・ニノ見留薬味・・・・二ノ宮来瞳

・ピエロ・・・・・・・松林尚人

・バイトらしき青年・・ヘルズ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ