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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
厨二病怪盗vs 暗殺組織『血まみれの指』
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潜入 開始

さあ、今回から潜入開始です! 

 果たして勝つのはヘルズチームか、『血まみれの指』か⁉

「全く、ヘルズさんは何を考えているんでしょうか」


 翌朝、姫香はぷりぷり怒りながら学校に向かった。


 教室のドアを開けると、早速真理亜と沙織が近づいて来た。


「姫香はっけーん」


「あれ、今日は一人? じゃあ私達と遊ばなーい?」


「おはよう、二人とも。あ、そうだ」


 二人の馬鹿騒ぎに姫香は苦笑すると、制服のポケットからチケットを二枚取り出した。


「実は弐夜先輩からパーティーのチケットを三枚もらったの。良かったら皆で行かない?」


 姫香の提案に、二人の目が輝いた。


「おおっ、何という太っ腹!」


「さすがは伝説のイケメン! やる事も豪快だ!」


 目にも止まらぬ速さで、二人が姫香の手からチケットをひったくる。その目の輝きが増す。


「ちょっ、これ、あの速水財閥の創立10周年記念パーティーじゃない⁉」


「ホントだ! なにこれ、超ヤバいじゃん!」


「え、そうなの?」


『パーティー』としか聞かされていないので詳細は知らなかったが、そんなに凄い一品なのだろうか。


「凄いどころの騒ぎじゃないよ! これ、売ったら10億円は下らないよ!」


「速水財閥って言ったら、『ヘルズに金を盗まれる可能性が高い財閥ランキング』で毎年ぶっちぎり一位を獲得してるほど稼いでる、超大手企業だよ。その会社の下っ端でも、年収一千万近くまで稼ぐらしいよ」


 それは凄い。


「そうなんだ・・・・」


 会社の下っ端ですら年収一千万。


 という事は、果たして社長はいくら儲けているのだろうか。


 姫香が頭の中で計算していると、真理亜が感動したように呟いた。


「でもよく手に入ったよね。このチケット、偽装出来ない事で有名なのに」


「えっ?」


 不意打ちの発言に、計算が途切れる。驚いた姫香に気付かず、真理亜は続ける。


「ほら、今の世の中ヘルズみたいな犯罪者が活躍してるような時代じゃない。だから会社が全勢力を投入して、絶対に偽装出来ないチケットを作ったんだよね。多分、ヘルズでも無理なんじゃないかな」


「そうそう。原本があれば話は別だけど、それが配布されるのってどこかの王族か貴族くらいな物だもんね。絶対無理でしょ。―――――って、どうしたの姫ちゃん?」


 沙織が心配そうに姫香の顔を覗き込む。姫香は慌てて手を振った。


「な、何でも無い。大丈夫だから」


 何故か慌てる姫香を、友人二人は心配そうに見つめていた。









 最寄りの駅から徒歩15分の場所に、その会場はあった。


 大きさは東京ドーム5つ分ほど。この大きさなら、多少暴れても問題ないだろう。


 建物の中に入り、チケットを提示。偽物だと気付かれずに入り口を通過し、目的の部屋に急ぐ。途中、あまりの広さに3回ほど迷いかけたが、何とか目的の部屋にたどり着く。


――――自分のような一般人が、こんなパーティーに来てもいいのだろうか。


 その考えを振り払い姫香は深呼吸をすると、会場の扉を開いた。


 扉を開くと、天井のシャンデリアが眩しく輝いた。思わず、目を覆ってしまう。


「あ、姫香ちゃん。よく来たわね」


 聞きなれた声が聞こえ、姫香は庇っていた腕を上げた。すると、途端に手を引かれる。


「ほら、こっちこっち」


 見ると、黒髪の女性が自分の手を引いている。そして会場の端まで連れていかれる。


「ここまでお疲れさま、姫香ちゃん」


 黒髪の女性が姫香に微笑む。だが姫香はうろたえるばかりだ。


「はい、えっと、その」


 誰だろう、この女性は。姫香の17年の人生の中で一度も会った事がないし、なによりこんな綺麗な女性、一度見たら忘れない。この女性は誰だろう?


 そんな姫香の反応に気が付いたのか、女性がクスリと笑う。そして、自分の胸ポケットから名刺を取り出した。


「はい、私はこういう者です」


 差し出された名刺には、『盗怪コーポレーション ()ノ(の)見留(みる) 薬味(やくみ)』と書かれていた。当然、姫香は仁ノ見留なんて特殊な名前の人間には会ったことが無い。


 その時、盗怪という言葉が目に入った。


「あっ・・・・」


 盗怪。裏返しにすれば、怪盗。という事は、ヘルズの仲間だ。


「ああっ・・・・」


 同時に、この人物の正体に気が付く。姫香は仁ノ見留の手を握り、笑顔で挨拶をした。


「こんにちは、二ノ宮さん」


 仁ノ見留―――――二ノ宮は、わずかに顔をしかめた。


「せっかく人が偽名で名乗ってるんだから、そこは偽名を呼ばないと」


 姫香は苦笑する。


『仁ノ見留薬味』が二ノ宮の本名、『二ノ宮来瞳』を入れ替えただけの事など、名刺を見た瞬間に気が付くべきだった。


「どう? 凄いでしょ、この変装」


 二ノ宮がその場でひらり、と一回転する。黒のウィッグに、質素なワンピース。とても似合っている。

姫香は頷いた。


「はい、とてもお似合いです」


 姫香が言うと、二ノ宮は微笑を浮かべた。


「そう、嬉しい。でも、姫香ちゃんの方が似合ってるわよ?」


 そう言って二ノ宮は、姫香の衣装を見た。


 純白のウェディングドレスに身を包んだ彼女は、さながら新婚のようだ。これでもし化粧でもされていたら、本当に新婚ではないかと疑ってしまう。


「どう? 私が作った、武器収納演武衣装(バトルドレス)は?」


「はい。とてもいいです」


 二ノ宮はその返事を聞いて、満足そうに頷いた。


 そう、これはただのウェディングドレスではない。


 右の太ももには木刀が吊り下げられており、左の太ももには護身用のナイフ。そしてウェディングドレスのスカートの一枚一枚は、極薄の金属で出来ている。まるで花嫁の夢をぶち壊しにするかのような、二ノ宮のおもちゃだ。


「これぞ全国のリア充の夢を壊すために作った特殊装備〝アサシン・ドレス1〟よ」


「怖いですよそれ⁉ というか、2もあるんですか⁉」


「そんな事より」


 姫香のツッコミを軽くスルーし、二ノ宮が真剣な顔になる。


「ついさっきヘルズから指示が入ったわ。『どこに敵が潜んでいるか分からない今、お互い正体をばらすのは危ない。よって、見つけ次第自然な形で合流』らしいわ」


「はい。分かりました」


 確かにその通りだ。噂によると、『血まみれの指』の他にも、ヘルズの大親友である松林刑事やその部下たちも来ているらしい。後ろ暗い事の片棒を担いでいる以上、出来れば見つかりたくない。しかもそれが、つい先日怪盗に盗まれた事で有名になった姫香なら尚更だ。


「でもそうすると、誰が仲間で誰が敵か分かりませんね」


 近くを歩いている中年男性、ワインのグラスを掲げている女性、赤いジャケットを来たサングラスの男、いかにもバイトらしきバーテン服を着た青年、etc・・・・ どれも怪しく見えてくる。


「あとはピエロくらい・・・・ピエロ?」


 姫香と二ノ宮から100メートル離れた所に、ピエロが居た。辺りをきょろきょろと見回し、何かを探しているようだ。その後ろを、不安そうな顔で数人の男が歩いている。


 ピエロの存在に二ノ宮はさして驚かず、軽い口調で告げた。


「ああ、あれは松林刑事みたいよ。何を考えたのか、ピエロの着ぐるみを着たようね。まったく、服のセンスといいヘルズの知り合いはロクな人間がいないわね」


「って、楽観視してる場合じゃないでしょ⁉」


 自然と、姫香の足は走り出していた。逃げなければ。警察という存在から、一歩でも遠くに。


 花桐邸の事件は良かった。自分はまだ被害者だったから。王女救出事件の時もまだよかった。あの時はホテルで、自分達は安全を保証されていたのだから。だが、今回は違う。


 自分も、見つかれば捕まる。


 その不安が、姫香を焦らせた。


「ちょっと、姫香ちゃん!」


 後ろで二ノ宮が何かを叫んでいるが、気にしていられない。姫香は必死で足を動かし――――派手に転んだ。


 床が眼前に迫って来る。受け身を取ろうにも、焦り過ぎて手が宙を切るばかり。もう終わりだ―――――


「大丈夫ですか、お嬢様?」


 と思った矢先、姫香の身体が受け止められた。見ると、バーテン服を着たバイトらしき青年が姫香の事を受け止めていた。


「あ、ありがとうございます!」


 姫香は慌ててお礼を言うと、青年の顔を見た。その時、妙な既視感を感じた。


――――そうか、これは。


 ヘルズに始めて出会った時。確かあの時も――――


 自然と、姫香の足は二ノ宮の方に向かっていた。足早で二ノ宮の所に戻ると、開口一番、こう言った。


「二ノ宮さん、ヘルズさんを見つけました」

 


次回は7月8日更新予定です。


 現在分かっている詳細

・仁ノ見留薬味・・・・二ノ宮来瞳(ヘルズ陣営)

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