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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と自由になりたい王女
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逃亡と交渉

いよいよ第二章も終盤!

と、ここまでで終われば美談で終わっていたのだが。


「見つけたぞ、ヘルズ! 今日という今日は捕まえてやる!」


 いつの間に現れたのか、松林が手錠を片手にヘルズに突進して来た。ヘルズは慌てて王女をお姫様抱っこしながら、松林から逃げる。


「げ、尚っちお役御免になったんじゃなかったのか!?」


「何を言っているんだお前は。俺はお前を捕まえるまでは引退する気はサラサラないぞ。あ、まさか、あの落とし穴はお前の仕業か、ヘルズ! お前のせいでICPOの刑事が全滅してしまったぞ! おかげで百億円で部下に牛丼を奢る計画がパーだ! どう責任取ってくれるんだ、貴様!」


「犯罪者に責任とか求めるなよ! ていうか、百億円で牛丼何個変えるか知ってんのか!?」


「知るか! まあ部下の腹くらいは一杯になるだろ!」


「部下どころか象の腹が一杯になるわ!」


 奇妙な漫才をしながらも、両者は全力で鬼ごっこを行っている。


 王女をお姫様抱っこしながら、全力で逃げる傷だらけの男。それを追う泥だらけの刑事。


 何というか、ものすごくシュールな鬼ごっこだった。


「止まれ! 止まらんと撃つぞ!」


「それで本当に止まった犯罪者の顔が見てみたいものだな!」


 キルファをバイクの後部座席に放り込み、自分も運転席に飛び乗る。


「あばよ、尚っち。また遊ぼうぜ!」


 ヘルズは松林に叫ぶと、アクセルを全開にした。マッハ10の速度で走行し、風を切る音が耳元でなる。


「悪いなキルファ、ちょっと付き合ってもらうぜ!」


 ヘルズは何故か恋人のようにべったりとくっついているキルファに叫ぶ。何はともあれ、これで振りきれるだろう。


「待てー、ヘルズ!」


 後ろから悪魔のような声が迫って来る。まさかと思ってバックミラーを覗くと、そこには全力疾走でバイクを追いかける松林の姿があった。


「は⁉」


 しかもその速さが尋常ではない。マッハ10を出しているはずのバイクが、一向に引き離せないのだ。それどころか、どんどん距離を詰められている。


「待てー、ヘルズ!」


「お前はとっつあんかよ⁉ 俺に対する執念深すぎるんだよ!」


 そうこうしている内にも、松林は迫って来る。その執念深さには、さすがのヘルズも失笑を禁じ得なかった。


「ていうか、これは流石にやべえ! 尚っち人間じゃないだろ⁉」


「貴様に対する執念で俺は加速する! うおおおおお!」


 宣言通り、松林の速度が更に速くなる。ギャリリリリリリリリ、という音が離れたヘルズのところにも聞こえてくる。松林の足と地面の間で起こった摩擦によるものだ、と気がついたヘルズの背中に冷や汗が流れる。


「ちょっ、嘘だろ⁉」


「これが《警察の意地(ポリス・クラッシャー)》だ! くらえヘルズ!」


 松林が砂ぼこりを上げて突撃して来る。ヘルズはスイッチを連打するが、無理な連続行使のせいか、バイクの調子が悪い。スイッチを一回押す事に速度が落ちているような気がする。


「ちょっと待て。これ冗談抜きで捕まるやめて助けていやぁぁぁぁぁぁ!」


 ヘルズの絶叫が、夜空に響き渡った。




「相変わらずうるさいやつだな、ヘルズは」


 ヘルズの大絶叫に顔をしかめながら、降谷は呟いた。

 その足元には、気絶したメイド長が横たわっている。降谷は乱暴にメイド長を蹴り飛ばした。


「うっ、ここは・・・」


 降谷の蹴りで起きたのか、メイド長が目を覚ます。起き上がろうとするがめまいがしたのか、再び床に倒れこむ。


「気がついたか。元メイド長」


(これは・・・。まさか、火事ですか⁉ 王女は、王女は無事ですか⁉)


 メイド長が起き上がろうとして、またも失敗する。降谷はそんなメイド長を哀れみの目で見ると、顔面に蹴りを放った。全身火傷状態のメイド長はそれをなすすべもなく受け、仰向けに倒れる。


「うるさいぞ、元メイド長。自分がどうして生きてるか分からないのか」


 降谷がメイド長の腹を踏みつける。メイド長は「うぐっ!」と声を上げ、床にうずくまる。


「人を従わせたい時に、最も有効なのは情報や金を渡す事だ。だが生憎、お前がそんな物欲しくないのは分かってるし、こっちだってお前如きに払う情報など一つもない。じゃあどうするか」


 降谷の蹴りが、メイド長の背中を襲う。火傷している箇所を重点的に攻撃され、メイド長は苦悶の声を漏らす。


「ん、あっ!」


「答えは簡単。暴力で従わせる。これに限る」


 降谷は攻撃の手を緩めず、メイド長に言う。メイド長は口を開くが、口の中が火傷しているのか上手く喋れない。


「さて、ここでお前には二つの選択肢がある。オレに自分の全てを差し出して生き残るか、それともここで死ぬか。選んでいいぞ」


 降谷がしゃがみこみ、メイド長の口の中に液体を流し込む。するとたちどころに火傷が消え、メイド長は喋れるようになった。


「で、どうするんだ?」 

 

「・・・私をどうするつもりですか」


 降谷を睨み付け、メイド長はきつい口調で聞く。降谷はそんな彼女を冷ややかな目で見ると、喉元を蹴り飛ばした。一瞬呼吸を絶たれ、メイド長は盛大にむせる。


「けほっ!」


「むかついたから、とりあえず情報は今喋ってもらう。情報っていうのは期限があるからな、早く手にいれるに越したことはないだろ」


「・・・・もし断れば?」


「お前を拷問してでも吐かせる。拷問にある程度耐性がついているオレと違って、お前ならすぐに根をあげると思うぞ?」


 降谷の足が、メイド長の手へと伸びる。まずは指を折るつもりなのだろう。


「無断ですよ。その程度では私は吐きませんよ」


「安心しろ、ちゃんと吐かせて見せるから」


 降谷の足が、メイド長の手を踏み潰す。


「まず、お前の小指を両方折る。そして次に女としての尊厳を奪い、お前を社会的に抹殺する。二度と人の前に顔を出せないように、徹底的にだ。それからお前の手と足の骨を交互に折り、地下室で死ぬまで監禁する。さて、どこまで耐えられるかな?」


 降谷の言葉に、メイド長の背中に寒気が走る。

 メイド長とて女の子だ。今降谷が言った通りの事をしたら、恐らく羞恥心と恐怖で死ぬ。だが降谷はそれをさせてくれないだろう。拷問の恐ろしいところは、自殺出来ない所にあるのだから。


「じゃあまず、小指の骨からだな。悪いがオレはスパイだ。一切の容赦はしないぞ」


 降谷の足が、メイド長の手に伸びる。そしてーーーーー


「なんの情報が欲しいんですか?」


 メイド長が折れた。降谷はそれを最初から分かっていたかのように頷くと、メイド長の手に足を乗せた。


「お前が知っている情報を全て話せ。ーーーーーと言いたい所だが、そんな物は時間の無駄だ。今からオレが言う情報を吐け」


 降谷の言葉に、メイド長はガクガクと頷いた。


「まず、ここ最近の師匠の動き。これはお前がつい最近まで持っていた『コネ』である程度は知ってるだろ。それでいい。それと、お前が持っているクルシアの情報を全て話せ」


「クルシアの情報を私が持っていると、誰から聞いたのですか?」


 メイド長が苦しそうに、降谷に問う。降谷は鼻を鳴らした。


「馬鹿言え。オレはスパイだぞ。そんな情報くらい、簡単に入手できる」


「クルシアと言えば・・・確か貴方の仲間の恋人でしたよね? そんな物を知ってどうするんですか? まさか、反逆でも起こすつもりですか?」


 降谷の足に力がこもり、メイド長の手に痛みが走る。


「そのまさかだよ」


 降谷の冷酷な声が、頭上から聞こえてくる。


「それは充分なヘルズへの反逆材料になる。それだけで、その情報には充分価値がある」







次回、意外な展開が!

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