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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と自由になりたい王女
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二ノ宮の誘い

 更新、いつもより遅れてしまい申し訳ございません。

 今回は二ノ宮が姫香の家に行きます。果たして二ノ宮は姫香の家に行き何をするのか。ぜひどうぞ

(どうしてあんな事、言ったんだろう)


 枕に突っ伏して、涙を拭う。

 危機に瀕している王女が助けを求めているのに、それをはっきりと断り、それなのに飄々と笑っているヘルズを見た時、それが親と自分に見えて、王女が虐待を受けていた頃の自分に重なって―――


 気がつけば、ヘルズを叩いていた。


(やり過ぎちゃったかな・・・)


さっきから、涙が止まらない。ヘルズに対して怒っている事にではない。


(私、嫌われちゃったかな・・・・)


 そう考えた瞬間、心臓をキュッ、と締め付ける感覚が襲った。罪悪感で胸がいっぱいになり、涙が止まらない。


(涙が止まったら、謝りに行こう)


 枕に顔をうずめながら姫香が決意した時、玄関のチャイムが鳴った。


「誰?」


 ヘルズが謝りに来たのだろうか。でも今の自分を見せるのはまずい。せめて涙だけでも拭ってから、いやでもそうするとヘルズが無人だと思って帰ってしまう――――

 姫香が悶々と悩んでいると、再びチャイムが鳴った。


「あ、はい」


 仕方なく、姫香は玄関を開けた。謝るにしろ何にしろ、無人だと思われては元も子も無い。

 しかし、居たのは二ノ宮だった。


「ハロー、姫香ちゃん。ヘルズじゃなくて悪かったね」


 先ほど口喧嘩をしていた事など覚えていないかのように、二ノ宮は左手を上げた。


「こ、こんにちは」


 おどおどとしながら、姫香も手を上げる。二ノ宮は姫香の反応を見ると、ニッコリと笑っって、


「元気そうだね。じゃあ、お邪魔します」


 勝手に家に侵入して来た。


「ちょっ、ちょっと先輩⁉」


 姫香が悲鳴を上げるのもお構いなしに、二ノ宮は玄関で靴を脱ぐと、姫香の寝室に入って行った。


「そ、そこは駄目です先輩! そ、掃除してなくて・・・」


 姫香が言い訳しながら寝室に入ると、二ノ宮が姫香の枕に顔を押し付けていた。


「ちょっと、先輩! やめてください!」


 絶叫しそうになるのをどうにかこらえ、強引に二ノ宮を引き離す。枕から引き離された二ノ宮は少し不機嫌そうな顔をしている。


「いいじゃん、少しくらい」


「駄目ですよ! 一体何を考えているんですか⁉」


 怒られても二ノ宮はキョトンとしている。せっかく注意する機会なので、ここはガツンと言っておこうと姫香は二ノ宮の目を見据えた。その瞬間、脳を甘い感覚に支配された。


 ――――そう、忘れていたが二ノ宮は超が付くほどの美少女なのだ。


 澄んだ双眸が姫香を見つめ、胸が高鳴る。前にも経験した脳を支配されるような感覚が、姫香を蝕んでいく。突然硬直した姫香を見て、二ノ宮は首を傾げた。


「どうしたの、姫香ちゃん?」


 僅かに首を傾けた事により、彼女が後ろで遊ばせていた銀髪が揺れる。桜色の唇が動き、姫香の胸を刺激する。


――――このまま二ノ宮に抱き着き、押し倒したい。


 姫香の脳裏を、そんな言葉がよぎる。姫香はその言葉を頭から締め出し、二ノ宮の顔に意識を集中させた。だが、二ノ宮の顔を見るたびに、一度頭から締め出した言葉が再びよぎる。


「本当にどうしたの、姫香ちゃん?」


 姫香は二ノ宮の顔を見ないようにしようと、視線を泳がせる。―――と、二ノ宮の頬に髪の毛が付着している事に気が付いた。


「先輩、ちょっと失礼します」


姫香は手を伸ばすと、二ノ宮の頬に付いた髪の毛を払った。その時、指に湿った感触を得た。疑問に思って二ノ宮の頬に触れてみると、やはり濡れている。わずかな湿り気を持っている。


―――まさか、二ノ宮さんも泣いていたのだろうか。


 そう思った姫香が二ノ宮の眼を見ると、「ん?」と小首をかしげて、二ノ宮も見つめ返してきた。脳を支配される感覚に、慌てて目をそらす。


「どうしたの、姫香ちゃん? さっきから様子が変だよ?」


 二ノ宮が不思議そうに聞いて来る。姫香は「あ、いえ・・・」と誤魔化し、二ノ宮に聞いた。


「あの、先輩」


「なに、姫香ちゃん?」


「どうして、頬が濡れているんですか?」


 考えるよりも直接聞いた方が早い、という事に気がついた姫香は、二ノ宮の眼から目をそらしながら聞いた。二ノ宮は自分の頬に触れ、意外そうな声を上げた。


「あ、本当だ。なんで濡れてるんだろう」


「心当たり、ないんですか?」


「ないなあ。ヘルズの家からここに来るまでに、何か濡れた物に触ったっけ」


 二ノ宮が自分の頬に触れながら、首を傾げる。姫香もその謎について思索し―――、


(あ・・・)


 その答えに気が付いた。


 先刻、二ノ宮が顔を押し付けていた枕。二ノ宮が顔を押し付ける前、姫香は枕に顔をうずめ―――


 泣いていた。それも、割と本気で。もし、その時の涙が枕に付着していたとしたら―――――、


 顔が赤くなっていくのを感じる。つまり、今二ノ宮の頬に付いているのは、まさか・・・


「姫香ちゃん、顔赤いよ。さっきからどうしたの?」


 二ノ宮が姫香に顔を近づけ、その目を覗き込んだ。彼女の吐息が姫香の唇にかかり、姫香は跳び退いた。


「きゃっ!」


「その動作、結構傷つくんだけどな」


 二ノ宮が苦笑する。さすがに失礼だと思った姫香は、頭を下げた。


「す、すみません」


 すると、二ノ宮はぷいっ、と横を向いた。


「やだ、許さない」


「えっ、えっと・・・」


 姫香は焦った。自分でも悪いと思っている以上、相手に許してもらわなければ相手に対して申し訳ない。


「えっと、どうしたら許してもらえますか・・・」


「それじゃあ、ここに寝て」


 二ノ宮が正座で床に座り、自分の膝を指さしながら姫香に言う。


――――俗に言う、膝枕という物である。


「そ、そんな事でいいなら、喜んで・・・」


 姫香は腰を下ろすと、二ノ宮の膝に頭を乗せた。二ノ宮の膝は柔らかく、このまま寝ていたいという衝動に駆られる。ずっと寝ていたいな、と姫香が思っていると


「ねえ、今どんな気持ち?」


 不意に、二ノ宮が呟いた。


「えっ?」


「胸が、痛い・・・?」


 二ノ宮の声には、どこか儚げな悲しみがあった。


「私には分かるよ・・・ 私だって、今までに何回もヘルズと喧嘩したもの。些細な事から大事な事まで、何回も、何回も。でも、その度に胸が凄く痛んだ・・・ まるで胸が締め付けられるような痛みが残った。だから私には分かる。彼と喧嘩するのって、とっても辛いよね・・・」


 二ノ宮が、姫香の頭を撫でながら言う。


「確かにヘルズは最低よ。誰に対しても毒舌を吐くし、誰が困ってようが自分には関係ないとばかりに切り捨てるし。でもね、姫香ちゃん」


 二ノ宮の手が止まる。髪を撫でられる感触がなくなり姫香が顔を上げると、そこには慈母のような表情を浮かべた二ノ宮の顔があった。


「ヘルズのそういう所も受け入れていかないと、この先上手くやっていけないよ?」


 驚いている姫香に二ノ宮はニッコリと微笑むと、姫香に言う。


「ねえ、姫香ちゃん。これからデートでもしない?ヘルズのいいとこ、いっぱい教えるよ。

―――それこそ、姫香ちゃんがヘルズの事を大好きになるくらいに」






 ヘルズは、とある病院に来ていた。この病院に二週間前から入院している、ある少女に会いに行くためだ。


「邪魔するぞ」


 ノックもせずに病室に入る。扉を開けると、全身包帯姿の人間、もといミイラと目が合った。


『誰?』


 ミイラが、包帯越しのくぐもった声でヘルズに聞く。ヘルズは来客用のパイプ椅子に座ると、見舞ように持って来た木刀をベッドの上に置いた。


「俺だ」


『ヘルズ?』


「ああ。二週間ぶりだな、チャルカ」


 ミイラ状態のチャルカは驚いたような声を上げ、瞬時に殺気を解放した。


『何しに来たの? まさか前の続き?』


「おいおい、俺は怪盗だぜ? お前を殺すわけないだろ」


 常人ならその殺意にショック死してもおかしくないレベルの殺気に睨まれながらも、ヘルズは平然と言い放つ。飄々とした態度のヘルズに、チャルカも殺気を解除する。


『ごめん。ちょっと警戒してた』


「ちょっとってレベルじゃないと思うが・・・ まあいいや。おいチャルカ、今時間あるか?」


 ヘルズの問いに、チャルカは首を傾げる。


『一応あるけど、どうして?』


 チャルカが訊くと、ヘルズはニヤリと笑った。


「ちょっと散歩に行かないか? 俺と二人きりで」



 次回は、デートの話です。

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