たまには『俺TUEEE』も悪くねえ
今回はヘルズ無双回です! どうぞ楽しんでください!
「姫香、ちょっと離れてろ。もう充分暴れただろ。次は俺のターンだ」
ヘルズに言われ、姫香はヘルズから離れる。暴れたかはともかく、もう姫香にできる事は何もない。
「さて、と。行きますか」
ヘルズは自分に言い聞かせるように言うと、不敵な表情で女を見た。女もヘルズの存在に気がついていたのか、ヘルズを見る。
「よお、テロリストのボス様。お会いできて光栄だぜ。突然で悪いんだが俺の『俺TUEEE』の餌食となってくれ」
「貴方が、ヘルズね」
ヘルズの挑発のような言葉も聞かず、女は淡々と言う。そして翼を閉じると、地面に降り立つ。
「残念ながら、私達にも目的があって、やられるわけにはいかないわ。悪いのだけれど」
女が、右腕を上げる。
「死んでちょうだい」
瞬間、校舎から銃撃音が轟いた。見ると、巨大な砲弾がヘルズ目掛けて飛んできている。砲弾はヘルズに向かって一直線に飛ぶと、その数メートル前で爆発した。ヘルズの体が爆炎と爆風に包まれる。生徒達の中から悲鳴の声が上がった。
「冥土の土産に聞かせて上げるわ。私の番号はz-xy。通称は『戦闘科委員長』。まあ長いから委員長でいいわ。かの有名な裏組織ーーー」
「分かった分かった。もう分かったから大人しくご臨終しろ馬鹿テロリスト」
「⁉」
爆炎の中から聞こえてきたやる気の無さそうな声を聞いて、女ーーー委員長は驚愕する。
「肩書きが長ったらしいんだよお前。長い肩書きを名乗れるのは俺だけだ。いいか、テメエが長い肩書きを名乗ったってな、読者は喜ばないんだよ」
やる気がなさそうに、ダルそうな表情で、ヘルズが爆炎の中から出てくる。その格好は肉体はおろか、服にも傷一つ付いていない。
まるで、ヘルズにだけ爆発をくらわなかったかのように、ヘルズは悠然と佇んでいた。
「嘘、どうして・・・」
「言っただろ? 今回は『俺TUEEE』回だって。というかそもそもさ」
ヘルズは嘲笑うかのように口の端を歪めると、委員長に突っ込んだ。そしてその首筋を狙って、足を蹴り出す。
「ッ・・・・」
これは避けきれないと判断した委員長が、顎を引く。
ーーー刹那、それに追い付く形でヘルズが委員長の顎に手のひらを密着させ、一言叫ぶ。
「《死角残樹》!」
密着させた状態での、超強力なパワーの一撃。これは相手の脳を揺さぶり、かつ顎の骨を粉砕するまでの威力を誇る、ヘルズが胸を張って誇れる必殺技の一つだ。
「ウッ!」
顎にも鱗があったおかげか、最悪の状態だけは免れる委員長。しかし、鱗にビキッという嫌な音がする。
「人工クレエブレ。それがお前の能力の正体だろ?」
クレエブレ。
それはスペインにおける『竜』を表す、想像上の生物である。
その体は、弾丸すらはじき飛ばすほど堅い鱗に覆われ、飛ぶことのできる羽を持ち、吐息で毒を放ち、叫び声ははるか遠くまで響き渡る・・・などと言う、戦闘においてはそこそこの実力を誇る生物だ。
しかし、ここでそんな事を論じる気は毛頭ない。大事なのは一つ。
「『クレエブレ』なんていう名前が大して知られていないような三流生物が、俺に勝てるとでも思ってんのかよ!」
そう、結局はそれである。
書物の中にわずかにでも登場すればいい方のクレエブレと
様々な本の中に語られる存在の吸血鬼。
一介の『龍』と、『怪異の王』。
どちらの知名度が高いかなど、一目瞭然だ。
「皮肉なモンだよな。たかが細胞の種類が違うだけで、天と地の差があるんだからよ」
攻撃を放ち終えたヘルズが靴底でブレーキを掛け、その場に停止する。そして、未だに鱗が割れたショックから立ち直れていない委員長に言う。
「ここまで舞台を用意してくれたんだ、とことん付き合ってもらうぜテロリスト。今の俺は『俺TUEEE』状態、負ける気がしないぜ。さあ、鬼と龍の決戦を始めようか!」
邪眼、解放。
封印していた力が解放され、片方の瞳が熱くなる。全身が火照るような熱を帯び、全身に力が漲ってくる。
「くッ・・・全軍、総攻撃!」
委員長が悔しそうに、部下に指示する。すると先程の倍以上の数の砲弾が校舎の中から現れ、ヘルズに向かって放たれた。
それをヘルズはーーー
「ハッ、雑魚が!」
全てまとめて、蹴り返した。
「なッ⁉」
蹴り返された砲弾が明後日の方向に弾かれ、校庭のあちこちで爆発が起こる。爆風に髪をなぶられながら、ヘルズは不敵に格好つけている。
「もっと! もっとよ! 全ての弾丸を装填! ソイツを撃ち殺せ!」
すると、今度は校舎のみならず、校庭や頭上からも弾丸や砲弾、ロケット弾が飛んでくる。それを見て、たまらず姫香は叫ぶ。
「ヘルズさん!」
「正確にはヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニングだ。人の名前はしっかり覚えとけよ姫香!」
飛んでくる無数の弾丸に対して、ヘルズは嗤いながらその場で逆立ちするとーーーー
「《天災・土塔竜巻》!」
足を開き、回し蹴りを始めた。
あたかも竹トンボのように。
「ウオオオオオオオオ!」
そのまま速度を上げていく。すると辺りの風が巻き込まれ始める。そして数秒経つと、ヘルズを中心に渦のような物が作り出される。
「な、何をするつもりなの⁉」
委員長の悲鳴に近い絶叫が聞こえた時、それは起こった。
ヘルズを中心に巨大な竜巻が生み出され、砂を巻き上げて展開したのだ。それを見て、委員長は驚く。
「う、嘘でしょ⁉」
この男、ヘルズ・グラン・モードロッサ・ブラッディ・クリムゾン・ライトニングは、たった今。
足の回転のみで、竜巻を作り出したのだ。
「冗談でしょ・・・この力!」
竜巻を纏ったヘルズに、弾丸が襲いかかる。だが、竜巻の影響で自由自在に吹き荒れる風に勢いを殺され、ヘルズに届く前に落ちていく。
「ははッ、いいザマだな!」
それを見てもヘルズは足を休めることなく、回転させ続ける。あまりの速さに、足はもう見えない速度で回っている。竜巻は止まることを忘れたかのように回転の速度を一切衰えず、風を巻き込んでさらに肥大している。
「このままではまずい・・・」
委員長はイライラしたように頭を掻くと、息を大きく吸い込んだ。そして、喉が枯れるくらいの迫力で叫ぶ。
「アアアアアアアアッ!」
瞬間、委員長から莫大な衝撃波が放たれ、ヘルズの竜巻とぶつかり互いを相殺し合う。竜巻が霧散し、目も開けていられないくらいの風が吹き荒れる。でたらめな肺活量だ。そんな中、ヘルズは優雅に足を閉じると、逆立ちから元に戻った。
「そう言えば、クエレブレにはそんな伝承もあったな」
クエレブレの特徴の一つ。
『叫び声が、はるか遠くまで響き渡る』
これによる音の衝撃波を飛ばして、ヘルズの竜巻を消したのだろう、見事な物だ。
「だが、それ一つじゃ甘いな。アイツの作ったモンブランよりも甘いぜ」
ヘルズは豪快不遜に嗤うと、両手をポケットに突っ込んだ。そして、余裕綽々といった様子で校庭に佇む。
「ほら、どんどん来いよ!」
「クッ、人工ゴリラ、人工チーター、人工虎、奴を消しなさい!」
すると、校庭の窓を突き破って三匹の半人間、半人外が出てきた。彼らは皆服を着ており、何ともシュールな光景だった。
「「「了解!」」」
委員長の指示で三匹が同時に動き、ヘルズに襲いかかる。まずゴリラがヘルズの腕をつかんでその場に止め、残る二匹がヘルズを食い殺そうと迫り来る。
だがヘルズはーーーー
「ぬるいぜ、テロリスト!」
逆にゴリラの腕をつかんで振り回し、チーターと虎を振り回したゴリラで薙ぎ倒す。そして、ゴリラを盛大に地面に叩きつけた。
「グボァ!」
「握力500キロ? ハッ、知らねえなそんな物。俺を倒したければ、握力10000キロを越えてから来い」
ヘルズは獰猛に嗤いながら、自分の足元に伸びているゴリラの顔面を幾度となく踏みつける。それを見て、委員長はヘルズに割り込みを掛ける。
「それ以上、私の部下を攻撃しないでもらえるかしら」
「断固拒否させてもらうぜテロリスト様よ!」
委員長のタックルを難なく避け、その体に稲妻蹴りを叩き込む。邪眼によって強化された力に加え、ヘルズの勢いによって繰り出された足は委員長の鱗に大きなクレーターを作り、第一宇宙速度に匹敵する速度で、校舎に向けて蹴り飛ばす。
「ガアッ!」
委員長が背中から校舎の壁に激突し、口から大量の血を吐き出す。いくら弾丸に耐えられる鱗でも、ヘルズの蹴りには耐えられなかったようだ。鱗はあちこちがひび割れ、裂け目から血が滲んでいる。一方、委員長がぶつかった校舎の壁にも、半径数メートルもありそうな大きなクレーターが出来ていた。
「もう終わりかよテロリスト様。俺はまだ戦い足りねえぞ」
ヘルズが肩をグルグルと回しながら、委員長に不満げに言う。そして、片目に装着されていた眼帯を外す。
「ほら、さっさと来いよ。龍の力はそんな物じゃないだろ?」
「グッ・・・確かにまだ、終わってないわね・・・」
委員長は喀血しながら立ち上がると、息を大きく吸い込む。
そしてーーーー
「アアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
先程とは比べ物にならないレベルの大音量を発した。
「お、これはまずいな」
三半規管に大打撃を受けたのか、戦いを見ていた生徒達がバタバタと倒れていく。そうして、観戦者は居なくなった。
大音量による振動で、窓ガラスが全て割れる。校舎の亀裂がさらに広がり、校舎は今にも倒壊しそうだ。
かくいうヘルズも、今にもあまりのうるささに倒れそうだ。ましてや吸血鬼状態では五感も格段に鋭くなるため、この音量を聞くのは命取りだ。
だからーーーー
「渇ッ!」
気合い一喝、地面を殴り付ける。
ヘルズの拳は音を越える速度で地面に突き刺さり、委員長の雄叫びを越える音を叩き出す。委員長の音が打ち消され、ヘルズの拳の音のみが響き渡る。
「衝撃波に衝撃波をぶつける、王道だぜ」
ヘルズがそう言って格好つけた時、委員長が大きく息を吸い込んだ。そして、今度は何かを吐くような構えを取る。
「お、今度は何だ? 早く来いよ、そろそろ終わりにしてやる」
もうラストでいい頃だ。この一撃でトドメを刺そうと、ヘルズは構える。
「はあああッ!」
そんなヘルズを見て委員長は口を開くと、紫色の光線を撃ち出した。その毒々しい色に、ヘルズはポンと手を叩く。
「ああ、これも伝承にあったな」
『クエレブレは、吐息で毒を放つ』
その伝承から取られた、毒光線だろう。いくら吸血鬼でも、龍の毒を受けてまで生きていられると言う絶対の保障はない。当たれば最後、全身に毒が回って即死になる。
だが、そんな状況でもヘルズは飄々としている。
「おいおい、こんな隠し玉持ってたなら早く使えよ。まあいい感じの閉めになりそうだから、これはこれでいいんだけどな」
そして右足を振り上げると、その体勢のまま呟く。
「さあ、せっかくなんでサービスだ。『俺TUEEE』回限定、特別必殺技ーーーーー」
光線が迫る。そしてヘルズまで届くか否かと言うところで、ヘルズは叫ぶ。
「《全世界破壊上等》!」
光線をーーーー踏み潰した。
本来物質でしかないはずの光線を、ヘルズの足が潰す。それだけで光線は霧散し、影も形もなく消滅した。
「終わりだ、テロリスト!」
ヘルズは勢いもそのままに委員長に向かって大跳躍すると、拳を振りかぶった。
「歯、食いしばれ!」
ヘルズの右ストレートが、委員長の顔面に炸裂する。既に体力が0に限りなく近かった委員長はその一撃をくらってもろに吹き飛び、校舎に激突した。ヘルズはそれを見て、口の端を歪めた。
「これで俺の大勝利。やっぱり俺は最強だな。『俺TUEEE』万歳」
次回は12月11日更新予定です。




