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世間を騒がせる天才怪盗は、二次元廃人でした。  作者: 桐原聖
引きこもり怪盗と文化祭
121/302

テロリスト掃討戦②

 一方その頃、姫香達はーーー


「ああもう、だからどうしてこうなるのーーーー」


 逃げ回っていた。


「仕方ないわよ、姫香ちゃん。人間とは自分より強いものに対して逃げ惑う性質がある生き物なのよ。ウルト○マンやシン・ゴ○ラを見ればよく分かるわ。まったく、滑稽でたまらないわね」


「ニノ宮さんも人間ですけどね!」


 というか、今の状況を作ったのは100%ニノ宮のせいだ。姫香は自信を持ってそう断言できる。


 全ての元凶は五分前の事ーーー






「さて姫香ちゃん、どこに行きたい?」


 テロリストがひしめく戦場の中、ニノ宮はまるで転校生を案内するかのような軽い口調で、姫香に聞いてきた。


「とりあえず、皆の居そうな所で」


 姫香はそう答えた。早くクラスメイトを探さなければ彼らが危ない。


「そうね。じゃあまずは購買に行こうかしら」


「どうしてですか?」


「だってクラスに一人はお決まりの腹ペコキャラがいるかもしれないでしょ」


「こんな非常事態に居るわけないでしょ!」


 むしろ、居たら怖い。


「仕方ないわね。じゃあ、旧校舎にいくわよ。きっとあそこで徒党を組んで作戦会議を行っているに違いないわ」


「いや、うちの学校に旧校舎なんてありませんからね」


 確かにアニメなどではありがちだが、そう現実は甘くない。


「購買でもない、旧校舎でもないとすれば・・・やっぱり理科室ね。きっとあそこで塩酸とか危険な薬品を集めてるんだわ」


「確かにありがちですけど・・・」


 そんな発想をする人間がこの学校にいるのだろうか(ヘルズとニノ宮は除く)。


「でももし理科室に居なかったら、後は地道に探していくしかないわよ。残念だけどね」 

 

「そうですよね・・・」


 元より、テロリストがいる状況下で動く方がおかしいのだ。しかしやってしまった事は仕方ない。誰かがその尻拭いをして上げなければいけないのだ。


「あ、そうだ。いい考えがあるわよ姫香ちゃん」


 そこでニノ宮が何かを思い付いたのか、ポンと手を叩く。


「こっちから探すんじゃなくて、彼らを誘き出せばいいのよ」


「誘き出す?」


「そう、この道具を使えばいいのよ」


 そう言ってニノ宮が取り出したのは、なんの変哲もない笛だった。よく防犯安全教室などでもらえる、安っぽいあの笛だ。


「これは・・・」


「ただの笛よ。これを吹けば喉を枯らさずに仲間を呼び寄せる事が出来るわ。しかも呼び寄せてる事が分かるように一定のリズムで吹けば最適ね」


 言うが早いかニノ宮は笛を口にくわえると、息を吹き込んだ。


 ピリリリリリリリ!


 甲高い音が、学校中に響き渡る。


「さあ、これで完璧ね」


「あ、あの、ニノ宮さん」


「なあに、姫香ちゃん」


 ニノ宮が屈託のない笑みで聞いてくる。まさかーーー


「えっと、気づいてません?」


「うん、何が?」


 あ、駄目だこれ。絶対気づいてない。


 読者の皆様、お分かりだろうか。実はこれ、すごく根本的なウルトラ・ミスなのだが。






「この笛吹いたら仲間より先にテロリストに気づかれますよね?」





 凄く当たり前の事だ。仲間が気づいて来る云々の前に、大きな音が出たらテロリストがやって来る。今ニノ宮がした行動は、三次元の方の逃走中で、ハンターに自分の居場所を知らせているような物だ。


 

 つまり一言で言えば、ただの馬鹿。


「あ」


 ニノ宮は、ようやく気がついたようだ。口をポカン、と開け、姫香の方に向き直る。


「どうしよう」


「知りませんよ」


 その時、バタバタと慌ただしい足音がして、テロリストがやって来た。


「お前ら、そこで何をしている⁉」


 さてーーーー



「逃げるか」


「そうですね」


 そして、今に至る。



「どうしてくれるんですか、ニノ宮さん⁉ これ完全に貴方の責任ですよね⁉」


「いえ姫香ちゃん、それは違うわ。こんなぶっ飛んだ思考しか出来ない私に判断を委ねた貴方の責任でもあるわよ」


「まさかあそこで笛を持ち出すとは思わないでしょ!」


 今日日小学生でもやらない。


「まあ確かに私にも僅かながら責任があるわ。仕方ないわね、その分はきちんと償うわ」


 ニノ宮は懐から携帯電話を取り出す。そして、姫香に聞いてくる。


「ドラゴン隊長とデブゴン、どっちを呼んだらいいと思う?」


「なぜその二人限定⁉」


「ああ、何ならカバオくんを呼んでもいいわよ」


「それ全く戦力になりませんよね⁉」


 カバオくん。


 某あんパンのヒーローに助けられるキャラクターである。


 懐かしいにも程がある。


「じゃあ誰を呼べって言うのよ⁉ あと呼べるのは赤犬とかフリーザ様くらいしか無いわよ!」


「普通にそれで充分ですよね!」


 というかニノ宮は二次元の人間を呼び出せるのか。


 赤犬とかフリーザより、そっちの方がチートである。


「仕方ないわね、呼びたくはなかったけどここはやむを得ない・・・奴を呼ぶわ」


「奴?」


 姫香が聞き返すと、ニノ宮は神妙な面持ちで頷いた。


「そう、かつてかの有名な『峰岸事件』を起こして国外へ逃亡したと噂される伝説の人間、峰岸さんを呼ぶわ」


 峰岸。聞いたことのない名だ。


「なんでも『峰岸事件』を起こした後もアメリカで色々やらかしたらしいわ。マフィアとドンパチやったり、大都市を一つ壊滅させたり、他国に大統領の名で喧嘩を売って戦争を勃発させたりね。まあそれらも全部あの有名な『峰岸事件』には劣るでしょうけど。聞きたい? 峰岸さんがアメリカで起こした事件の事」


 どちらかといえば、『峰岸事件』の方を聞きたい。


 ニノ宮はさっきから『あの有名な』と言っているが、姫香はそんな事件、一度も聞いたことがない。・・・というか、戦争を勃発させたり大都市を壊滅させる事よりも遥かに上のその『峰岸事件』って、いったい何をしたらそうなるんだ。


「ヘルズですら、あの人に道であった時は挨拶を欠かさなかったくらいだからね」


 普通に町中歩いてたのかよ。


 まあとにかく、そんな危険物の塊のような人間を、対テロリストごときで使わないでほしい。


「どうするの? このままじゃじり貧よ?」


 瞬間、背後で発砲音。姫香は咄嗟に振り返り様、ニノ宮から借りたカードを前に突き出す。すると弾丸の動きが止まった。


「確かにそうですね・・・」


 カードをポケットにしまいながら、姫香は首肯する。ニノ宮の言う通り、このままではまずい。いずれ姫香達は追い詰められて、殺されるだろう。


「こうなったらもう、戦うしかありませんね。ニノ宮さん、あと武器はどのくらいですか?」


 あえて『武器』と言い直し、姫香は聞く。戦場で『おもちゃ』などと言うと、戦う気が削がれる。


「そうね・・・残りのおもちゃは魔法の板が5枚、普通の笛が1個、第二次世界対戦決戦兵器1台、人体大幅欠損器具『KILL-1430』が1台くらいね」


「最後の2つおかしくありません⁉」


 名前からして危険物すぎる。


「これを使えばテロリストどころか町が滅びるわ」


「駄目な奴でしょ絶対に!」


 戦争ですら使う機会が限られてきそうな道具だ。というかそれはもうおもちゃではない。


「なら仕方ないわね。魔法の板で足止めするわ」


 ニノ宮は踵を返すと、魔法の板を一枚抜き、呪文を唱える。


「ウルトラメタリックボルシャックデンジャラスハリケーンスパークリングドラリオンイルミネーションサイヤ人はきっといる私はいると信じている宝くじで4億円当たらないかな当たったら何しようかな分からないや当たってから決めればいいやてかそもそも当たる確率何パーセント・・・」


「呪文長すぎるでしょ!」


「あ、間違えた。最初からやり直しになっちゃった」


「死にますよ⁉」


 長すぎて実用性が全くない。使えない(威力が高すぎるのも含めて)おもちゃばかりだ。


「分かってるわよ。これにすればいいんでしょ」


 ニノ宮が若干キレ気味に違う魔法の板を取り出すと、一言。


「ズドン」


 瞬間、魔法の板から弾丸が飛び出した。弾丸はさながら散弾のごとく飛び散ると、1発につき20発にも30発にもなってテロリストに襲いかかった。


「ぐわぁ!」


 散弾がヒットしたテロリスト達が、血飛沫を上げながら次々に倒れていく。ニノ宮はその様子を見ると、不適に笑った。


「科学魔法【マジックミサイル】。詠唱1秒で散弾銃の一撃を再現する力は、まさに魔法。私のお気に入りの1つよ」


「いや最初から使ってくださいよ!」


 姫香は絶叫した。今の攻撃で追ってきていたテロリストは全滅だ。最初から使えば逃げることもなかったのに、と愚痴る。


「仕方ないわよ。私たちはきっと逃げる運命(さだめ)だったんだわ」


「嘘でしょ! ニノ宮さんがさっき笛吹いただけじゃないですか! 吹かなければ逃げることもなかったのに!」


「過去は変えられないわ。だから前を向いて歩きましょう」


「無駄にかっこいい!」


「まあそれはともかく」


 ニノ宮は魔法の板をしまうと、鞄から小型のチェーンソーのような物を出した。そして、倒れているテロリストに近づく。


「ねえ、ちょっと貴方達に聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」


 テロリスト内の1人の頭にチェーンソーを突きつけ、ニノ宮は聞く。その言葉にテロリストはゆっくりと頭を上げーーーその目が、恐怖に染まった。


「あ、あ、あ・・・」


「あら、まだ生きてたのね。ならちょうどいいわ。私の質問に答えなさい。拒否するならこの人体大幅欠損器具『KILL-1430』で手足を切断するわ。安らかに死ぬか、苦しみながら死ぬか選ばせて上げる。貴方はどちらを選ぶかしら」


 まくし立てるニノ宮に、敵はガクガクと首を縦に振る。いくらテロリストでも所詮人だ。選ぶ物は決まっている。


「じゃあ質問よ。貴方達は、何の目的でこの学校に来たの?」


 ニノ宮の質問に、敵は震える声で答える。


「あ、ある人物を、殺すために」


「誰の命令で?」


「ボ、ボスと呼ばれているお方だ。俺はそれ以上は知らない」


「そう。で、殺す相手は誰なの?」


 ニノ宮がついに核心に触れた。すると、今まで怯えていたテロリストが、ガタガタと震え始める。


「そ、それだけは、駄目だ」


「え?」


「い、言ったら、殺される。ボスは強いんだ、最強なんだ。お、お前らなんかじゃ、あ、相手にならない。裏切ったら、殺される」


 言語が支離滅裂だ。ニノ宮はため息を吐いた。


「安心なさい。裏切っても裏切らなくても、今ここで殺して上げるから」


 そう言ってチェーンソーを振り上げる。敵が短い悲鳴を上げる。


「ーーーッ!」


 振り下ろされたチェーンソーが敵の頭に突き刺さるーーー寸前で、ニノ宮は手を止めた。チェーンソーが、敵の覆面の上部を切り裂いていく。


「冗談よ。流石に私も、バラバラの死体なんて見たくないもの。ーーーってもう聞いてないか」


 敵は既に、気絶していた。


 ニノ宮はチェーンソーを鞄の中にしまうと、姫香の方に振り返った。


「じゃあ行きましょうか、姫香ちゃん。ここに居ても面白くないし」


 ーーー鬼だ!


 姫香は若干引きつった笑みを浮かべて、頷いた。

 



次回は12月2日更新予定です。

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