第12話 そんなママは天邪鬼。
「え。いいの?」
「うん。わたしはちょっと気が進まないけれど、秋桜が駄々をこねるし……」
そっか。ほんとはイヤなのか……。
俺は舞い上がって空回りしてるのかも。
腰にタオルを巻いて中に入ると、2人は浴槽の中にいた。「浴槽ではタオル禁止」という貼り紙があって、舞雪さんは全裸のようだ。
揺れる水面越しに、舞雪さんの白い裸体がユラユラと映り込む。
屈折で歪んではいるが、色々なものが見えている気がする。ピンクだったり黒だったり。どの色がどのパーツに対応するのか、俺の頭の中はジグゾーパズル状態だった。
やばい、下半身が……。
無駄にやる気になっている。
すると、秋桜ちゃんが走ってきて、俺のタオルにぶら下がった。タオルをもぎとり、キャハハと走り去った。
俺のタオルがなくなった場所には、ピョンと見えてはいけないモノが現れた。
秋桜ちゃんは、遠くで笑ってる。
舞雪さんは、めっちゃ見てる。
一瞬、視線を逸らしたが、チラチラ見ている。
俺は背を向けると、そのまま浴槽に入った。
夜の雪山に月光が当たっている。冠雪した山頂が青白く映し出され、まるで暗闇の中に雪だけが浮かび上がっているようだった。
3人で湯に浸かってると、親子になったみたいに感じた。しみじみと景色を見ていると、秋桜ちゃんが言った。
「パパとママ、おてて繋いでないっ。ダメっ」
秋桜ちゃんが、俺と舞雪さんの手を近づける。
俺と舞雪さんは、お湯の中で恋人繋ぎした。
「あのね。わたし、……秋桜と旅行くるの初めて」
「え。そんなのに俺がいても良かったの?」
舞雪さんは、手にギュッと力を入れた。
「3人でこれたから……、もっと嬉しい。わたし、この月も山も忘れない……よ」
でも、さっきイヤそうな顔された。
「でも、さっきお風呂イヤそうだった」
すると、舞雪さんは少しビックリした顔をした。
「ごめん。……が、イヤだった……の」
「えっ?」
「子供産んでるし、きっと同い年くらいの他の子より身体綺麗じゃないし。恥ずかしかったの……」
「そんな訳ない。あのね、ずっとただのお隣さんだったのに信じてもらえないかもだけど……、俺、舞雪さんのこと」
すると、目の前で、すてーんと秋桜ちゃんが派手にひっくり返った。
「こすもすっ!!」
舞雪さんが、湯船から飛び出した。
すると、白いのもピンクのも黒いのも全部見えた。俺の頭の中で急速にジグゾーパズルが完成する。
正直、すごく綺麗な身体だった。
舞雪さんは、秋桜ちゃんを起き上がらせると、またお湯に浸かった。
「……みた?」
俺は首をブンブンと横に振った。
でも、これだけは伝えないと。
「綺麗な身体でした」
すると、舞雪さんはぷーっと頬を膨らませて、俺の太ももをつねった。
「見てるじゃん。隼人くんのエッチ」
俺は頭を掻いた。
「秋桜ちゃん、怪我してない?」
そう聞くと秋桜ちゃんは元気に答えた。
「こすもすも、早くお毛毛はえたいーっ。早く大人になって、ママみたいにお股にお毛毛はえたいのーっ」
「ぷっ」
やべっ。
思わずウケてしまった。
舞雪さんは……、涙目で俺を睨んでいる。




