メンズブラ7〜よその家のバナナってちょっと抵抗ある〜
リリアの元に、最近他の女性と挙式を上げた元婚約者のランドロフ卿が訪ねてきた。
「自分の下着も作って欲しい」
ランドロフ卿のまさかの発言に、リリアは耳を疑った。
そして、なんやかんやで、依頼を引き受けることになったリリア達。
しかし、メンズブラに関して、何も情報がない。
少しでも情報を得るために、現世とコンタクトをとる必要があると考えたリリアは、黒魔術師を頼ることに。
案内された黒魔術師の家は、まさかの『はじめてのお客様』であり、ファーストブラを提供したフローレンスであり、黒魔術師はフローレンスの母のイザベラだった。
家の裏側へと出ると、すぐ近くに泉があった。
フローレンスが窓から興味津々な様子でこちらを覗き込んでいる。
「異世界との交信なんで滅多にやらないから、フローレンスに見せてもよろしいかしら?」
「えぇ、かまいません」
断っても、どうせ隠れて見ているのだろうし。
「フローレンス、こちらに!」
母から名前を呼ばれて、フローレンスは瞳をぱぁっと輝かせながらやって来た。
「異世界との交信なんて流石です!ひょっとして、恋人だったり?」
キャー、とフローレンスは一人で盛り上がっているが、残念ながらいない歴イコール年齢の哀しき独身女性である。
向こうの世界の私は、加えて貧乏で社畜でアラサー。こっちの世界の方が多少マシな気もする。
そう思うと、なんだか悲しくなってきた。
「フローレンス、静かになさい」
「ご、ごめんなさい」
イザベラから嗜められ、フローレンスはしゅんと萎れた。
「……いいわ、アレを持ってきなさい」
「はい!」
イザベラの指示でフローレンスは家の中から紙で包まれた何かを持ってきた。
こほん、とイザベラが咳払いを一つして、仕切り直し。
「それでは、儀式を始めます。こちらを……」
そう言って、イザベラが紙包みを開くと、中から黒い果実が出てきた。
黒魔術っぽい……!
感動したのも束の間、よく見るとおかしな点ばかり。
見覚えのある、手で持ったらしっくりきそうな曲線が特徴的なフォルム。
バキッと一本折って渡されたのは、黒いバナナだった。
「こ、これをどうすれば……」
「食べてください」
そりゃそうか。持って踊るわけにもいかないし。
皮を剥くと、おなじみの白い果肉が現れた。
パクリと一口。特段甘いわけでもなく、おかしな味がするわけでもない。めちゃくちゃ普通のバナナだ。
「食べましたけど……何か特別な効果があるバナナなのですか?」
「いえ、ごくごく普通のバナナです。ちょっと時間が経って黒くなったけど、まぁ食べられなくはないかなって感じの」
まさにそれ。もはや、それでしかない。
「お隣からたくさん頂いたので、腹ごしらえに」
「儀式関係ないんかい」
「黒魔術ですから。黒いものが出てきた方がテンション上がるでしょう?」
「ごめんなさいリリア様。これお客様が来た時にやる、お母さんのつかみネタなんです」
「緊張が解れると評判です」
そのつかみネタは面倒くさいから今すぐやめた方がいい。
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