オネエ伯爵と彼に嫁いだ学園で魔女と呼ばれていた男爵家の合法ロリで寡黙気味な私
それからの私はよく働いた。といっても指示を出す方が多かったような気もするが。
まず作りかけだったトランプ。これを大量生産して販売した。木材から作ったにしてはかなり薄く、シャッフルするのにも困らないくらい質がよかったのは嬉しい誤算だ。
次に手を出したのがメダルだ。魔力のこもったダンジョン産の石で作られた石貨。重さ、大きさを一定にするという手間のかかった一品。なんでそんな面倒な事してるかというと、カジノはちょっと作るのに抵抗があったから大きいメダルゲームセンターみたいなのを作りたいなと思って。
で、そうなると娯楽の数以上にとにかく数がいるものだから早めのうちに準備してもらった。
そのあとはゴーレム作りの基礎をガリィから学び、疑似的な機械のようなものを作り出した。とはいっても簡単な動きをするくらいのものしか出来ていない。これでプッシャーゲーム……メダルを入れるとメダルが押されて落ちてくるやつを作ったりした。
そんなものを生産し始めたともなれば当然場所も必要で。領地の空いてるところに大き目のゲームセンターを作っていいと許可を貰った。
ここにまずトランプで遊ぶためのテーブルを多めに作った。
そもそもトランプを流行らせる為に簡単な神経衰弱から始め、大富豪のローカルルールを出来る限り削除したルールのものやスピード、インディアンポーカー、ブラックジャックなどを領内に広めたのだ。
それで、あちこちでトランプに興じる人が出始めたところで遊び場としてメダルゲームセンターを提供する。
メダルは買ってもらう必要があるため、だったら直接金かけて遊ぶわ。という人も引き入れたい。そこで、メダル百枚で特別なメダルと交換できるようにした。これを使うとゴーレム技術を使って作ったクレーンゲームで遊ぶことができ、景品は現ナマ。といっても最低限の価値の鉄貨である。
これをゴーレムハンドを操作して握って、持ってくればそのままお財布に入れられるよ。という現金なゲームだ。
これによって、メダルの購入という低リスクで鉄貨を握ってゲットという低リターンな遊びの完成だ。現金クレーンゲームをやりたいお客さんはメダルを賭けて遊ぶ相手を探してくれるだろうからトランプゲームの対戦相手役として頑張ってくれる。
ソロで遊びたい人にはさっきも話したプッシャーゲームを用意したわけだ。
さて、工夫した点についてもうちょっと話をしたい。この広いゲームセンター、現金とメダル、通常メダルを百枚メダルと交換する人しか人材がいない。
トランプで遊べるといっても、広く場所を取った屋内というだけであり、あとはルールブックをいくつか用意させてもらった程度。ディーラーなんかはいない。カジノではないからね。
だから健全にお客さん同士でメダルを賭け合って勝負してもらう事に特化している。とはいえ、お金を賭ける人も出てくるだろう。だが、それも容認する。トラブルさえ起こさなければ自由に遊んで欲しい。
トラブル起こしたら? ほぼハコだけとはいえ貴族の建物でそれやる奴はまずいない。いるなら私の魔法で事情を聴いて処分する。
そもそも貴族とは守護者なのだ。魔物から民を守り、領地を繁栄させる者。その代わりに税を払ってもらっている。上位存在といってもいい。
それに対して面子を潰すような真似して生きてられると思うなよ、という話である。
話が逸れた。で、結局たくさんのテーブルとメダル交換所。プッシャーゲームとクレーンゲームくらいしかないメダルゲームセンターが流行ったのか? という話。
流行った。大流行。クレーンゲームに大当たりとして銀貨数枚入れといただけで、いやあクレーンゲームが流行った流行った。
クレーンゲームのために大量のメダルが必要になるため可能な限り少ないメダルで、他の参加者が銀貨を取るよりも早く、たくさんのメダルを集めようと必死にゲームをするもんだから、いわゆるガチ勢がしのぎを削るようになった。
テーブルたくさん用意しておいてよかったよ。今では早くメダルを集めたいガチ勢用テーブルと普通に遊びたいエンジョイ勢用のテーブルに分かれてるくらい。
とはいえ、たまにエンジョイ勢からメダルをかき集めようとガチ勢プレイヤーがやってきたりする。とはいえまだまだ熟していない遊びだ。ガチといっても運だけで勝負はいくらでも覆る。
逆に、メダルどころか何も賭けない様な人もいるのだが、これも良しとする。なぜならこういう人達も酒類なんかを持ち込んだりするからだ。
貴族としては自分の商売はともかく、自領で行われる商売というのは大事である。酒やおつまみを買って持ち込んでくれる分には間接的に金を使っているという事である。
なにより、娯楽というものは楽しむほど刺激が欲しくなってくるという部分もある。潜在的な客を逃すつもりもない。
「……という報告」
ダンスパーティから約一年。この領地は芸術と娯楽、ゴーレムの都と呼ばれるようになっていた。
メダルゲームセンターは観光地として有名になり、あちこちから客が来るようになっていた。
なんなら清貧を良しとする治癒士、それも公爵家の三男までくる始末だ。
「はぁ、すごいわねえ。でもね、マリー」
「?」
「わざわざ結婚式の日にお仕事の話しなくてもよくないかしら!?」
なるほど。教会に生臭い話もね。とはいえ。
「ガリィの結婚相手がどれほど優秀か教えたかった」
「ありがとうね。でもアタシは別にアンタが優秀じゃなくても愛してるのよ?」
「むふぅ」
「さ、いきましょ。みんなが待ってるわ。誓いの言葉は大丈夫よね?」
「うん」
オネエ伯爵と彼に嫁いだ学園で魔女と呼ばれていた男爵家の合法ロリで寡黙気味な私は幸せになります。
「……やっぱり駄目よ。犯罪臭が凄い」
ガリィとの初夜。彼はヘタレた。私が一年で成長しなかったのがよくなかったのかもしれない。
「ガリィ」
「ええ」
「私の魔法について教える」
「……ああ、そういえばそういう話もあったわね」
結婚したら自分の魔法について教えてもいい、という話だ。
「みんな魔力は自分の中で変換して発動している。例えば炎の槍なら自分の中で炎属性に変換して、槍に形を作って発動する」
「そうね」
「私は自分の魔力を放出している。こうする事で周囲に自分の魔力を展開。私の魔力を吸収した対象は魔力が増加する代わりに私に体内から魔力を操られるようになる」
「なるほど……そうすると操られた相手は体内の魔力を爆発に変換されて一撃ってのがアンタの得意技ね。ダンジョンでよく見たわ」
この一年、一緒にダンジョン潜ったからね。ガリィが自分の身体ほどもある大剣使ってたのは驚いたけど。
「魔力に干渉してるから魔法を使えなく出来るし、脳まで達すれば虚言が吐けなくなるようにできるし、万能」
「あの……マリー?」
腰が引けていたガリィが私に近づいてくる。
「当然、ガリィに私を襲わせる事だってできる」
「まだ! 心の準備が! できてないのよ! ああ~っ!」
こうして私とガリィは無事初夜を済ませましたとさ。おしまい。




