十一月二日之事_____三十二話目
お読みいただきありがとうございます。
応援のモール改修も なんとか担当フロアの逃げを打ち、続いて作業に入った後続の業者でごった返す中で足場を掻い潜り残材を片付けて終了。
今日は泊まって明日ゆっくり帰ります。
ビジネスホテルから会社に作業終了の電話を入れた所 串カツが
「妹ちゃんから電話有りましたよ。仕事来てますか?って。」
こいつ、ちゃっかり思い出してやがる。
「声がすんげえ可愛いっすねえ! 俺、声だけでおかわり三杯イケるっすよ!」
何のおかわりだ。逝ってしまえ、帰ってくるな。と思いつつ電話を切った。
しかし、そうしたら俺が仕事で出張というのはバレている訳だ。
ほんのちょっと仕返ししたかったのだが当てが外れたようでチョイ悔しい。
まあ、そんな事言っても仕方ないので家に電話を入れてみる。
『はいもしもし。加東です。』
「もしもし…」
『あ! お兄ちゃんですか? お兄ちゃん今日はあ!… ガチャガチャ…ちちうえ〜ちc… ガチャッ とーちゃー あ、貴方たちちょっと待って!あ〜ガチャガチャ!』
ツーツーツー。……………………切れた。
まぁ、何となくだけど成功してたっぽいね。
もう一度電話してみるか。
プrガチャッ『お兄ちゃん! 今日は帰って来られるんですよね!』
「あ、稚日? 今日はこっちに泊まって明日帰ろうか「ダーリン、迎えに来たぞ。」と…お?」
後ろからなずなさんが声を掛けて来た。
「瞬間移動ですか? 何でも有りですねえ。」
「ん? これは縮地の法というてな、稲荷やその眷属の得意とする法術じゃ。故にこれは稚日殿は使えぬ。」
なんと!神様にも得手不得手がしっかり存在するんだな。
なんかちょっと安心するのは何故だろう。
「お気持ちは嬉しいんですが 作業車や道具も有るんですよ。 なのでやはり明日帰ります。」
「むう、そうか。では伝えておくべき事だけは言うておく。すずは此度神の位に登った。ぽこも同じう神使と相成った。それで更にすずに弟子が出来ての。居候が一匹増えておる。」
「は?」
「やぁ、伝う可きは伝えて気が楽になったわ。それではダーリン、暫しの別れじゃ。またいずれ邪魔するぞ。」
なずなさんは、そう 言うだけ言って消えてしまった。
ツーツーツー。
電話も切れてしまっていた。
なんか疲れたのでシャワー浴びてから飯食いに出よう。
◆
さあて、迷ったぞ。
ビジネスホテルを出てなんとなく飯屋を探して歩いていたのは良いんだが、今夜で離れる土地だ、ちょっと違う店を探そうとか思ったのが拙かった。
どんどん人気のない方へ行ってしまい、戻ろうにも道がわからない。
人家もない海沿いの山。
暗闇に響く潮騒って引いていく血の気の音みたいでいやだよなー。
俺、なんでこんな所歩いてるんだ?
とうとうまるっきり山の中です。街灯もありません。
虫の音が煩いほどなんだけど俺の周りだけ止まるの。
当たり前なんだろうけど恐怖心煽るから。お願いだからずっと鳴いてて。
鳥居とかあるぞ、おい!
真っ暗闇の鳥居…今とうりゃんせとか流れたら漏らす自信あるわ。
石段を登る…なんでだよ、俺。
おかしいだろ!どう考えても……呼ばれてるのかな〜嫌だな〜。
上がりきると山門……………なんかすんごい威圧感。
闇夜の山門とか…山姥とか出そう。
そんな真っ暗な中、奥の方にぽつんと灯りが見えます。
もうここまでで俺のライフは0よ。
…………どうしようもない。灯りの方に向かって歩く。
社殿…って言うのかな?拝殿?
灯りがついててちょっと安心する。
それにしてもこんな真っ暗で開けっ放しとか……なんかやってるのかな?
ともかく帰り道を聞かないとどうにもならないので声を掛けてみた。
「こんばんは〜。すみませ〜ん。どなたかいらっしゃいます〜?」
「はい。」
人の気配も無い、真っ暗な山の中の神社の境内でいきなり真後ろから声を掛けられる 恐怖。
分かって頂けるだろうか。
俺、多分なんか叫んでたはず。
覚えてない。
「そなたが稚日女尊様の夫になられるお方か。 神をや娶らんとするとは見上げた丈夫振り。一献差し上げたいが如何?」
なんかすごく貫禄のある女性が立っていた。
「え? 稚日のお知り合いですか?」
なんとも間抜けな会話である。
恐怖で叫んだ男のどこいらへんが丈夫なのかと。
「光臨したる稚日女尊様を活田長狭に勧請したのは妾である。」
この方が日本史上最強の女性、神功皇后か……。
実は以前、稚日について色々と調べたのだ。
史上で複数の国家を相手に外征を成し遂げた唯一の成功例。
その帰路で稚日と邂逅し活田の杜に祀ったのがこの方。
なんか断りづらいので御呼ばれする事にした。
「出雲に出仕の折、神々が【 活田の宮から分祀された 稚日女尊様が此度の縁談合にて人の男を夫とした縁を繋ぐ 】と大騒ぎでな。」
ぐい呑を干す神功さん、
「どうにも相手が気になって 呼ばさせてもろうた。」
わはははははは〜とまあ豪快に笑う。
「母がどうもすみません…。」
こちらが息子さんの応神さん……大人し気というか 優し気というか、なんか、周りにすごく流されやすそうな感じに見える。
実は武神として崇められているスゴい神様なのだが……ギャップ萌え?
「妾はずっとあの比売神様が不憫でなあ。どうにかならぬかと思っておった。縁結びを司るにあの男運の無さはもう涙無くしては見て居れぬ。かの泣沢女尊様も「あの姉神様は」と泣いておった程じゃ。」
エラい言われ様である。稚日ガンバレ。お兄ちゃんは応援してるぞ!
「が!もう心配要らぬ。こうして立派なはずばんどが出来たのじゃからな!」
お神酒徳利を三本一気に飲み干し、わはははははは〜わはははははは〜と笑いながら潰れた。
言うに事欠いて はずばんど ときたか。
このおっかさん意外とハイカラであった。
フッと気がつくとホテルの前。
多分応神さんが送ってくれたんだろう。
それにしても、一食浮いたと喜ぶ可きか、外堀が埋められつつあると嘆く可きか。
神功皇后の三韓征伐って一説には西暦200年ごろで時期が邪馬台国と被ってるんですね。
九州北部の方の女酋長の国家を討伐した話も幾らかある様です。
ちょっとドキドキしませんか?




