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10王都に到着

 王都行きの荷馬車に潜り込んで5日目、ヤシロの話では今日中に王都に着くらしい。


 美少女との密着しての旅、それもかなり狭い空間で触れ合うようにジッとしていたのだから精神的にかなりまいっていた。

 ヤシロは気にしてないらし、何でも奴隷の時にもさらにきつい同じような体験をしたそうだ。

 

 途中の休憩で何度か外に出たが、それでも早く自由になりたかった。


 (唯一の幸運はこんな環境でもヤシロと親しくなれたことか!)


 最初の出会いがアレだったため、

 お互いにぎこちない仲だったが、

 普通なら身の危険や忌避感を感じるほどの空間で、

 彼女は俺を疑わないどころか気を遣ってくれたりした。


 (これが『理香』なら俺は殺されてたなぁ!)


 かつての彼女の恐ろしさを思い出して軽く身震いがした。


 「セイ?大丈夫?震えてるけど……」

 「いや、昔の……知人を思い出して」


 彼女とは言えない。もう2年も会ってないのだから、


 「そう?具合が悪いなら言ってね!」

 「あ、ああ、ありがとうヤシロ……」


 本当に優しい少女だな、それでもこんな世界じゃ救われないかぁ…


 だいぶ、王都に近づいてきたためか外から入ってくる風が涼しくなってきた。

 あと少しで、この荷馬車から解放される。

 そう思うと嬉しい反面、少しヤシロとの密着がなくなるのは残念という気持ちが湧くが、それは封殺した。


 (ハァー、俺も思春期の高校男子なのか……彼女がいなくなってから女子と関わらなかったからなぁー)


 自己嫌悪しているとヤシロが話しかけてきた。


 「ねぇ、セイは王都でどうするの?」

 「とりあえず、ヤシロの拠点を探して、その後、シンが行く魔法学園に向かおうと思ってる」


 まあ、アイツの話ならすぐに見つかるらしいから大丈夫だろ、


 「そっか…セイは魔法が使えるんだよね?」

 「まあ、そうだけど……多分この世界でも特殊な方だと思う…」

 「特殊?」

 「そもそも、この世界で魔法って何なんだ?」


 そう、俺が知ってるのは『親父』から習った魔法にあの影の少女から貰った力を合わせたものだ。

結果かなり強力な魔法になったが、正直まだ手に余るほどの力なので使いこなせていない。

 なら、この世界の魔法はどういったものなのか?


 「私も魔法は使えないからなぁー、これかれ行く魔法学園で調べてみたら?」

 「ああ、その予定だ!」

 「それで、セイはどんな魔法が使えるの!

 私の背中の傷を直してくれたのもセイの魔法でしょ?

 後、遠くにいたシンを見たのも!!」

 「少し落ち着け!!!」


 魔法の話で興奮してるのか、ヤシロは狭い空間でこちらに身を乗り出してくる。

 体ややや小ぶりな胸などが当たり、内心で慌てる。


 「あ、ゴメンゴメン!!」

 「ハァー、パーソナルスペースが近いと言うか、無防備と言うか……まあ、魔法の基本から説明しようか?」

 

 親しくなるのも考えものだな、そん思いながらも説明を始める。


 「魔法とは、呼んで字のごとく『魔の法』でこの世の法則を無視した神秘的な、不思議な現象を起こすものだ」


 例えば炎の剣を出したり、

 例えば姿を風景に同化されたり、

 例えば偽物を作り本来のものの代用にしたり、


 「ありえない手法で、あり得る結果を生み出す。それこそ様々な魔法があるが、俺が習った時の説明は魔法は大きく分けて3種類ある」

 

 造物系:魔法により何かに形や質量を持たせる魔法。炎を剣の形にしたり、水を鳥のよう動かしある程度の意志も与えることも可能。


 現象系:本来ならありえない結果を起こす魔法。何もない空間から炎が急に出てきたり、ありえないほどの高温や爆発を起ことも可能。


 固有系:とある条件下で独自の法則を作り上げる魔法。例えば相手が憎いほど攻撃力が上がったり、ダメージを負うほど魔法の威力が上がることが可能。


 「この三つだな!まあその他とかあるらしいけど、俺がしてるのはこれだ!」


 そう、親父から習い、必死になって習得したものだ。


 「それで、それらの3種類を自分に合った属性で公使することが出来るのが魔法使いってわけだ!」

 「ふーん、セイはどんな属性なの?炎とか水みたいな分かりやすいのじゃないたいだけど?」

 「俺は『嘘』だ、『虚偽』の魔法って呼んでる」

 「『虚偽』?」

 「そう、真実をねじ曲げたり、無かった事を現実にする」

 「それってすごいんじゃ!!」

 「所詮は嘘、本来の力には勝てない」


 そう、大した魔法では無かった。人の目を誤魔化す程度の魔法はあの影の少女により現実にまで作用するようになった。

 しかし、それでも本物に勝てるだけの力があるかは微妙である。


 (あの第一王子を見た時に感じたプレッシャー、あれはきっと偽物で簡単に勝てる相手じゃない)


 『偽眼』越しとはいえ、アレと視線を交わしただけで力の大きさを感じられた。

 あんなのとやり合わなければいけないとは、


 「さて、シンの他の兄弟はどんなものかな?」


 それでも、あの影の少女と比べればかわいいものだ。

 何より諦めるつもりはないのだ、

 そうしているうちに、外が騒がしくなってきた。


 「そろそろ到着みたい!」

 「ああ、ようやくこんな狭い場所から解放される♪」


 荷馬車が止まり城門の内側に入る。

 俺たちはそっと抜け出して、街の中に入る。

 そこにはレンガでできた歩道に西洋風の建物が並ぶ、まさにファンタジーの世界だった。


 「流石は王都だな!」

 「うん、前にも来たけどすごいね!!」


 そして、中央にある巨大な城、あれがこの国の中心、あそこに王を決める神剣があるのか!


 「多分、あそこが魔法学園だよ」


 ヤシロが指さす方向に、城より一回り小さいが立派な建物がある。

 巨大な時計塔と四つの塔が連なる建物、


 「あれが、魔法学園か!!」


 ここで、アイツの、シンの、王の道を切り開く、そう決意を固めた。

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