最終話 ~赤い糸の行方~
とうとうこの日がやって来た。
「紬、おめでとう。これで十万円貯まったね」
命さんは茶封筒を私に手渡す。
「はい」
「縁結びの赤い糸、買うかい?」
私は命さんの問いかけに首を横に振る。
「いいえ」
「もう、大切なものはわかったみたいだね」
命さんは笑う。
「命さん、私に教える為に十万なんてふっかけてここで働かせたんでしょう? お客さんにも感想なんて言って」
「どうだろうね」
命さんはまた誤魔化す。
「さて、君はもう自由だよ。どこへなりとも行きなさい」
「命さん」
「なんだい?」
私は息を吸い込んで言う。
「私、命さんの事が好きです」
命さんは笑みを少し引っ込めて言う。
「私は神で君は人だ。その覚悟はあるかい?」
「覚悟……」
覚悟なんて……。
「無いです!」
「そんなにきっぱり」
命さんは呆れていた。
「だから覚悟できるまでここで働かせてください!」
命さんは目を見開く。そしてまた穏やかに笑う。
「良い心意気だ」
そしてぼそりと。
「今度は離さないよ」
「え」
命さんはにっこり笑う。
「覚悟しなさい」
「え、あ、はい……」
「なんだかあの人、最近生き生きしてるね」
「僕、将来陸上選手になる!」
「みゆ、応援してるよ!」
「最近の調子はどうですか?」
「よく眠れる様になってきました」
「親父! 早く、早く!」
「博物館は逃げないよ」
「フラれちゃった~……」
「告白しただけで偉いよ」
「まあ……赤点ではないからギリセーフかな」
「やった~!!」
この世界では神は身近な存在。あなたのそばにもあるかもしれない。『神様のなんでも屋』が。




