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第1話 ~始まりの赤い糸~

 この世界では神は身近な存在。人々の生活に溶け込み、共に暮らしている。

 これは、そんな神様の不思議なお店のお話。


「ごめん。春日(かすが)の事はそういう風に思えねぇわ」

「……そっ……か……」

「じゃ」

 こうして私の青春の恋は敗れ去った。


「はぁ……」

 私は帰路をとぼとぼと歩いていた。考えているのはやはり今日の告白の事。

「(諦めるしかないのかぁ……。でも諦めきれないんだよぉ……。そんなすっぱり諦められたら好きになってない……ん?)」

 『神様のなんでも屋』

 そんな看板が目に入った。アンティークショップと骨董品屋を足して二で割った様な和洋折衷な建物に看板が掛かっている。

「(そういえば、この地域に昔からこんな店あったなぁ。なんでも神様が店主だとか。不思議と入る気にはならなかったけど……)」

 けど、今は何故かとても気になる。私は店の扉をそっと開けた。カランカランとドアベルの音が鳴る。

「いらっしゃい、神様のなんでも屋へ」

 そう言ったのはカウンターの奥にいる青年。

 白い髪に色白の肌、白い和服。金色の瞳に金色の袴。もしかしたら神様なのかもしれない。なんとなくそういう雰囲気を感じた。

 店内を見回してみるといろんな物が置いてあるが、骨董品に見える物もあれば、普通の日用品に見える物もある。

「何か御入り用かい?」

 青年はにこにこと手を組んで私に聞く。

「え、えーっと……ここってどういうお店ですか?」

 御入り用と言われても何の店かわからなければなんとも言えない。

 青年は笑顔を崩さず答える。

「ここは人々の願いを叶える物を売る店さ。神の僕が店主をやっている」

「だから神様のなんでも屋……」

「そう」

 青年こと神様は相変わらず笑顔だ。

「それで、君の願いはなんだい?」

 願い……それは……もちろん……。

「好きな人と両想いになれる物とかないですかね……? 一回フラれてもチャンスがあるくらい……」

 私は両手の人差し指をつんつんと突き合わせる。

「あるよ」

「あるの!?」

 私は思わず声を上げた。

 私のいきなりの大声に驚きもせず、神様はずらりと物が並ぶ棚から一本の赤い糸を摘まんだ。三十センチくらいあるだろうか。

 神様はカウンターに戻ると、ちょいちょいと手招きをする。私はカウンターに近付いた。

「縁結びの赤い糸。これを小指に結べば想い人と結ばれる」

 まさに私が望んでいた物……!

「ください!」

「じゃあ十万円」

「……十?」

 神様はにこにこと手を差し出す。

「この商品の値段だよ」

「え、十、十、十万……?」

 あまりの大金に私は思考停止する。

「ここは『店』だ。商品には値段がある。当然だろう?」

「も、もう少しお安く……」

「ならないね」

 神様は変わらずにこにこと笑っている。

 正直商品はとても欲しい。喉から手が出るくらいに。けれど十万だ。女子高生に十万なんて大金持って無い。

 私は肩を落として踵を返す。

「帰ります……」

「ならこうしよう」

「ん?」

 私は神様の言葉に振り返った。

「君にここで働いてもらう。給料を払うからそのお金でこれを購入すればいい」

「働くって何をすれば……?」

「ちょうど掃除係が欲しかったところだ」

 掃除なら私にもできるかも……。なら……。

「働きます!」

 神様はにっこり笑う。

「契約成立だ。僕の名前は命(みこと)。好きに呼んでくれたまえ。君は?」

「春日 紬(つむぎ)です」

「これからよろしくね、紬」

 こうして、私の少し不思議な日常が始まったのだった。

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