1章「新たな人生のスタートライン」
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第1章です!
個人作です。
裏路地から見える少しの隙間からの空は、昨日とは打って変わって青々としていた
本通りからの、少し、ほんの少しのパンの匂いで少年は目を覚ます
「あれ、なんでここに?あぁそっか追い出されたんだった……」
少年は周りを見る、人形はまだ、居てくれていた、良かった、と安堵の息をもらし、聞いた「君、起きてる?」と
{ずっと、起きてた}
「あ、君は人形だから寝れないか……ごめんこんなこと聞いて」
わたしは人形だから寝れるわけないじゃない、何をいってるのかな、この子
「聞きたいことがあるんだけれど、どうして君は僕の頭の中に語りかけられるんだい?」
わたしが、分からない、と返事をすると少年は少し残念そうにして、気まずかったのか話をそらした
「あ、ところで君は夜中どうしてたの?」
{夜中?}
人形は少年のその問いに夜中のことを思い出す
傍で踞って寝ている少年を見ながら人形は物思いに耽っていた。
この子はどこから来たのかな?「君も棄てられたのか」って言っていたけど、この子も居場所を失くしたのかな?
それに、なんでわたし感情が戻ったのだろう?もう、朽ちるまでただ存在しているだけのつもりだったのに、この子の声に呼び起こされた、それになにか温かい?ような感じがする……
思い返していると、少年が呼びかけてくる
「その……夜中の事、言いたくないならいわなくてもいいよ?」
{なら、言いたくない}
そう、わたしが返事をすると少年は少し悲しさの残る笑顔で、わかった、と返事を返した
{……ないの?}
少年は聞き取れなかったようで、聞き直した
「ごめん、今何て言ったの?」
意思があって喋る人形を前にして、どうして笑っていられるの……
{あなたはわたしの事、不気味……だと思わないの?!}
人形は感情が昂りつい強く言ってしまった、だが少年は少し微笑み言う
「たしかに人形が喋るっていうのは本でも見たことがない、だけどね、君は全然不気味じゃない。それに、悪いひとではなさそうだからね」
言葉に少し引っ掛かりを感じたが、不気味じゃないというその言葉に心?が温かくなった
{……そう}
「あ、君はここに来る前はどこにいたの?」
ここに来る前?……あれ、覚えてない
{分からない……わたし、何者?}
「え!人形さん記憶喪失?!」
っ……驚くじゃない、大きな声出さないでよ
{うるさい}
「あ、ごめん大声だして。人形さん、記憶を失くしてしまったの?」
ここには長い間いてそれより前、前……やっぱり覚えてない
{どうしよう}
「他に、なにか覚えてることはある?」
人形は、唯一憶えている言葉があるのを思い出した
{君を大切にしてくれる人がきっと現れる}
「誰が、その言葉を言ったの?」
誰かは忘れてしまったけど……
{分からない……けど、大切な人だったと思う}
「そっか」
人形は少年に疑問を投げかけた
{あなたは……}
「ん?なに、人形さん」
{居場所、どうして、なくなったの?}
人形のその問いを聞いて、少年はどこか気遣わしげな顔をした
{言いたくないなら、いわなくてもいいわ}
「ううん、聞いてくれてありがとう、ずっと誰かに話したいと思ってたんだ」
少年は辛かった日々を思い出した……
僕が五歳の頃、お母様が亡くなって、しばらくした頃家に新しいお義母様が来た、その人は僕を愛して……はくれなかった。
「私の視界に入らないでって言っているでしょう!」
そう義母が洋扇で少年を叩き、怒鳴りつける
「ごめんなさい!カリアお義母様」
「不吉なお前にお義母様などと言われなくないわ!」
義母がキッとした目つきで少年を睨む
「僕は不吉じゃないよ……」
少年は義母に怯えながらも小さく反論した
「その白髪に金色の瞳、どこが不吉じゃないというの!前妻の人にもラキオス様とも違うじゃない!本当にラキオス様の子なの?」
母親を悪く言われ、少年は激情に駆られ反論した
「リーシェお母様を悪く言うな!僕はちゃんとお母様とお父様の子だ!」
義母と言い争っていると、ふと左の廊下を歩いている父親が少年の視界に入った
「助けて、お父様!」
父親は少し少年を見ただけですぐに行ってしまった
「そんな」
洋扇がバシッと少年の頬に再度当たる
「助けを求める権利はあるのかしら?この家の子かも分からないのに……さっさと私の視界から消えなさい!」
そんな……僕の意見を全く聞いてくれない。反論は、意味がないのかな
「分かりました、視界に入らないよう気を付けます……」
そう言い少年はとぼとぼと部屋に戻って行く
そして、つい昨日唐突にショックな事を言われた
「お前は今日をもってこの家から出ていけ!」
そう父親が言った
「どうしてですか!ここにはお母様との思い出ががいっぱい詰まっているのに!」
「リーシェ亡き今、実の子とも分からんやつを家に置いておけるか!」
「待って、お父様!」
少年の言葉は虚しく家の門は閉じられ、勘当された
「ひどい、これからどうすれば?」
……もしかして僕が今日成人したから?
本当に追い出しても問題ないと思っているのか!
そういえばお義母様、あの場にいなかった、僕を嘲笑いに来てもおかしくないのに……まずい!あの人のことだ赤の他人になった僕を見つけたら何をしてくるか!
「逃げないと!」
少年は家での事を語り終え、涙を拭う
「話せて良かったよ、ありがとう、少しすっきりした」
{そう}
「もっとあのお母様との思い出が詰まった家にいたかった……」
{だろうね}
「容赦なく追い出されてしまったから……まぁ、お母様の写真が入ったロケットを持ち出せただけ良いと思うことにしたよ」
母親の写真がロケット?に、ロケットが何か分からないわ……
{なに?それ}
「これはね、中に写真やメッセージを入れることができるペンダントのことだよ」
こんなに小さな物の中に写真があるの?
{すごいのね}
少年がこの人が僕のお母様だよ、とロケットを開けて見せた
中にある写真には、ミントグリーンの髪に茶色の瞳の女性が椅子に座って笑っていた
{優しかったのね}
「人形さん、君どうして知っているの?!」
たしかに……なんで、あれ?この人、見たことある、ような?
{見たことがあるような、気がするけど……わかんない}
少年は、そうか記憶喪失なんだもんね……と呟いた
少しした後少年はどこか吹っ切れたように聞く
「勘当されてしまったしこれからどうしよう、旅にでも出ようか?」
{旅?}
「人形さんが僕と同じで行く当てがないならだけど、一緒に居場所を探す旅に出るのは、どう?」
少年は続けて、人形さんのその違和感の理由が分かるかもしれないから、と色んな所を回ろうと提案してきた
{ついてく}
旅……それも、良いかも知れないわね、記憶、思い出せるといいな
「一緒に旅してくれる?ありがとう人形さん」
少年は、人形が旅についてきてくれると知り嬉しそうに、へへっ、と微笑んだ
「これからどこに向かおうか?僕はこの街から一刻も早く出たいと思ってるんだけど……お義母様に見つかったらなにされるか分からないし」
そうね、たしかに早く離れるのが良いかも。せっかく出会えた同じような境遇の子だもの、いなくなるのはわたしも嫌だわ
{なら、早く出ましょう}
「そうだね」
少年は少しだけ待って、と人形の周囲にある物の山を漁り何かを探している、しばらくした後少年はそれを見つけたようだ
「あった」
{布?}
少年は物の山から体全体を覆い尽くせるような大きさの布を見つけた、その布で即席のフード付きマントを作り出し、見せてきた
「できた」
どうして綺麗なのに隠すのかな?
{なんで隠すの?}
「顔と髪を隠せないと怖いし、もしお義母様に見つかったらまずいから」
{そう……}
「ところでなんだけど、人形さんは僕が持つ感じで良い?」
{えぇ}
少年はマントを被り、人形を腕に座らせるように持った
「あ、君の関節、球体関節っていうやつなんだね」
球体関節?あぁ、丸い関節のこと?そんなに興味深いものかな
{そんなに重要なこと?}
「あぁごめんごめん」と少年は頭を掻き、気を取り直し自分に、自分達に宣言する
「もう二度とあんな思いはしない、苦しい過去も乗り越えてみせる。ここからが、僕たちの新たな人生のスタートだ!」
{ふふ、そうね、新たな人生……良い響きだわ}
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