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精霊契約と本当の名前?

幻想=〇〇

 フラウの姿からクラリスの姿に戻った私は、矢継ぎ早にあれこれ聞いてくるフラウの口にお菓子を詰め込んで落ち着かせると、彼女の問いに答えていく。


「どうして私があなたの――――しかも精霊としての力を使えるのかだけど、簡潔に言ってしまえばこれが私の力だからだよ」

「おねーさんの力ー?」

「うん。他人の姿や力を模倣してこの身に宿す力。この世の唯一無二を否定する力」

「えっ? なにそれ? すごーい!」


 私の説明にフラウは目を輝かせてはしゃいでいる。

 確かにそうだ。

 この力はすごい。

 けれど私はその力をまだ十全に使い込ませてはいないはずだ。


「フラウから見て私はどれくらい力を使えていた?」


「どうだろう? おねーさんとは精霊契約を交わしたわけじゃないからちゃんとは分からないけど、相性が普通の人くらいの力は使えていたんじゃないかな?」


 それを聞いた私はなら良かったと胸を撫で下ろした。

 これでこれっぽっちも使えてないなどと言われた日にはコピー元のフラウにも、クラリスにも申し訳ない気持ちでいっぱいになるだろう。

 それだけこの裏ボスは様々なキャラをパクり、プレイヤー()を翻弄したのだから。


 だが、これでひとまず家から出ても問題ないだろう。

 さっきまでの私は一般人に操作性が難しいゲームのコントローラーを握らせたくらい無力だったけど、今の私は説明書をしっかり読み込んだ中級者くらいの力はあるはずだ。

 フラウの力がこの迷いの森でどれほど通用するかは分からないが、為せば成るの精神で何とか頑張ってみようと思う。


「じゃあ森から出るの、私も手伝うよ。フラウよりは地理に詳しい……はずだし」

「えっ? 一緒に来てくれるの? 嬉しいな!」

「私もフラウが一緒だと心強いよ」


 これも嘘じゃない。

 彼女は自分で精霊の格が高くないと言っているが、私はそうは思わない。

 迷いの森の摩訶不思議な環境ではフラウも力を発揮しきれないのか、迷子というその姿に見合ったかわいらしい状況に陥っているが、精霊がそばに居てくれるのは非常に安心できる。


「ねえ……フラウ。私と契約するつもりはある?」


 このやり取りはかつて何度も行った。

 ある条件を満たしてから彼女に契約の話を持ちかけると彼女は契約に乗って契約精霊になってくれる。


 その条件とは風属性における熟練度。

 それが精霊との相性の度合いを示す数値で、その数値が高ければ高いほど精霊は力を増し、契約した者も引き出せる力の上限が上がる。


 ゲームの主人公であり私が動かしていた勇者様は全ての属性に愛されているチートな存在だったため、フラウと契約する条件は実質なかったりするのだが、その対極に位置する私はどうだろう。

 きっと私は全ての属性に愛されていない。

 無色という特性上、普通に契約を持ちかけてもフラウと契約はおそらくできない。


 だけど、今の私はフラウと同じ色に染まっている。

 同一レベルの色ならば、相性だって悪くないはず。


「いいよ! 私も見ず知らずの私に親切にしてくれたおねーさんが好きだし、私のことを精霊だと知ってても無理やり契約を迫ることもしないし、おねーさんなら私、断らないよ」


 そんな私の心配も他所に、フラウ快く承諾してくれた。

 つまり私のことを認めてくれていてかつ相性的にも問題がないのだろう。


 私の初めて仲間はフラウに決まった。

 またここでも力を借りることになるなんて、本当にお世話になりっぱなしだ。


 フラウが契約、契約とはしゃいでいる様子を見て私は大切なことを思い出した。

 精霊契約には名前が必要だ。

 私はフラウのことを一方的に知っていたから自己紹介するのを忘れてしまっていたが、ここで問題が発生する。

 私はどちらの名前を名乗ればいいのだろう。


 この身体、姿形はクラリス・ノワールで間違いない。でも、私は如月瑠那だ。

 精霊契約に偽名は通用しないから、私が嘘をついたってなったらフラウも仲間になってくれないかもしれない。

 とそんなことを考えていいると、


「そういえばおねーさんの名前、、まだ聞いてないや。なんていうのおねーさん?」


 フラウは絶賛お悩み中の質問を投げかけてきた。

 私は上擦った声を上げ、どうしようと考える。

 如月瑠那と名乗るか、クラリス・ノワールと名乗るか。

 焦りを含んだ頭をグルグルと回して導き出した答えは――――


「ルナ・ノワール……?」


 前世での名前に現世で苗字が合体したものだった。

 あれ、なにかがおかしいと気付いて訂正しようとしたのだが、もうすでに遅くきょとんとしたのちににっこりと笑うフラウと私達の身体が淡い緑色の光に包まれているのが確認できた。


「いい名前だね。これからよろしく、ルナおねーさん」


 フラウの言葉に頭が追い付いた時、左手の甲に優しいぬくもりを感じた。

 そこにはフラウと契約した際に刻まれる風のような契約紋が確かにあった。


 ――――これからよろしく、ルナおねーさん――――


 フラウの言葉。

 何事もなく刻まれた契約紋。


 私、如月瑠那はこの世界でルナ・ノワールとなってしまいました。


何度もあとがきにて大変恐縮ですが、ブックマーク、感想、レビュー、ポイント評価等の応援よろしくお願いしますm(*_ _)m


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