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第十八話 かあちゃんはリベンジする

本日、二話更新しています。

これは二話目です。


お昼に更新した分からお読みください。


 さてさて、お昼ですな。

 ふっふっふっ。


 怪しいと言うなかれ。

 笑いがこぼれてしまうからには訳があるのだ。


 広場での話し合いの前に、私は一つ仕込んでいた。


 まず、初めに土魔法でタライのような浅い円柱の鍋を作ります。そこにかまどの薪の中に入れていた小石をぎっしり敷き詰めます。そこへ半ば埋まるようにお芋を並べます。うふふ。土魔法で作った蓋をして、かまどの熾火の上に乗せておきます。


 そして時が経ち、今はお昼。

 ね、笑いがこぼれてしまうでしょ?


 お砂糖が無い中でも甘いものを食べさせてあげるため、作ってみたのです。石焼き芋。


 森から持ち込んだお芋はこれで殆ど終わってしまうけど、悔いは無い!


 蓋を開けるとホワッと湯気とともに香ばしくも甘ーい匂いが漂う。たまらん。


 砂糖に群がる蟻の如くワラワラと子供たちが集まってきた。生唾をゴクリと飲む音が聞こえた。うんうん、分かりますとも。


「お昼だよーっ!焼き芋だよーっ!すっごく熱いから気をつけて食べてね-!」

 と配る。


「いただきまーす!」

「いただきまーす!!!」


 みんな上着やスカートを巻きつけて持ち、ふうふう、ハフハフ言いながら少しずつ齧り付く。


「何だコレー!」

「甘ーい!」

「うまーい!」

「お、美味しすぎます……」

「これ、だあいしゅき!」


 じっくり低温で焼かれたお芋は、甘味が凝縮されている。

 黄金色の実には滲む蜜が輝き、ほわほわと湯気が立っていて、見ているだけでよだれが出そう。


 はむっと齧り付く。

 あふっあつっあつっ。

 ホフホフと息を吐きながら、口の中いっぱいの幸せを楽しむ。


 外側のホクホクとした食感の後に、内側の蜜が滲むようなトロットロの滑らかさ。そして口の中に広がり鼻から抜けていくような香ばしく濃厚な甘味。


 はあ、美味しすぎる……。


 ふと見ると、みんなも溶けそうな笑顔で頬張っている。胸に詰まらせて、慌てて水を飲んでいるジェフもいる。ハハハ。


 ――その時、見知った魔力が、風のように近付いて来るのを感じた。


 咄嗟に石焼き鍋に障壁(バリア)不可視(インビジブル)をかけ、隣に幻影(ミラージュ)でフェイクを作る。


 自信満々、かっぱらう気満々で現れたのはあのサルだ。


 サッと盗んで、パッと逃げるつもりだったのだろうが、まんまとフェイクに引っかかり、顔から地面に激突する。


「ウ……、キィ……」


 何気に涙目になってる?


「いきなり手を出さない! やけどするよ?!」

「……キキ?」

「すっごく熱いの! めっ!!」

「……キキィ」


 腰に手を当てて、上からきつめに叱る。心なしか反省している気がする。


 あれ、使ってみるか。


 S級闇魔法。

 本では悪魔が使う邪魔法とか言う都市伝説めいた話で書かれていたヤツ。


読心(マインドリーディング)


 おサルの目をジッと見つめると思考が流れ込んでくる。


『何だよ、コイツ。ただのアホだと思ってたのに、ちくしょー。うまそうなもの自分たちだけ食べやがって。うう、失敗した。捕まっちゃうのかな? どうしよう……』


 中々に人間臭い思考なようだが、ちょっとかわいそうになってきた。

 手に持っていた食べかけのお芋をスッと差し出すとビクッと身構えた。


 魔法を解き、本物の石焼き鍋からお芋を服の端で掴んで一本取る。


「こっちはあっつあつなの。直に触ったらヤケドしちゃう。わかる?」


 おサルの手に近付けると、触れた熱さに飛び跳ねる。


「ッキー!」


「ね、危ないの。こっちは冷めてきてるから、こっちを持っていきなさい。勝手に取ろうとしちゃ、めっ! だよ?」


 優しく笑顔で差し出すと、おずおずと手を出した。


「……ッキー」(ありがと)


 パッと掴むとあっという間に逃げていった。


 ふう。ため息が出ちゃう。

 まあ、最後ちょっとかわいいところあったけど。


 私が二本目のお芋を食べ出したので、みんなもいそいそとおかわりを始めた。ハフハフ食べながらバズが聞いてくる。


「あれが昨日言ってた変なサル?」

「そうそう。いたずらっ子で困るよ」

「うふふ。面白い子ですね。また来ますかね」


 アンがそう言うと、キティの目がキラッと光る。


「結構頭の良いおサルみたいだから、美味しいものが欲しくて、また来るかもね」


 野生のサルの凶暴性は無さそうだけど、子供たちにいたずらしたらお仕置きだ。


「仲良くなれたらいいな」


 キティは嬉しそうだけど。



 その後はゆっくりお芋を楽しみながら、午後の予定など話していく。


「午後は林に行って荷車を作ろうと思ってるんだ。年長組には手伝ってもらいたいんだけど、いきなり小さい子たちだけでお留守番も心配だからアンとマリーは残ってくれる? 魔力の訓練がしたい子がいたら、感じるコツとか教えてあげて」


 マリーは「私に出来るかな……」と不安そうだが、


「マリーが一番出来ると思うよ。だからお願い」

 と頼むと


「ん……頑張ります」

 と言ってくれた。


 ユニとルーには棚に詰め込んだ荷物の整理と、もし作れそうなら夕食に菜っ葉のスープを用意してもらう。

 棚に突っ込んだ食材の中にも使えそうなものがあったら使っていいのでメニューを考えてもらう。


 火を使うのはジェフが戻ってからなので用意までだけど、二人がどんな食事を考えるか楽しみだ。


 小さい子たちはお姉ちゃんの言うことをちゃんと聞いてお留守番出来るかな? みんなで協力するということをわかって欲しい。


「今日、みんなが問題なく過ごせたら、これを当分の役割分担にして、冬の準備を本格的に始めたいと思います。協力しあうということは、役に立つということより、自分勝手をしないことが大切です。何かをする時に相談しあえることが力を合わせるということ。私もみんなに相談するから、みんなも周りのみんなに相談してから行動してください」


 ここは少し真剣に話した。


 何かあってからでは遅いから、これだけは理解して欲しいと。


 みんなが幾分神妙な返事をし、大きく肯く。


「わかってくれてありがとう。よろしくお願いします。さて、それじゃあ後は欲しいものについてだね」


 すぐに用意して欲しいもの、あったら便利なもの、何でもいいよ、と聞いてみるけど、すぐには浮かばないのかな? ピンと来ない顔をしている。


「例えば、マリーは本が読みたいって言ってたよね。今すぐ本は手に入らないけど、そういう欲しいもの。ユニが縫い物するなら針や糸が必要でしょ? コリーは? 魚を取るのに必要なもの何かある? バズは道具に詳しいよね。何があると良い? そういうのを考えてみてね。今すぐじゃなくていいから、思いついたら教えてね。ちなみに私は食後にお茶があったらいいなぁって思ってます」


 そう言うとみんな表情が緩んでふふっと笑う。


 すぐに出来ないことの方が多いとは思うけど、口に出さなきゃ叶わない。だから、みんな考えてみてね、と昼食の時間を締めくくった。



 昼食の後片付けをしていると、早速欲しいものを思いついた子たちが教えに来てくれる。


「本当に何でもいいですか?」


 と前置きしながらアンが言う。


「今は大変な時なので、あの、冬支度の後でいいんですけど、櫛が欲しいんです。小さい子たちの髪をといてあげたいので」


「うんうん、そういうの良いね」


 これは必要なものだよ、と笑うと、みんなも言い出しやすくなったのか、次々に教えてくれる。


 ユニは「お掃除するのにホウキが欲しいです」と。


 コリーは「捕まえた魚を入れるカゴが欲しい。あと網とかあるといっぱい捕まえられるよ」


 ルーは「ハーブとかあるといろいろな味のスープが出来ると思う」うん、欲しいよね。


 マリーは「冬になったら字や計算も教えてもらえますか?」


 うんうん。落ち着いたらやりたいことも考えると、必要なもの出てくるかもね。紙と鉛筆作れるかな?


「だったら遊ぶものも欲しい!!」


 ベルとティナが言う。雪に閉ざされることも考えられるから、そういうのもいるよね。


「冬の準備なら食べ物もだけど、暖まる準備もいるよ。薪も貯めておいた方がいいし、藁があれば寝る時あったかい。毛皮が獲れればもっと良いけど……」


 マークは役立つ知識を出してくれた。


「そういうのを入れておく倉庫もいるよな」


 ジェフの言うことも尤もだった。


 ルーシーは内緒話のように、


「おトイレがもう少しあると、朝、便利かも」


 と教えてくれた。うん、十四人だもんね。小さい子も多いし。


 バズは「鎌とか鉈とか鉄製品があると便利だけど……」と。


 うーん。金属が見つかるといいけど。取り敢えず土魔法で作ってみよう。包丁みたいに。


「ピノはね。どんぐいとまちぼっくいをおへやにいっぱいかざるのー」


 うんうん、かわいい。

 いつまでも殺風景な部屋じゃなく、そういう余裕も欲しいね。


「ん? キティどうしたの」


 言い辛そうなキティを促すと、


「あのね。どうぶつはかうのたいへんなのしってるの、ほんとは。どうぶつもごはんたべるから、村ではかえなかったの」


 ああ、そういうのも分かっているんだな、この子たちは。まだ小さいのに……


「おにんぎょうならいい? こんど、おにんぎょう作って、モモ」


「うん。わかったよ」


 一生懸命我慢しようとしてるキティが健気でかわいい。


「私もいつかは動物も飼いたいと思ってるけど、それまで我慢してくれるんだね。ありがとう、キティ」


 いつものお姉さんぶりたい口調も、年相応の辿々しいものになっている。無理してるんだろうな。


 取り敢えず、今は材料が無いので、土魔法で何か作ってあげよう。粘土をこねくり回して、ウサギの土人形を作ってみた。


 土人形という言葉に頭の片隅にあった知識が不意に繋がった。



 ――遥か昔、力仕事などをさせるのに土人形を使役した魔法使いの伝説。



起動(メイクゴーレム)



 ――小さな土のウサギがぴょんと跳ねた。



 みんなの目がまん丸になり、口をポカンと開ける。


 キティが「キャーッ」と歓声を上げ、土ウサギを追いかけ回している。


 いや、Sランク凄いわ。自分でも驚いちゃったわ。


「……ももちゃんは……本当に……いろいろ出来るんですね」


 アンがなんとか言葉を捻り出すと、


「覚醒だからなー」

「モモだしなー」

 うんうん、と、男の子たちはなんか当然のように言い出した。


 それを期にみんな思考が戻ってきたようで。全員が「モモだから」で納得してしまった。


 うん。まあ、それでいいや。




 小さい子たちが土ウサギと遊ぶ中、年長組と出かける準備を始める。持ち物は水筒に水を入れて持ってく程度だけど。


 林まで行って荷車を作り、木材などのもの作りの材料や食料を見つけて運んでくるのだ。




 夕方前に戻れるように、最長でも三時間。


 メンバーは、ジェフ、マーク、バズ、コリー、ルーシーと私。


 マリーとアンに後を任せて、早速出掛けよう。



お読みいただきありがとうございます。


明日も二話更新します。


お楽しみに! (≡ε≡)/

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