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第十六話 かあちゃんはみんなのことを知りたい


 広場に集まり車座に座る。朝のお日様がポカポカと暖かい。


 まずは、もう一度自己紹介から、お互いにより詳しく自分のことをみんなに知ってもらうことにする。


 私が最初にやってみて、その後、大きい順で続けることにした。



「モモです。お料理が得意です。

 好きなものは子供と動物。嫌いなものは……虫かな? 争うことやケンカも好きじゃないです。

 この森に来てから魔法が使えるようになりました。月精霊の加護をいただいたおかげです。赤ちゃんの時から魔力の鍛錬を続けてきたのでMPがすごく増えました。今は土、光、闇の魔法と創造というスキルが使えます。魔法の勉強はいっぱいしたので何か知りたいことがあったら聞いてください。

 ここでみんなのかあちゃんとして、のんびり楽しく暮らしていくのが目標です。そのためなら頑張るのはへっちゃらです!」


 と言ってステータスを見せる。



 ======================


 モモ レベル1 人間 女 三歳 ☆

 HP22/22 MP6702/9050 土+ 光+ 闇+


 ======================


   攻 F   魔 S

   守 F   賢 C

   早 F   器 C


 ======================



「精霊様の加護をいただいているのですか?!」

「なんかモモすごい!」

「え? 訓練するとこんなになれるの?」

「MPと適性が……」

「ピノもまほーつかいたい!」

「よくわかんないけどモモはいつもすごいよー」

「モモちゃん! 私も頑張ります!」


 みんなが口々に驚嘆の声を上げ、最後にジェフが、


「そうさ! モモは目覚めたんだ! 覚醒だぜ? かっこいいよなぁ。俺も覚醒するぜ! 頑張るぜ!」


 ……余計なことを言った。


 案の定、男の子たちが、


「覚醒か?!」

「すごいよ!!」

「オレもしたい!覚醒!」


 とノリノリになった。


 ルーシーまで「覚醒か……」と呟いて拳を握り締めてるし、マリーも決意を固めたような顔をしている。

 アンはいつも通りニコニコしてるし、ベルとティナの瞳はキラキラ輝いてる。

 他の子たちもみんな鼻息が荒いようだ。


「ええと、ありがとう? 魔法に関してはまた後で説明するけど、みんなも頑張ればいろいろ魔法が使えると思うからね。じゃあジェフの番」


 と、早々に矛先を変える。



「ん? おお、俺はジェフ。

 体を動かすことが得意で、火魔法で火が点けられる。強い魔法が使えるようになったら俺がモンスターなんかやっつけてやるからな。

 細かい作業やつまんないこと、じーっとしてることは嫌いだ。これからはみんなを守れるように強くなる! 剣や魔法の訓練がしたい。そんで狩りに行って肉獲ってきてやるぞ!」


 やったー!がんばって!と声がかかる。


「ジェフはいつも明るくて前向きなところがスゴいよね」


 私が一言添えて拍手をすると、全員からパチパチパチパチ、と拍手が贈られる。


 褒めるとジェフは照れるんだよね。そっぽ向いたけど耳が赤いよ。



 次にマークが、


「俺はマーク。計算が得意だ。

 足し算も引き算も出来るし、字も書けるぞ。親が領主様に納める税の麦を数える係だったからな。

 嫌いなのはセルみたいに偉そうな奴。好きなことって言うのかわかんないけど、いろんなことを知りたい。だから、やりたいことは探検かな? せっかくここに来たんだから、あっちこっち見に行きたい! あの山の上から見たでっかい池とか!」


「うんうん。いいね。マークはいつも、やる気いっぱいでスゴいよね」

 パチパチパチパチ。


 こんな感じで一人ずつ順番に続けていった。



「僕はバズ。

 村では壊れた道具を直すのが父さんの係だったから手伝ってた。ここでは道具が無いから出来ないけど、木を削ってお皿とか作れる。

 あと畑も手伝ってたから、作物が大きくなるのを見るのが好きだ。嫌いなのはお腹が空くこと。

 ここでも何か作ったり、畑が出来たらいいなあ。僕が麦を育ててみんなをお腹いっぱいにしたいです!」


「バズは優しいね。私は畑に詳しくないから頼りにしてます!」



「オレはコリー。得意なこと……うーん。

 お父さんが鍛冶仕事をしてたので鉄とか銅とか見れば分かるよ。村の奥の洞窟に鉱石を掘りに行くのについて行ってたし。鍛冶は出来ないけど……。

 好きなものは肉と魚。嫌いなものは苦い野菜。でも頑張って食べるよ。そしたら、オレも強くなれるかな? みんなの役に立ちたいです」


「コリー魚取ったことある?」


「うん、もちろんあるよ。村の川で魚を取るのは得意だった。だって魚が取れればおいしいごはん食べられるし! 魚の取り方教えてあげるよ!」


「すごいね、期待してるよ! ここにも川があるし、みんなでおいしいごはん食べるために頑張ろう」



「私はルーシー。

 女だけど力あるよ。毎日、畑手伝ってたからね。体を動かす仕事の方が好き。嫌いなことは弱虫になること。辛くても諦めたくないんだ。

 ホントはジェフみたいに狩りの手伝いに行きたかったけど、村ではやらせてもらえなかった。だから私もいっぱい訓練して強くなりたい。私もジェフと一緒に狩りに行く! みんなを守る!」


「大丈夫。女の子だって強くなれるよ。ルーシーは心が強くて頑張り屋だから絶対強くなれる。応援するよ」



「私、マリーです。

 いろんなことを考えたり、覚えたりするのが好きです。村では勉強なんて出来なかったから、モモちゃんにいろいろ教わりたいです。魔法のことも詳しく知りたいです。本も読んでみたいです。いろんな不思議をいっぱい知りたいです。運動は苦手だけど、訓練も頑張ります。

 モモちゃんに会ってから、初めて知ることが毎日あって、これからの生活にワクワクしてます。何でもやってみたいです!」


「マリーはいつも良く考えて行動してるよね。魔力の訓練を始めれば覚えるの早いと思う。頑張ろうね」



「アンです。水魔法でお水が出せます。魔力の訓練をして、いっぱいお水が出せるようになりたいです。

 お腹が空くのも、病気になるのも、怖いし嫌いです。今はお腹いっぱい食べられるし、みんなが元気で嬉しいです。

 小さい子のお世話するのが好きです。みんなで笑って過ごしたいです。だからみんなが泣かないように頑張ります」


「アンは優しい子だね……。今も充分頑張ってくれてるよ。でも、うん。一緒にみんなを支えていこうね」



「私はユニ。お母さんのお手伝いしてたから、おうちのことならいろいろ出来るよ。得意なのは縫い物。服の繕い物や、編み物も出来る」

「私はルー。私もお手伝い得意だよ。お料理が好き。お洗濯も」


「ねーっ!!」

 と二人仲良く声を合わせる。


「お留守番だって平気だし」

「小さい子のお世話も出来るし」


「おうちのことは任せて!!」


「うーん。頼もしいね。これからは二人にもいろいろと家の事を手伝ってもらうことにしよう。お願いね」


「はーい!!」



「私がティナで」「私がベル」


「私たちは元気!」

「うん。走るのも得意!」

「かくれんぼも得意!」

「野草摘んだりも出来るよ」

「良いもの見つけるのうまいよ!」

「お花も好き」


「ここは楽しいから大好き!!」


「そっか、そっか。昨日もトウガラシ見つけてくれたもんね。ありがと、また頼むね。でも二人だけでどっか行っちゃダメだよ」


「うう、痛かった……」


 ティナがちょっと涙目だ。昨日のことを思い出したんだろう。



「キティです。ちっちゃくてかわいいものがすきです。きのうは、うさぎさんやとりさんをみました。うさぎさんやとりさん、かいたいです」


「そうだね。仲良しになったら、いつか飼えるかも。待っててね」


「うん!」


 期待の目でニコニコ微笑んでいる。かわいい。よおし、かあちゃん、何とかするぞ。



「ピノはピノだお。ピノはおねいちゃんたちだあいしゅき。おにいちゃんたちもしゅき。モモもだいしゅき。ごはんおいちいね。だあいしゅき」


「うん。ありがと。またおいしいごはん作るね」


「じゃあピノはどんぐいとまちぼっくいひろったげるね」


「うう、かわうい。うんうん、お願いね」




 こうしてクラス替え後のホームルームのような自己紹介を全員にしてもらった。

 ただ流されるように生きるのではなく、自分がどうしたいか前向きに意見を持ってくれて嬉しい。



「みんな、いろいろ教えてくれてありがとう。みんなにやりたいことがいろいろあって嬉しいです。

 私も剣を振ったことは無いから戦闘訓練には自信がないけど、まずは体力作りから頑張ろう。それから魔力の訓練ね。こっちは任せて! 魔力量を増やして、魔力操作が上手くなれば、みんな魔法が使えるようになると思います。

 探検や畑や魚取りは私もぜひやってみたいと思っています。計画するから少し待ってね。

 ユニたちも言ってくれたけど、これからはみんなで役割分担というか、いろいろと仕事を決めてやっていけるといいと思う。得意なことはどんどんお手伝いしてもらうね。

 動物を飼うのはしばらく待たせちゃうと思う。ごめんね。これから冬が来るし、暖かくなってからかな?

 それから美味しいごはんは頑張るよ! みんなも材料集め手伝ってね!」


 みんな、これからの暮らしに夢が膨らみだしてきて、やる気がどんどん湧いてきているようだ。




「みんなの夢を叶えるためにも、かあちゃんが今考えてるやりたいこと、やらなきゃいけないことがある。聞いてくれる?」



 そして私は、昨晩考えたことを伝える。


 まずは何より冬のために食べ物を貯めておきたいこと。


 たくさん集めるためには荷車を作る必要があり、荷車が出来たらまずは林からいろいろ集めてこようと思っている。でも、森にしか無い食べ物もあるし、森の方が食べ物が多いので何回か森まで採集に出掛けなければいけないこと。


 そして、そのお手伝いを年長組に、小さい子たちにはお留守番をお願いしたいこと。



 そこまで話すと、


「今は食べ物いっぱいあるけど、冬のために貯めておくのは村でもやってた。食べる物がある今の内にやらなきゃいけないんだね?」


 真剣な声と眼差しでマークが理解を示してくれる。


 みんな、じっと考え、事態を飲み込んでくれている。そうして、


「わかった」

「いいよ」

「そうしよう」


 とみんなも真剣に、決意のこもった声で同意してくれた。



「保存出来る食べ物をたくさん集められたら、その後は魚取りしたり、探検したり、それで見つけたもので何か作ったりしよう。まずは冬に備える。冬の間は勉強したり、訓練したりしよう。春になったら畑を作ったり、動物を飼ったりにも挑戦しよう。少しずつだけど、みんなのやりたいことを叶えて、楽しく暮らしていこうね」



 みんな、頑張れば夢は現実となること、そのためには全員で力を合わせなければいけないことをわかってくれた。



 小さな子たちまで幾分真剣な表情になり、

「がんばろう!」と声を合わせた。


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