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始祖の竜神と平凡の僕。  作者: 秋色空
五章:追憶編
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SS - 2.異端者

4ヶ月ぶりのSSです(笑)

今回はシロとアデルが去った後の店の様子ですね。

「ここだ!!」


 兵士の一人が雪が積もった街の門を見た。そこから一つの店まではっきりと足跡が残っていた。


「あそこに逃げたのか……忌々しい魔種め。お前ら、行くぞ!!」


「おう!」


 数十人集まった兵士達は真っ直ぐに足跡の向かう先に突き進んで行った。そこは一軒の店のようだった。


「……入るぞ!」


 流石に魔術が長けていると言われている魔種。人間種である男達が足を竦めるのには充分であった。そうすること数分。あろうことか中から扉が開いたのだ。


「お前ら、誰だ?」


 明らかに不愛想な店主。怪しさ満点であった。魔種が出てこないのであれば、怖いわけではない。こちらは武装集団なのだ。兵士の一人が力強く声を出した。


「ここに魔種の男が来ただろう?そいつを出せ。一緒にいたガキもだ。」


 すると、とぼけた顔をする店主。何も知らない訳では無いのだろう。だが、教える気はないということだ。


「さあ。どうだろうな。俺はそんな奴ら知らねえ。」


 そんな店主の態度に堪忍袋の緒が切れた兵士の一人が、店主を押し退けて店の中に入ろうとした。少なくとも鍛えられた身体でこの店主ぐらい押し退けられるだろう。そう思うのは仕方が無いことだったのかもしれない。だが、それは浅はかな考えであった。押し退けようとした兵士の手は店主によって掴まれていた。


「なっ……!!」


 これには他の兵士達も驚いたようだった。目の前の店主は明らかに高齢。身体も大きくなく、どこから兵士の手を掴めるだけの筋力を出しているのか分からないのだ。


「どうした?お前ら、その武器の数々や身体はお飾りなのか?」


 これには流石に他の兵士も怒りを覚えたようだ。容赦なく店主を殴ろうとする。その拳が店主まで届くことはなかったが。


「ま、魔法だと!?まさか、魔種なのか!?」


「おいおい、魔法が使えるだけで魔種と決めつけられるのは心外だな。俺は魔種じゃねえぞ。魔法が使える人間種の一般市民だ。」


 店主はそう言い切った。そこに嘘をついた気配はない。よっぽど演技が上手いのであれば、騙されるのは仕方ないだろうが。それはますます兵士達を怒らせるのには十分だった。


「人間の偽物め……。さっさと正体を現せ!」


「うるせえな。【消えろ】」


 兵士達はまた驚愕することになる。本来、魔法とは何かしらの詠唱が必要なもの。それぐらいは人間種である、兵士達にも分かる。だが、発した言葉を詠唱にする魔法など見たことが無かった。魔法を使えない兵士達が店主が魔法を使ったのだと分かるのは、詠唱時には独特のノイズが響くのだ。


 店主が魔法を発動した対象は、つい先程叫んだ兵士であった。その兵士は言葉通りに消え去っていたのだ。他の兵士達は今までで最も大きな驚きを見せた。それは仕方のないことだろう。目の前で一人の人が消えたのだ。驚かずにはいられない。


 咄嗟に一人の兵士が銃を取り出し、店主に放った。店主から死角になる場所から銃弾を放ったが、店主は寸前の所で気付き、少し掠ったが躱した。


「ば、化け物……!!」


 すっかり兵士達は怯えていた。目の前の店主が明らかに人間種で無いことが分かったのだ。加えて魔種で無いことも。魔種はあまり身体能力が高くない。かと言って獣種(ビースト)でもない。獣種は逆に身体能力は高いが、全く魔法が使えないのだ。明らかに歪な存在。目の前の正体不明の存在はまさに化け物(・・・)だった。


「心外だなぁ……。俺からしたらかつて科学という技術を生み出した人間種の方が化け物だと思うがな。」


 その言葉は己が人間種ではないと認めるようなものだった。


「俺は人間種(おまえら)から生み出された存在だ。所謂、実験生物(モルモット)ってやつだ。元は人間種だから、人間種であり、人間種とは異なる存在というわけだ。」


「き、聞いたことがある。かつて〈原初文明(プリミティブ)〉で人間種の王が秘密裏に行っていたという生体実験。確か魔法の使える人間種、身体能力が高い人間種……つまり、魔種や獣種の特徴を持つ人間種を作り出そうとした、と。」


「こいつは魔法も高い身体能力も持ち合わせている。」


「ああ……約百年前。〈原初文明〉が滅びる寸前、一人の実験生物が逃げたという話があるんだ。そいつがその実験における唯一の成功例と言われているんだ。しかもそいつは魔法も高い身体能力も持つ……まさにこいつのような。」


 兵士達は店主を見る。まさか都市伝説に近い存在が目の前にいるとは思わなかったのだろう。誰しもが冷や汗をかいていた。まだ春前の寒いこの季節にだ。心底恐怖したのだろう。


「ああ、それが俺だ。」


 そして、否定しなかったのだ。人間種にして魔種と獣種の特徴を持つ。こんな存在がいて良いのだろうか。この人間種は百歳以上には見えない。だが、それだけの年月を生きているのだ。


「死なないのか……??」


 一人の兵士がその答えに行き着く。店主はそれを否定しない。肯定もしないが。だが、その沈黙は肯定だと受け取ったのだろう。人間種の兵士達は一目散に逃げ出した。我先にと互いを押し合う。


「俺は噂になるのが嫌いでな。すまないが、【消えてもらう】。」


 そう呟くと同時に人間種の兵士達は全員、消え去った。辺りは再び静寂に包まれる。店主が地面にある沢山の足跡を見て呟く。


「【足跡ぐらい消しておけ】って言っておけば良かったな。まあ、過ぎたことだが。」


 再び呟いた店主の疑似詠唱によって街の付近の足跡が全て消え去る。正確には積もっていた全ての雪が消えた(・・・)。大規模の魔法を平然と使う店主の正体は……。


 店主が店に戻ると、椅子に一人の女が座っていた。店主を見ると、声を出す。


「お疲れ様です……やはり人間種は嫌いですか?」


 その女は雪のように白く、存在自体が朧げであるような、幻のようなそんな表現しがた儚ささを持っていた。だが、店主を見るその目は、感情が籠っているように見える。


「俺は……人間種であることをを止めた。異端者(プロフェタム)だ。だから気にしない……。」


 一見見当違いの回答を店主はした。それを聞いて、女は微笑む。


「そうですね。では行きましょうか、私達も。」


「ああ。」


 店主と女は店を出た。そして、街を出る。数瞬後、二人の背後には何も残っていなかった。

この二人は再び登場します。

いつかは言いません……というよりまだ決めてません(笑)

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