第27話 日常の敵
大変長らくお待たせして申し訳ありません。
ようやく、最新話が完成しました。
理由(という名の言いわけ)はあとがきの方で
いつからだろうか。
殺気を日常生活で浴びせられるようになったのは。
「ねえ、尾崎君」
「何? 中井さん」
学園に向かっている中、中井さんが周囲の様子を伺いながら声をかけてくる。
あの買い出しから俺達はよく行動を共にすることが多くなった。
理由に関しては不明だが、本人は『荷物持ちのお礼』とのことだ。
――閑話休題
「何か人を怒らせるようなことをしたの?」
「いや、覚えてる限りはない」
中井さんの問いに俺は首を横に振りながら答える。
なぜこのような問いかけをされるのか。
その理由で冒頭に戻る。
「だったらいいんだけど」
中井さんが不安げな表情でつぶやく。
矛盾の魔法使い 第27話「日常の敵」
ある日、学園の一室。
そこは異様な雰囲気を醸し出していた。
薄暗い部屋に集まる数十人の人、それぞれの人には仮面がつけられていた。
そして、その人物たちの視線の先に映し出されている映像は、ピンク色の髪を短く切りそろえられている少女、奈々だった。
「中井 奈々。誕生日3月25日。スリーサイズは上から69-50-69、体重37Kg」
テーブルに腰かけるリーダー格の男が奈々についての情報を読み上げる。
その情報は一体どこから入手したものかは定かではない
「ここにいる我々は皆この可憐で美しい人物に心を奪われた、同士である」
リーダー格の男の言葉に、その場にいる者達は無言で耳を傾ける。
「しかし我々が彼女を巡って争うことは不毛であり、なおかつ慈愛にあふれる彼女の心を傷つけることにもなりかねない」
リーダー格の男の言葉に、その場にいる人物たちは納得している様子で頷く。
「そこで、今この時点から我々はファンクラブを結成する。その名もVenus・NaNa・Club」
「「「VNC! VNC」」」」
リーダー格の男が告げたファンクラブ名にその場にいた者達は一斉に声を上げる。
こうして、VNCは設立された。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「そりゃ、ファンクラブだろう」
「ファンクラブぅ?」
休み時間、俺は隆にここ数日の殺気の事を聞いて帰ってきた答えに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「しー! 静かにしろ」
「わ、悪い」
隆の注意に、俺は周囲を伺いながら謝ると、続きを促した。
今、中井さんはここにいない。
ついて来ようとしていたが、思い留まったように自分の席に戻って行った。
どうやら、俺が何をしようとしているのかを悟っているようだった。
「それで、なんでそのファンクラブってのが出てくるんだ?」
「この間のクラス対抗魔法戦で、中井と組んだだろ?」
「ああ」
確かにクラス対抗魔法戦では中井さんと組んだ。
それがどうしてファンクラブにつながるんだ?
「ペアになったらどうなるかの噂は知ってるだろ?」
「知ってる……まさか」
「ああ、そのまさかだ」
隆の問いかけに、俺はようやく答えにたどり着いた。
つまりは
「お前があいつと付き合うんじゃないかって、神経をとがらせてるんだろう」
嫉妬であった。
「気を付けろよ。奴ら、中井に近づく男は容赦しないで排除しようとするからな」
「でも、お前は排除されてないよな」
今まで中井さんと幾度も話をしているのを、俺は見ていたので、問いかけてみた。
「そりゃ、あいつらからしたら俺が中井とくっつくなんて万に一つもないことだし」
「………自分で言っていて悲しくないか?」
「ちくしょう! 俺だって女子と付き合ってやる~~~!!」
俺のツッコミに、隆は血の涙を流しながらどこかに走り去ってしまった。
「どうしたの?」
「いや、あいつにも色々あるんだよ」
走り去って行く隆を見た中井さんが俺に聞いてきたので、俺はそう答えるにとどめた。
「……??」
そんな俺の答えに、中井さんは首をかしげるだけだった。
(今後は自重するようにしよう)
いくら動悸が嫉妬だったとしても、そう見えることは事実。
お互いの為にも、ファンクラブの連中を刺激しないのが得策だ。
そういう結論に至ったのだ。
その結論が無駄になるとも知れずに。
6限の授業、体育も終わりクラスメイト達はぞろぞろと着替えに戻って行く中、俺達は道具の片づけをしていた。
「よいしょっと、これで全部かな?」
「ああ。だと思う」
最後の道具を体育館倉庫に運び終え、俺達はほっと一息ついた。
「それじゃ、早く戻ろ―――きゃあ!?」
「危ない!」
片づけも終え体育館倉庫を出ようと歩き出した瞬間、中井さんが何かに足を躓かせて前によろめいた。
俺はそれを支えようと手をさし延ばす。
手に触れた何かの感触が伝わる。
「のわっ!?」
俺はそれが何かも分からぬまま、巻き込まれるような形で地面に倒れた。
「あいたたた……ごめんね、尾崎君。大丈……夫」
「俺は大丈夫だ………が」
俺達はそれぞれ言葉を詰まらせる。
おそらく理由は一緒だろう。
俺の目の前には中井さんの顔がある。
どうやら俺の上に倒れ込んできたらしい。
「えっと……」
恥ずかしさのあまり、頬を赤らめる中井さんに俺はどう声をかけた物かと悩む。
「悪い。その、退いてくれると、助かる」
「あ、ごめんなさい」
今の状況は体育館倉庫ということから含めて見ると、そういうことを行っているようにも見えなくない。
中井さんはさらに頬を赤らめながら俺の上から退こうとした時だった。
「奈々様っ!?」
「きゃあ!?」
突然聞こえた大声に、中井さんが悲鳴を上げる。
「奈々様! 御無事ですか!?」
突然体育館倉庫になだれ込む仮面をつけた数人の男子学生。
「出たなッ! 我らの敵め!!」
「奈々様から離れろ獣が!」
「のわっ!?」
数人の男子学生たちによって、俺達は引きはがされた。
そして俺はなぜか雁字搦めにされている。
そんな俺に男子学生たちが構えたのは銃ではなく、エアガンだ
「喰らえ!」
「おわっ?!」
一斉砲火を浴びる俺は、全ての弾を避けて行く。
とは言っても、数発の被弾は免れないわけで、とても痛い。
「奈々様! あの不届き者は我々VNCが成敗しますので、ご安心を!」
「……ですか」
「はい?」
中井さんの小さい声に、その場にいた男子学生たちは射撃をやめて中井さんの方を注視する。
当の中井さんは俯いていた。
「誰を成敗するんですか?」
「え?」
小さかった声は、どことなく威圧感を感じさせる物であった。
「私は、彼に助けてもらったんですよ? それなのに誰を成敗するのでしょうか?」
中井さんの一言一言に、威圧感のようなものが増していくのを感じた。
「あ、あの。奈々様」
「御託はいいから、早く彼から手を放して謝りなさい」
『はい』
一気に爆発した威圧感の前に、ファンクラブと思わしき男子学生たちは全員土下座をしたのであった。
この日の一件で、俺に対する殺気は鳴りを潜めることになった。
結局、俺が何もしなくても解決することになったのであるが、彼女の意外な一面が見れたのはある意味良かったのかもしれない。
尤も、
「はっ!? ご、ごめんね尾崎君。忘れて、今のは忘れて」
と顔を真っ赤にしてお願いされることになるのだが。
これが、熱くなっていく日々に起こった出来事の顛末だった。
というわけで、本当にすみませんでした。
どうして遅くなったのかというと、当初は本格的に事件でも起こそうかと考えていたのですが、少々早すぎると思い急きょ小さなものにしようということになりまして、いっそのことファンクラブ関連にするか⇒ファンクラブだったら設立時の描写も描いた方がいいかな、と言った感じでずるずると言ってしまい時間がかかってしまいました。
次回も、このくらいの時間がかかる可能性があります。
何卒ご了承のほどをお願いします。
本当に申し訳ありませんでした。




