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矛盾の魔法使い  作者: 龍夜
第4章『予兆』
26/31

第26話 買い出し

大変お待たせしました。

第26話です。

「それで、今はどこに向かってるんだ?」

「田土先生がよく行っている業務用スーパーだよ」


俺の横を歩きながら答える中井さんの手には、俺が持っていたはずの買い出し用のメモが握られていた。

いつの間にか中井さんが先導する形となってしまったのは、きっと俺が頼りないからだろうか?


「中井さんってそういうのに詳しいんだな」

「まあね。何時も買い出しから返ってきた田所先生が持っていた袋を見ていたからね」


俺の言葉にそう返す中井さん。


「あ、あそこがそうじゃないか?」

「そうよ。あそこがこの辺で一番大きい業務スーパーだよ」


中井さんの視線の先には3階建のスーパーがあった。


「確かに大きいが、大きすぎないか?」

「小さいよりはいいでしょ?」


そういう中井さんに首を傾げつつも、俺はスーパーの中に入って行くのであった。



矛盾の魔法使い   第26話「買い出し」



「えっとまずはトイレットペーパーだね」

「どこの階にあるんだ?」

「3階だよ」


俺の疑問に即答する中井さん。


(いきなり最上階かよ)


ため息が出るのを必死に止めて、俺は中井さんに続いて3階へと向かった。











「なあ、中井さん」

「何? 尾崎君」

「あれがトイレットペーパーか?」

「うん、そうだよ」


俺が指し示す先を見た中井さんが頷いた。


(嘘だろ?)


俺の視線の先にあったのは、確かにトイレットペーパーらしきものだった。

ものすごい”厚さ”でなければ。


「あれ直径何メートルあるんだろうな」

「2メートルじゃない?」


さらっと答える中井さんもすごいと言えばすごい。


「あれ、どこで使おうにも大きすぎて使えないよな?」

「立てかければ使えると思うけど」


取りあえず、俺は全力でこれを買うことには止めることにした。

嫌だぞ俺は。

立てかけられた巨大なトイレットペーパーを使うのだけは。


(何が一番人気なのだか)


商品の横にあるPOPに書かれた『当店人気No.1!』の文字に、俺はツッコみながらその場を離れた。

その後、トイレットペーパー(普通の大きさ)を発見し、かごに入れると次の買い出しの品を捜しに向かう。


「次は電球か」

「電球だったら2階かな」


そう言って中井さんは階段を下りて行く。

俺もそれに続いた。


「これなんかいいんじゃないかな?」

「お、普通だ」


さっきの巨大なトイレットペーパを見た俺は、普通のサイズの電球にほっと胸を撫で下ろした。


「当り前じゃない。巨大な電球だったら私の方がびっくりするよ」


俺の様子に、呆れた様子で言いながら電球を箱にしまってかごに入れる。


「って、ちょっと待ていっ!」

「ど、どうしたの?」


電球をしまった箱の中身を見た俺は、思わず叫んでしまった。


「その箱の中に電球がいくつ入ってるんだよ!?」

「いくつって、100個?」


俺の問いに普通に返す中井さん。


「この箱の中にどうやって100個も詰め込んでるんだよ!?」

「何でも魔法で中に入れた瞬間に、大きさが小さくなるようになってるんだって」

「変に便利だなッ!」


そうツッコんでしまいたくなるほど、変な意味で便利な魔法だった。

さらに買い物は続く。


「これはいくら何でも大きすぎるだろ!」

「良いじゃない。業務スーパーなんだから」


ここのスーパーの店長は、業務スーパーだということを免罪符に、遊んでいる気がしてならない。

そんな事を考えながら、俺は今両腕で抱えている大工道具セット(木材や釘などがこれでもかというほどに敷き詰められている)段ボール箱を持ちなおすのであった。











「これで、最後か?」


俺は会計を済ませて外に出ながら、中井さんに聞いた。


「うん。メモによるとそうなるね」


中井さんの答えを聞いて、俺はほっと一息ついた。

何だかものすごく疲れた気がするのは俺の気のせいか?


(一番すごいのはあれだけ買っても、5000円でおつりが返ってくるほうだよな)


「っとと」

「大丈夫か? 中井さん」


突然よろけた中井さんに、俺はそう声をかけた。


「う、うん。大丈夫」


そう答えるが、どう見ても大丈夫そうには見えない。

中井さんが持っているのは、トイレットペーパと電球だ。

トイレットペーパーはあの後何故か特典という事で二つほど追加されていた。


「きゃ!?」

「危ないッ!」


何かに足を取られたのか、中井さんがよろめくのを見た俺は、荷物を地面に半ば投げ捨てるように置くと中井さんの体を支えた。


「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫………」


何だか頬が赤いので、どうしてだと考えた俺は、自分の体勢に気付いた。

それはまるで端から見れば抱きしめているようにも見える。


「あ、悪い」


俺は慌てて中井さんから離れた。


「これ持つよ」

「……あ」


俺は中井さんの手からトイレットペーパーを取ると、それを俺が持っていた段ボールの上に置く。

そしてダンボールを持ち上げて足を進める。


「中井さん、行くぞ」

「あ、うん」


俺はさっきの自分の体勢を思い出そうとするのを必死に止めながら後ろで固まっている中井さんに声をかけた。


「ありがと。尾崎君」


背中越しに聞こえる小さなお礼の言葉を聞きながら、俺達は寮へと戻るのであった。


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