第23話 動き始める者
大変お待たせしました。
第23話です
日本国内、某所
昭和時代を彷彿とさせる町並みの中に一軒、目を見張るほどの大きな屋敷が存在していた。
そこはその土地の者ならば、誰の家なのかはすぐに分かる物であった。
『神谷家本家』
そう、そこは魔法使いであれば誰でも知る名家の中の名家、神谷家の本家の屋敷だった。
――神谷家
何十代も続く魔法使いの家系で、神谷家(特に本家族)の魔法使いは皆かなりの腕利きであるという歴史がある。
この家系の魔法使いには独特の魔法があるが、それは関係ないためここでは触れないでおこう。
閑話休題
そんな神谷家本家内では、かなり騒然としていた。
「秀三様、先の騒動の原因が判明いたしました」
「それは誠か?」
使いの者と思われる人物の言葉に、和式の部屋で正座をして座っていた白い髪にベージュ色の袴を見に包んでいる初老の男性が反応した。
「魔法の使用不能状態にまでもたらすのだ。装置であればかなりの腕をしたアイテム技師、魔法使いであれば、かなりの優秀な魔法使いであることは明白」
「はっ! 今回は後者でございます」
秀三の言葉に、使いの者は畏まって答えた。
――魔法の使用不能状態。
それはその日の午後に発生した。
突然魔法を使うことが出来なくなったのだ。
もっと正確に言うと魔法の具現化が出来ない状態だ。
さらに魔力を使用する装置なども動作不良を起こすという事態に陥ったが、それはわずか5分もすれば元に戻り、使えるようになっていた。
だが、短期間とはいえ影響の範囲が大きいことから、神威家では大騒ぎとなり原因の調査を命じていたのだ。
「何じゃと? して、そのものは分かっておるのか?」
秀三は表情を険しくしながら使いの者を追及する。
「は、はいっ! 尾崎 圭一という者でございます」
「……」
使いの者が名前を口にした瞬間、秀三は固まった。
「秀三様?」
「大至急、その人物の詳細を調べるのだッ!」
いつまで経っても反応を示さないことを不審に思った使いの者は、秀三の名前を呼ぶとまくし立てるように命じた。
「は、はいッ!」
使いの男はそんな修三の剣幕に驚いた様子で答えると、部屋を後にした。
「まさか、な」
秀三は冗談だと思いながらその結果が来るのを待つのであった。
矛盾の魔法使い 第23話「動き始める者」
「秀三様。尾崎圭一氏の詳細な情報が判明しました」
秘もすっかり落ち、時間はとうに夜を迎えていた中、先ほどの男がゆっくりと障子を開け、静かに告げた。
そんな男に、秀三は無言で続きを促した。
「尾崎圭一。年齢は―――」
その後男の口からは年齢やら体重、身長などの情報であった。
一体どこをどう調べればそのような物が手に入るのかと秀三は頭を抱えたくなったが、それを堪えて調査結果を聞いていた。
「彼は6歳の時に当時武闘派でもあらせられた、尾崎 総一郎氏の養子として迎え入れられました。それ以前の情報は戸籍等含め、一切存在しておりません」
「やはり………な」
「秀三様?」
男の結果を聞き終えた秀三の言葉に、男は怪訝な表情を浮かべて名前を呼んだ。
「あ奴の名は、神谷 圭一だ」
「神谷……まさかッ!?」
男は秀三の言葉を理解した瞬間、目を見開いた。
「ああ。彼は私の息子でもあり、次期当主候補でもあった」
秀三は最後に『”元”がつくがの』と付け加えた。
「それでは、彼が秀三様が前に勘当された」
「その通りだ」
秀三は男の推測を肯定した。
「金倉」
「はい。何でしょうか?」
金倉と呼ばれた男はかしこまって用件を尋ねた。
「圭一の連絡先は把握しておるか?」
「はッ! 勿論でございます」
金倉の答えを聞いた秀三は『ならば話は早い』と最初に告げてその用件を告げた。
「彼に連絡を取り、神谷家に戻るように説得してもらいたいのだ」
「それでしたら、私よりも秀三様の方が―――」
金倉の反論を、秀三は首を横に振って遮った。
「無理なんだ。あ奴にとって私は憎みし者じゃからな。そなたからの方がまだ交渉の余地はあるだろう」
「………そうですか。では、失礼いたします」
金倉は秀三の言葉を聞き終えると、静かに告げて部屋を後にした。
(私を信頼していただけるのは光栄だが、こればかしは……)
金倉は複雑な心境で、電話機のある場所へと向かうのであった。
数十分経って秀三の部屋に金倉は戻ってきた。
「失礼します。秀三様」
「どうだった?」
開口一番に、秀三は結果を尋ねたが、対する金倉は首を横に振った。
それだけでも、秀三には答えが何なのかはすぐに分かった。
「秀三様、圭一様より伝言を賜っております」
「申してみよ」
「はい。『申し訳ありませんが。私は尾崎圭一。神谷ではありません』とのことです」
圭一からの伝言を聞いた秀三は項垂れた。
「伝言、確かに承った。もう下がってもよいぞ」
「………失礼します」
金倉は静かにそう告げると、部屋を後にした。
「過去の罪は、決して償えない物なのか?」
秀三以外誰もいない自室の中、秀三は問いかけるがそれに答える者は誰もいなかった。




