第一話 終わりの始まり〜The beginning of end〜
初めまして、電源優寿と申します。初の執筆で初の投稿作品になります。ゾンビ映画やゾンビドラマが好きで、自分が思い描く終末世界をこれから書いて残せたらと思い投稿させて頂きました。
沢山の方に読んでもらえるように、面白いと思える作品にしていけるように、日々精進して参ります!
内容は残酷なシーンが多くR15とさせてもらってます。
これから始まる終末世界をどう生き抜いて、人はどう思うのか。人間の葛藤や欲望の中で主人公達の生き様を見届けて下さい。
第一話の主な登場人物
生田勇樹:本編の主人公
生田ウェン(フィリピン人):勇樹の妻
生田星来:勇樹とウェンの息子
ジーン(フィリピン人):勇樹の会社で働くパート
長谷川:勇樹の会社の従業員
店長:ウェンのパート先の店長
晃:大学生
第一話 終わりの始まり〜The beginning of end〜
いつもと変わらない日常だった。
商店街の一角で、先代から引き継いだ町工場を経営している。従業員も10名程いて、妻と子供にも恵まれていた。
しかし、この日世界は変わった。
一月八日午前十時
仕事の小休憩の間に、長期休暇を取っていた長谷川が海外から帰国した。
「皆さん、お疲れ様です!」
元気な挨拶と共に会社の中に入ってきた。
従業員一同が長谷川からお土産を貰い、話が盛り上がっていた。日本には早朝に着いて、そのまま会社に来たようだ。2週間ぶりに会ったが、少しやつれていて顔色も悪く見えた。
休憩を終了するチャイムが鳴る。
長谷川は、少し疲れたので2階の休憩室で休ませて欲しいと言ってきた。私は承諾をした。
現場に戻り作業を再開した。
午後十二時
昼休憩。
休憩室では海外話しや、正月明けもあり一同の話が盛り上がっていた。
私は社長室で食事をとり、スマートフォンでニュース記事を見ていた。
交通事故、傷害事件、警察官発砲、、、未知のウィルス。
その時だった、スマートフォンから警報が鳴る。
ー非常事態宣言ー
ー直ちに自宅又は屋内にて施錠をして避難待機ー
ー人との接触を避ける事ー
その後、すぐに学校の共有アプリから連絡がきた。
ー直ちに引き取り要請ー
再び警報が鳴る。
―緊急安全確保(警戒レベル5)パンデミック―
―未知のウィルスの蔓延。致死率100%。
感染症状:心肺停止後肉体の再稼動。感染者に思考無し。
感染経路:感染者に噛まれた処からウィルスの侵入。
対処法:脳に衝撃を加えると死の状態になる。
症状名:ゾンビ
社長室の扉が勢いよく開いた。
従業員の小宮だ。
「社長!こんな警報見たことないです!ゾンビってなんですか!?」
形相がすでに恐怖を物語っていた。
私は、小宮を引き連れ休憩室に行き、パニックにならない様に声を抑えながら話をした。
「ひとまず、今日はこれで仕事を終えましょう。皆さんも家族がいる事ですから、自宅待機をしましょう。状況はテレビやスマホを確認しながら明日以降はまた考えましょう。私は子供をこれから迎えに行きますので、皆さんが帰宅後に会社は閉めさせてもらいます。」
皆んなは、慌てて帰宅の準備を始めた。私も社長室に戻り、子供を迎えに行く準備を始めた。
次々と従業員が出ていく中、会社の立ち上げから仕事をしているベテランの田中さんが足を止め、私に話しかけてきた。
「社長、、、先代の頃からお世話になっており、定年後も雇って頂き有難うございました。どうかご無事で、それでは失礼します。 」
握手を交わしたが、その表情は何とも言えない虚無を纏ったようだった。
午後十二時三八分
避難訓練を行っていたおかげで、二次災害の対処を心得ていた。
工場内の機械を完全に停止した後、会社の鍵を閉めた。
学校までは、商店街を抜け右折した先の直線で500m程の位置にある。
車で行きたい所だが、混乱していそうなので徒歩で向かうことにした。
速足で向かっている途中に、数々の疑問が浮かんだ。
そもそもゾンビとは?
ウィルスが人を殺している?
政府は避難指示を自宅に指定した?
避難所に指定されている学校は既に安全ではないのか?
沢山の疑問が頭をよぎる中、商店街の顔なじみのお店は次々とシャッターを閉めていく。
声を掛けて話したいが、子供が心配な為、会釈だけをして通り過ぎていく。
商店街を抜けたが、案の定、車が渋滞しているのが見える。同じく徒歩で迎えに来た保護者達の列が学校前に見えた。私は、列の最後尾に並んだ。
スマホを取出し妻に電話をかけてみたが、全く繋がらなかった。保護者達の話し声が飛び交っている。
時折、既に迎えに来ていて帰宅する子供の声も聞こえる。
学校はまだ安全なようだった。
子供たちは校庭で待機をしていた。まだまだ200人以上は待っていた。
保護者が名前を告げると、一緒に帰宅する事が出来る仕組みになっている。
息子が私を見つけて手を振った。
「5年2組 生田 星来の父です。」
担任が名簿で確認後、一緒に帰宅する事ができた。
午後一時二十分
自宅よりも会社の方が近い為、ひとまず子供を会社に置いていこうと考えていた。
帰路の途中だが、妻が心配だった。
「パパはこれから、ママを迎えにいくから、星来は会社で待っていてくれるか?」
息子に言うと、大きく頷いた。
学校での子供たちの様子を聞いてみた。
ゾンビというワードに興奮する子や、泣き出す子もいたらしい。
話ながら歩いて帰っているが、未だに目撃しないゾンビに疑心があった。
会社の前に着き、鍵を取り出そうとした瞬間
ガタン!
会社の中から物音がした。
私と星来は顔を見合わせ、瞳孔が開いていた。
周りが静かな為、自分の心音が聞こえそうなほどだった。
このまま外にいては、ゾンビに襲われるかもしれない。
何か武器になりそうなものはないか探したが見当たらない。ひとまず落ち着き、星来のランドセルを盾の様に持ち、防御態勢で鍵を開ける。
縦に陣形をとり、ゆっくりとドアを開けた。
会社の中は薄暗く、人影が見えた。
「うをぉぉぉ!」
無意識に力強く私は叫んでいた。
「シャッチョー!」
その声に、ランドセルで防御していた腕を下げた。
すかさず、星来が電気をつける。
フィリピン人でパートのジーンさんだ。
彼女は日本に来て半年で、日本語も片言だ。
私と星来は、興奮状態から一気に熱が冷め、少し放心状態だった。
彼女のあたふたしているその姿に、すこし心が和らいだ。
「ジーンさんはなぜここにいるのですか?」
彼女曰く、スマホの警報が鳴るも理解はできていなかったようだ。
いつも食事の時は女性 1 人だった為、個室のロッカールームで食べていた。
個室を出た後、声を掛けながら見て回ったが、誰も見当たらなかった。
ひとまず状況が分からない為、工場の方で待っていたようだ。
私は、警報の内容を一通りジーンさんに説明した。スマホが現在も使用できなかった為、身内とは連絡が取れず、私たちと行動を共にする事にした。
「Oh ワタシ、ZOMBIE エイガスキデス!タオシカタ、ワカリマス!」
私たちは思わず笑ってしまった。
彼女の緊張感の無さが、張りつめていた空気を一気に柔らかくしたのだ。
妻を迎えに行くため、ある程度の準備は必要だと感じ、武器になりそうな工具を準備し始めた。
午後二時三十分
「ジーンさん。星来を宜しくお願いします。」
私は妻を迎えに行くため、駅に向かう。しかし、万が一の事があってはならないので、2人を会社に残しておくことにした。
私は星来を抱きしめ、何かあった時は自分の身を守るようにと、ハンマーを渡した。
ジーンさんからは、息子を守ると約束してくれた。少し不安な 2 人だが、危険な所には連れて行けなかった。
私は鍵を閉め、買い出し用の自転車に乗った。
駅に行くには、商店街を抜けた先の、学校とは反対方向の位置にある。
妻の勤め先は、駅に隣接するショッピングモールの中だ。
平日でも多くの人が買い物をしている。
商店街を抜け、駅の方向に向かう。
前方には、車が事故でも起こしたのか、数台で道路を塞いでいるように見えた。
駅はパニック状態なのだろう。路線も混乱しているに違いない。
急いで自転車を漕ぎ始めた時、
「生田さん!」
呼び止める声がした。
振り向くと、そこにはかなり怯えた表情の男性が、膝を抱えて座り込んでいた。
息子の同級生の父親だった。
「川田さん!?どうしたんですか!?」
私は、川田さんの近くに行き、状況を聞こうとした。
「駅にはいかない方がいい。俺は、俺は、もうダメだ!」
混乱と恐怖で乱心している。
少し落ち着かせたあと、か細い声で伝えてきた。
駅は既にパニック状態で、我先にと逃げる人達が多かったそうだ。
川田さん一家は、学校から帰宅後、田舎に逃げようと考えていた。
車で移動したが、駅前で多重事故の現場に合い、車を止めて電車で移動しようと考えた。
しかし、駅前は既に人がごった返しており、とても電車に乗れそうにはなかった。
その時、悲鳴が聞こえた。
駅に向かっていた人波が今度は逆を向く。
ゾンビとなった人が次々と人を襲っていく。
感染は広がり、また次にまた次にと。
川田さん一家は、人波で流されてしまい、子供が押し倒されたので奥さんが身を挺して守ろうとした。
川田さんは、流されない様に必死にあがいたが、車の方まで押し戻されてしまった。
人の流れが途切れた所で、奥さんと子供を探す。
数名倒れているのが見えた時、2 人を発見した。
最悪のタイミングだった、目の前でゾンビに喰われる 2 人。目撃した瞬間に絶叫しながら逃げたそうだ。
話をしているうちに、川田さんからは涙が溢れてきた。
「私は、これから妻を迎えに行きます。川田さんは安全な所に避難していてください。」
駅の状況が気になり進むことにした。
道路は車で埋めつくされていた。
まるで、バリケードのように商店街方面を塞いでいるようだった。
車の上を歩いていくしかない。
既に車の上を歩いて逃げていった人達もいたのだろう。
ボンネットが凹んでいる車が沢山あった。
事故渋滞の先頭、駅前が見えた。
見渡せるようにバスの上に移動した。
ーーーー
私は叫んだ
「うわぁぁぁぁ!」
地獄絵図。
そこら中に血が飛び散り、駅は既にゾンビだらけだ!
駅に殺到した人たちの大半は感染したに違いない。
動機が激しく、過呼吸になっている。
はぁ!はぁ!はぁ!
この状態で無事なはずがない!
生きているわけがない!
絶望。
その場でうずくまってしまった。
商店街では見かけなかったゾンビに軽い気持ちで来ていた。
昼間に読んだ記事を思い出す。
もう既に世間は認知し始めていたということだった。
原因が分からないだけで。
私はそこから、動く事が、できなかった。
午後三時十二分―星来、ジーンサイドー
「ジーンさん、お腹空いた。」
学校は給食前だった為、お昼は食べていなかった。
「cookie アリマス。サガシテキマス。」
僕とジーンさんは、下で待っていたけど、2 階の社長室に移動した。
椅子に座り窓の外を見ていた。
いつもなら家に帰って友達と遊んでいるのに。
そう思っていたら、社長室のドアを叩く音がする、
ドッ、ゴン! ドッ、ゴン!
叩くよりもぶつかっている音のようだった。
きっとジーンさんの両手が塞がっていてドアを開けられないのだと思った。
僕はドアを開けた。
「うわぁぁぁ!!」
目の前には、テレビや映画で見たゾンビそのものがいた!
ドアを閉めようとしても、ゾンビの伸ばしてきた手が挟まり閉められない!
「助けて!助けて!」
必死にドアを閉めようとドアノブを力いっぱい引っ張った!
でも、僕の力じゃ敵わない、無理だ!
その時、ジーンさんがほうきで勢いよくゾンビを突き飛ばした!
「I`m the one who protects Seira!」(私は星来を守る!)
ゾンビに言い放ち、力強くドアを閉めて鍵をかけた。
僕を強く抱きしめて、泣いてしまった。
「ゴメナサーイ。」
お姉さんのような、子供のような、すごく温かくなる気持ちだった。
ズボンのポケットからクッキーを出してくれた。
ボロボロになっている、有難くて僕も泣きながら食べていた。
でもなぜここにゾンビがいるのだろうか?
「アレハ、ハセガワサーンデース。タイチョウワルイ、イッテマシタ。Virus モッテマシタネ。ダカラ、ZOMBIE ナタ。タブン、toilet ナカイマシタ。ワタシゼンブミタ。デモtoilet ミテナイ。」
ジーンさんは感情的になるけど、しっかりと分析をしていた。
はっと思い。
「パパとママが帰ってきた時に、ゾンビがいると噛まれてしまうかもしれない!」
すぐにジーンさんは答えた。
「Oh!ワタシトセイラデ、ハセガワサーンタオスネ!」
作戦を考えた、
1、部屋からは押しドアだから、勢いよくドアを開ける。
2、開いた勢いで、ハセガワゾンビは階段を転げ落ちる。
社長室は、階段を上がってすぐの所に部屋があった。
3、そして、机を階段の下に落として倒せる!
まずは、机が重すぎて動かないので、中身を全部だした。
机の上には、僕たち家族の写真が飾られていた。2人とも無事に帰ってきて欲しいと願いながら写真を窓枠においた。
全部出しきったので2人で何とか、ドアの近くまで机を運ぶ事ができた。
いよいよ作戦開始、だけど心臓の鼓動が早くなってきた。
ドアノブを掴む手が震えている。
僕の手を包むかのように、ジーンさんが手を添えてくれた。
「We can do it!」
僕を不安にさせないように、笑顔でそう言った。
ドアを叩いて、ゾンビをおびき出す。
ドアの向こう側は見えないけど、そこに立っているのは分かる。
鍵を開けた。
「1、2、3、Go!」
掛け声と共に勢いよくドアを開けた。
が、ゾンビはよろけただけで、階段の方には落ちていなかった。
僕は勢いをつけすぎて倒れてしまったけど、すかさずジーンさんがゾンビの足にタックルをした。ゾンビと一緒に落ちそうな所を、僕はジーンさんの足を掴んだ。
瞬間に、
「マダデス!」
今度は部屋に戻り、机を押した。
机の脚がドア縁に引っ掛かり、押しても外にでなかった。
「ワタシガ up スル!セイラ push ネ!」
ジーンさんが机を乗り越えて階段側に行き、引っ掛かった脚を持ち上げた。
「1、2!1、2!」
掛け声をかけながら何とか半分を出す事が出来た。
僕たちは必至になって気づいていなかった。
「ジーンさん後ろ!ゾンビがいる!」
ガン!
ゾンビがそのままジーンさんに嚙みつこうとしたが、危機一髪でかわす事ができた。
そして、そのまま顔が机に直撃してよろめいた。
「プゥゥゥッシュ!!」
左にかわしたジーンさんが机を押した。僕も雄叫びを上げながら力いっぱい押した。
ゾンビと机は見事に階段の下に落ちた。
机の下敷きになっていると思ったが、ゾンビは壁と机に下半身が挟まって、身動きが取れない状態になっていた。
僕たちは、そこから更にタイヤ付きの工具ラックや、重たいモノを机の前に置いて動かない様に固定させた。
「High five!」
ジーンさんが笑顔で手のひらを出してきた。
ハイタッチ!達成感で僕も笑顔になった。
午後四時十分―生田勇樹サイドー
何も考えらずどれぐらい経っただろか?
あたりが暗くなってきている。
ふと顔を上げてみたら、1 体のゾンビが目に入った。
「小宮!」
私は再び、絶望を感じた。
小宮は若くて、いつも元気いっぱいだった。
人懐っこい性格で誰とでも気が合ういい奴だったのに。
「俺の・・・俺のせいなのか・・・もっと状況を分かっていたら・・・。」
悔し涙が止まらなかった。
「なんで!なんでこうなった!くそ!くそ!なんなんだよこの世界は!もう終わりじゃねーか!生きていく意味あんのかよ!」
嘆いても嘆いても心は空っぽだった。
怒りや憎しみ全てがどうでもよく思えた。
私は立ち上り、星来達の元に帰ろうとしていた。
馬鹿が!
なにも確認していないで帰るのは違うだろ!
生きる希望を捨てるな!
後悔はするな!
前を向け!
私は周りを見渡した。
バイクが一台転倒していて、ガソリンが漏れていた。
漏れたガソリンは、こちらの方まで流れてきている。
あれに火をつければ気を引けるかもしれない。
私は持っていたリュックの中を探した。
即席で、レンチにタオルを巻き、更に油を浸み込ませる。
ガストーチで火を点けたら松明の様になった。
バスの上からガソリンの線上にはそれほど距離は無いが、外せば危機的状況になる可能性を考えると緊張が高まった。
現に、火をみてゾンビ達が集まってきているのだ。
良く狙いを定めて投げた。
見事にガソリンに引火して、そのままバイクまで火が走る。轟音と共にバイクが爆発した!
火は飛び散り、辺りのゾンビにも引火した。
炎から離れているゾンビも音と火に吸い寄せられるように動き始める。
ある程度の数が集まってきたところでバスから降りた。
物陰に隠れながら、駅前のショッピングモールを目指す。
何とかたどり着いたが、シャッターが閉まっている。
「誰かいませんか!」
後を気にしながら、シャッターを叩いて声をかけた。
微かに中から声が聞こえた。
シャッターに耳をあてて聞いてみる。
「パパ!」
妻の声だった。
安堵感で涙が溢れてきた。
「ママ!助けにきた!開けてくれ!」
再び叩きながら声をかけた。
シャッターに耳をあてると、中から男性の声が聞こえた。
「そこから、右側に、従業員用の、ドアがある!そっちに、来てくれ!」
私はすぐさま駆けていった。
分厚い扉にノックをする。
数体のゾンビに気づかれたが、このままドアが開けば問題は無いだろう。
鍵が開いた音が聞こえたのですぐに扉を開いた。
目の前には妻がいた。
「パパ!アリガト!」
「無事で良かった。」
お互い、泣きながら抱きしめた。
「セイラワ?」
星来が無事である事と、ジーンさんと一緒にいる事を伝えた。
妻もフィリピン人であり、ジーンさんとは交流があった為、少し安心したようだ。
先程の声の男性が外の状況を聞いてきた。
妻が務めるスーパーの店長だったらしい。
モール内の店舗従業員や居合わせた客全員が、一カ所に集まっているらしく、そこで説明をして欲しいと頼まれた。モールは混乱を避ける為、警報直後に全てのシャッターを閉じてしまい、外部からの侵入と内部からの外出を禁止した。
そこで、店長が指揮を執り大きな混乱なく皆を集める事が出来たそうだ。
1 階のイベント用に開けた場所があり、そこには300名程の人達が集まっていた。
妻はずっとそのシャッターの前で、私が来ることを信じて待っていたようだった。
私を見て一同がざわつき始めた。
「皆さん!落ち着いて聞いていただけますか?」
私は、自分の見てきた外の状況をできるだけ細かく伝えた。
表情を見ると、やはり状況把握できていなかったのか、不安な状態になっている事が見て分かった。
「警察や自衛隊はいないのですか?」
誰かがそう質問をしてきた。
確かにそうだ!?
商店街にも見当たらず、学校付近さえも見かけなかった。
避難誘導や混乱した駅前の道路状況を見ても、警察が動いていたようには思えない。
自分たちの身の安全を優先して、全く気にも留めていなかった。
駅前にも交番はあるが、そこまでの確認はしていない。
「申し訳ない。警察や自衛隊が動いているかは分かりません。」
落胆した表情や不満を吐露している。
私は、一刻も早く妻と会社に戻りたかった。
「店長。私達はすぐにでもここを出て、子供の元に帰ります。その前に、物資を分けてもらえませんか?」
店長は快諾してくれたが、既に食料品は皆で分けていたそうだ。
妻もリュックに食料品を入れていた。
その時、電気が消えた。
悲鳴や、ざわつき、パニック状態になっている。
すかさず、店長が声を上げた。
「皆さん!慌てないで下さい!その場で待機して下さい。間もなく非常電源にきりかわりますので、安心して下さい。」
薄暗くはあるが明かりが点いた。
店長の冷静な判断と、まとめる能力には驚いた。
ただ私は、この地域一帯が停電したのではないかと思いより一層心配になった。
午後五時四十一分―星来、ジーンサイドー
「電気が消えた!」
突然の停電にビックリしてジーンさんに抱き着いた。
僕たちは、ゾンビがまた襲ってくるのではないかと、階段の前にバリケードを作って、見張っていた。何故なら、僕たちの方を見てずっとうめきながら手を伸ばしているからだ。
「セイラ!wait ネ。ワタシ、light トテクル。」
ジーンさんがスマホのライト機能を使って、二階に上がっていった。
僕は、厳重なバリケードを作ったから不安にはならなかった。
少し待っていると、二階から降りてくる音が聞こえた。
「うわあ。」
顔にライトを当てたジーンさんが驚かしてきた!
僕は思わず叫んだ!この状況で驚かない方が珍しい。
「ジーンさん!何してるんだよ!」
ジーンさんは無邪気に笑っていた。
でも、もう一人明らかにおかしな行動をとっている者がいた。ゾンビだ!
「ハセガワサーン、スゴイウゴイタネ?」
ゾンビの方にライトを当ててみると、別の方向を見ていた。更に見ている方をライトで照らしても、何もなかった。
2人が顔を合わせる。
再びゾンビの方を照らすと、さっきと同じ様にうめき声をあげながら、こちらに手を伸ばしている。この行動に検証をしてみた。
1、僕が叫んでみた。結果☓
2、ライトをゾンビに当てる。結果☓
3、自分の顔にライトを当てる。結果〇
ゾンビは、反応を示し顔や体も背けようとしている。
むしろ、怖いモノから逃げたがっている様に見えた。
僕とジーンさんは、顔をライトに照らしてお互いの表情が歓喜している事に気が付いた。
「ジーンさん!僕たち凄いよ!絶対にゾンビが苦手な奴だよ!」
「OMG!フタリスゴイネ!」
こんな危機的な状況なのに、楽しい気分になっている。
再度試してみたくて、顔にライトを当てたままゾンビに近づくと、更に激しく動き逃げようとしていた。
僕たちはまた、ハイタッチをした。
後は、パパとママが帰ってくるだけだ。
午後六時五分―勇樹、ウェンサイド―
私たちは、物資を調達していた。
複数名も同じ様に物色している。
外から来た私が、再度外に出ていく事を知って、一緒に行く人たちがいた。
スポーツ用品店に入り、スキーストックを手に入れた。
ある程度は牽制できるかもしれない。
他にも欲しいモノがあった為、背負っていたリュックも大きいものに変えた。
こうしている内に、だんだんと普通の生活には戻れないのだと思えてくると、虚しさが込み上げてきたが、自分たちで生きていく術を手に入れないといけないという、信念も必要なのだと思えてきた。
「店長は外にいかないのですか?」
店長は物悲しげに答えた。
「私も、妻や子供ももいます。物凄く心配なんです。でも、怖くて外に出られない人達もいるんです。誰かがここを、守る必要がある。食料もまだありますから。生田さん、もし外に出られて、ここを助けてもらえるなら、どうか、その時はお願いします。 」
覚悟のある言葉だった。
私は深く頷き、店長の肩を叩いた。
「必ず!助けに戻ります!」
物資も調達できたため、再び先程のホールに戻る事にした。
最後に一同が集まる。
「私たちは、これから外に出ます、一緒に行きたい人はついてきて来てください。」
半数もいかない人数だったが、皆家に帰りたい思いで一杯だった。
残った人たちに店長は声を掛けていた。
「おもちゃ売り場でトランプやボードゲームを手に入れました。皆でやりましょう。ここはショッピングモールです。 」
ニコッと笑い、最後に私たちの元にやってきた。
全員が外に出た後に鍵を閉めるためだ。
まずは、私が先頭に出た。
周りを見渡すと、バイクの炎上も収まり真っ暗だった。
即席の火炎瓶を、バスロータリの中心に生えている木をめがけて投げた。
木に当たり炎が飛び散る。冬だった為、落ち葉に引火して更に広がった。
辺りが明るくなり、状況が見えてきた。
ゾンビ達はやはり火に向かって進み始める。
「皆さん。建物沿いに進み、交差点を左に曲がって下さい。車を越えれば、ゾンビは追ってこれません。」
全員が逃げ切れるように、並び順を考えていた、一列で進み私と妻は最後尾とし、先頭には強い男性を、間に女性をいれ、それぞれが、守れるように進ませた。
「店長。必ず戻りますので。生きていて下さい。」
熱い握手を交わし、店長は扉を閉めた。
私たちはなるべく物音を立てずに進んでいた。
最初に来たときは一人だったが、人が多い事で安心感が得られた。
でも気の緩みは危険だった。
一人の男性の呼吸が荒れ始めて足が止まってしまった。後ろにいた女性がなだめている
だが、女性の方が今にも叫びだしそうだった。先頭を進んでいたグループと、中間付近で 2つのグループに分かれてしまった。
小さな声で聞える。
「おい!進め!」
我慢できなくなったのか追い越していってしまった。こうなると列は一気に狂い始める。
我先にと、後続していき、大きな物音をだしてしまった。
気づかれた!
ゾンビ達が一斉にこちらに向かってきた。
列は完全に乱れ、一同は叫びながら走っていく。
妻は恐怖のあまり、私の手を握ったままだった。
私は、止まったままの男性に話しかける。
「苦しいかもしれませんが、このままだと襲われます!家に帰るのでしょう!?」
開いていた瞳孔が縮まっていき、震えながら頷いた。
「私が、援護します!進んで!」
先の方では、若い男性が中年男性を押し倒してしまった。
起き上がる間もなく、ゾンビが襲い掛かる。
その後ろを進んでいた女性の足が止まり、完全に恐怖で動けていなかった。
女性にゾンビが襲い掛かった。
その隙を数名がすり抜けていく。
先程の男性の歩が遅いため、私たち 3 人は完全に孤立してしまった。
建物を背に、ゾンビ達に囲まれてしまう。
私は、懸命にスキーストックを振り回した。
男性が小声で言った。
「こうなってしまったのは僕のせいだ。僕の、リュックの中に財布があります。その中に、免許証が入っています。」
溢れんばかりの涙と震えた声で続けた。
「僕たちには親はいません。でも、家に妹がいます。妹に、このリュックを届けてくれないでしょうか?兄ちゃんは、頑張ったよって伝えてくれないでしょうか?お願いします。 あと、ーーー」
言い終えると、リュックをおろしゾンビに突っ込んで行った。
私は、何も声を掛けられず、呆然と見ているだけだった。
彼が道を作ってくれたが、当然のごとくゾンビは彼を襲った。
「痛ぁぁぁ!早く行ってください!」
彼が両手を広げてゾンビ達を押しのけていった。
私は彼のリュックを手に取り、妻を引っ張りながら進んだ。
後を振り向く事が出来なかった。
先の方から、1 人の男性が金属バットでゾンビを薙ぎ倒しながら戻ってきた。
一番先頭を任せていた男性だ。
「おいリーダー!大丈夫か!」
彼の援護のお陰で、車の上の安全な場所まで辿りつくことが出来た。
車上には、出発時の半数程しか残っていなかった。
こんなはずではなかったと、後悔の涙が止まらなかった。
「ありがとう。」
先頭の彼に伝えると、私と妻は手を繋ぎながら進んだ。
「ちょっと待ってくれ!俺はあんたに救われた。あんたが来なければ、ずっとシャッターの中だ!俺の名前は、晃!あんたは、絶対に生きてくれよ!」
私は頷き、車の上を進んでいく。
車渋滞の最後尾までたどり着き。
それぞれが帰路につく。
命を懸けた出来事で、放心状態となり、まるで私たちの方がゾンビのように見えた。
押しのけたり、見捨てたり、目の前で喰われたりと、後悔や恐怖に駆られたに違いない。
再び晃が話かけてきた。
「聞き忘れていた、リーダー!名前は?」
「生田勇樹と妻のウェンだ」
「勇樹さん!俺は絶対に生き残る!だから!必ずまた会おう!その時は、俺の彼女も紹介するからさ。」
晃の眼は、輝いているように見えた。
「わかった。それなら、今度はうちの息子と、もう一人を紹介するよ。」
握手を交わし晃は、走って帰っていった。
私と妻は、来た時の自転車に乗った。
リュックをカゴに入れ、妻が荷台に座る。
商店街の近くには、駅から流れてきたのか、1体のゾンビがいた。
あれほどの大群を見た後では、何も思わず通り過ぎて行く。
会社に着いた時は、時間はもう二十時を過ぎていた。
自転車を止め、鍵を開け、荷物を運ぶ。
妻が先に入った。
「ママ!」
星来が抱きつく。私はジーンさんに、有難うと伝え握手をした。
妻とジーンさんがハグをした。
「パパ!僕とジーンさんが大発見をしたんだよ!」
星来が私の手を引き連れて行く。
「なんでここにゾンビが!」
私がいない間の出来事を、星来とジーンさんが熱弁してくれた。
2人もかなり大変だったようだが、目は輝いていた。
さっきの晃もそうだが、生きる事を諦めない人間の目は輝いている。
「ただいま!」
「おかえり!」
4人で泣きながら抱きしめ合った。
心身共に疲れた長い一日だったが、私たちはこれからこの世界を生き抜いていかないといけない。
明日からは世界が変わっている。
「The beginning of end」
第一話 終わり
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
終末世界の1日目が終わり、そして始まりました。
生田家がこれからどうやって生き抜いて行くのか?
ぜひ見守っていただけたらと思います。
それにしても、勇樹は泣きすぎだな笑笑
次回予告
ゾンビにも弱点はある?勇樹の決意と家族の絆
第二話 出発の時
ぜひぜひ読んで下さい!
面白かったら高評価とブックマークを宜しくお願いします。




