補足 火星人の名前のこと
火星での第一子の名前は家名を継がない方の親の姓+家名を継ぐほうの親の姓で構成され、第一は家名を継がない方の親の姓を名として用いることになる。
つまり第一子には「名前がない」。名がつくのは第二子以降である。
これは一夫多妻や一妻多妻があたりまえの火星での婚姻事情を反映している。
つまりアリア・エンバートンといったとき、両方が姓であるから、アリア家とエンバートン家の第一子の娘であり、かつエンバートン家を継ぐものである、ということがわかる。
さきにも述べたように火星では一夫多妻や一妻多妻があたりまえであるから、腹違いの兄弟姉妹が何人もいる可能性はあるし、両姓を継いでいるからといってその中での順位がどうなのかを必ずしも明示しない。
ただし、第一子相続が基本形である火星社会においては、家督を継ぎうる立場であることが名前じたいに埋め込まれている。
但し、婚外子や、有力な家名を継承させたくないばあいでは上の姓や名が継承される、などの例外規定がある。ゆえに名から姓が供給されて姓が絶滅しない。
姓の強さが家の強さを象徴している。強い家の名が上に来ることは憚られるため、家名を継がない場合に、子に家名を継がない側の姓をファーストネームに与える場合がある。名による貴族性といっていい。
実際このような例外規則が成り立つのは一部の貴族や有力者に限られるが、この場合一度消えた姓が復活することとなる。
このようなこともあって、火星社会の姓はきわめて多様なものとなっている。
***スペースノイドは多様か?***
ところで、現在の人口の流動スピードを考えると、国家間の遺伝的差異はいずれ、殆ど消失する可能性があります。国際移動者は現在3910万人/年。国別でみると、人口に対して0.63%/年の国際移動が発生しているようです。 勿論隣国間の移動が多いのですが。たとえば大陸間移動を0.2%/年、一世代25年、人種国籍関係なく婚姻が進むとした場合、移住による大陸間移動だけで千年もたたずに大陸間の遺伝差異が初期の1%まで低下する(試算ではおよそ560年)ようです。しかしこれも人口の大部分を抱えるアジア圏を平均化してしまっているので、人口比重を考えるとさらに早い可能性すらあります。未来の地球人を考える場合、人種は殆ど通用しないのかもしれません。いっぽうで、それより以前から宇宙に移住した人々がいるならば、創始者効果も相まって、未来の地球人とはそうとう異なった顔立ちになるべきでしょう。そして、宇宙圏でのスペースコロニーにおいて疫病は大敵です。コロニー間での人の移動は厳しく制限されるでしょう。数十世代もたてば、地球圏の人々は標準化され、宇宙圏の人々は先鋭化する方向に動き、外見的差異はとりわけ際立ったものになるはずです。
ゆえに、宇宙空港を訪れた地球人は、宇宙居住者の多様さに目を見張ることになるでしょう。
人種概念が最後まで残るのはスペースコロニー間かもしれません。
地球は…旅するのに適しすぎているから。




