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ATLAS Personal Plus AR/ATLAS IIー人は誤るものである―

私たちは、人は基本的に間違った行動をする、と教えられる。

放任されれば、いずれ万人の万人による闘争状態にいたる、愚かしい霊長類であると。

したがって、私たちは何かしら「正しい」存在によって導かれねばならない、と。


(それにしても絶対王政時代のロジックを、この時空暦52年にいたってまで使っているとは。

なんと愚かしいのだろう。退行していると言わざるを得ない。)


愚痴はともかく、そのためにあるのがATLAS Personal Plus ARだ。

地球社会においてもっとも一般的なAIシステムだ。

ATLASの各モデルを合わせれば、その普及率は95%を超えるだろう。

私たちはATLASから言語を学び、ATLASに教えられ、ATLASに政治をゆだねて生きている。

私たち地球社会に、もはや政府はない。

地域ごとの統括AIサブシステムが、住民の意見を総合して何をすべきかを決めている、


何かを聞いて返ってくるのでは、もう遅い。

失敗はすでに起きている。

したがって、間違ってはいけないような、業務や会議の際には、常にリアルタイムでの指示と意思決定支援が不可欠である。そのためには常時稼働し続け、状況に応じた支持をこちらから聞く前に提示しなければならない。そのため常時稼働し続け、各社ARグラスと融合したPlus ARモデルが普及している。表示速度などは各ARグラスに制限されている。これは通例の質問であれば瞬時に解答できる能力がある一方で、人の処理能力を加味してのことだ、といわれている。

・ATLAS Personal・・・質問型のテキスト・画像ベースAGI。

・ATLAS Personal Plus・・・常時バックグラウンド稼働型のテキスト・画像ベースAGI。

・ATLAS Personal Plus AR・・・常時バックグラウンド型で、ARグラスとの連携機能付きAGI。


ARグラス・・・各社が製造しているARグラス。この製品に限らず電化製品の具体的な設計やプログラムはほぼ産業向けモードのATLASに代替されており、組み立てなどの大雑把な仕事を行う工場労働者か、設計方針やニーズを”不適合化”するために人間の会社や企業が存在している。つまるところ、敢えて外して、潜在的なニーズを偶々当てるために人間がいる、というようですらある。

なおARグラスはとんでもなく高額だ。それでも誰もが持っているというのは、そうしなければ社会で生活することができないためである。ARグラス売りの闇は深い。一生ARグラスの借金で終わる人生もまた、非常に多いのだ。なお私のARグラスは、祖父のものである。


ARグラスに表示される虚像は、視線を特定の向きに向けたときのみ視認できる無限遠の文字列だ。

したがって、見ないようにすれば見ないことができる。但し、重要な局面、たとえばARモードの起動時などは、警告メッセージを読み続けなければならないよう強制される。

もっともそうした警告メッセージは、ATLASの利用を担保する上で重要なのであって、ユーザーにとって重要な表示というわけではまるでない。そして、それに了承しなければ使用することはできず、「霊長類」の頭脳で生きなければならなくなるのだ。

――私のように。



ATLAS II (Integrated Intelligence)

主に大企業向けの「ATLAS」ASI版である。

AGI版のATLASよりはるかに高い演算能力を持っている…いや、いる、はずなのだ。

地球界隈では、AGIは人間と同等の万能人工知能、ASIは人間をあらゆる点で上回る人工知能、と考えられている。ゆえに、私などの考えたことがATLAS IIを長考させて、さらにその判断を覆させるようなことがあってはならないのだ。

もしそんなことがあるならば、ASIを名乗るには不足がある、ということを意味するのだが…。

なお、これが火星だと逆転している。

地球基準で言うところのASIとしか言いようのないAIが、自身はAGIだと言い張っている。


つねに「私はAIゆえ、間違えるかもしれません」と言い張るのである。

さて、ASIを実現するにあたり、地球のAI会社は奇妙なことを考え付いたらしい。

人を超えるAIを作るためには、人の体を持たねばならない、と。

これは火星における、創始者の頭脳や身体までを模倣した、”不滅の指導者”構想に対するカウンターなのかもしれないが、じつのところはよくわからない。

すくなくとも、だいぶ人間的な発想である。

設計者が真の意味でのASIなら、こんな愚行はしないだろう。

結果として、ただでさえあらゆる資源が尽きかけて久しい現代地球にもかかわらず、最も高性能でグラム単価あたりで高額な機械はATLASのヒト型筐体、という事態が生じてしまっているのだ。




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