流れ着いた者
いきなりの急展開に驚いた俺たちは、もちろんマザーに出張ってもらった。
『ボルダの生体ドロイドじゃないか!いったいどこからこんなものを?』
「ボルダ?」
『おや、説明しなかったかい?
この星のエネルギーに似たものを使った文明のことさ』
「え……エネルギー解析の参考にしてるっていう?」
『ああそうさ。
で、この子はどうしたんだい?あんたがマスターになってるようだけど?』
「それを聞きたいのは俺の方だよ。
わけわかんなくてさ」
『ほほう?
とりあえず前後関係を話してくれるかい?』
「おう、わかった」
俺は前後関係を簡単に説明した。
『なるほどねえ、バイタル偽装してたのかい……。
さすがは有機システムのお家元ボルダの作品だ、そりゃ探知機も気づかないわけだネ』
「お家元?」
『ボルダって星はね、有機ドロイド技術にかけては銀河最高峰レベルなんだよ。
どれ、ちょっと調べてみるかい。
ムギといったね、わしはおまえの主人の保守システムだよ。
ちょっとこの婆にお前さんのバイタルデータを見せておくれ?』
「……」
俺の方をムギがチラッとみてきたので、俺もうなずいた。
「問題ないぜ、俺らの体はこのマザーが作り、全面保守してくれてんだ」
「了解、デハ定期保守モヨロシク」
『ふうむ……こりゃあ、わしらと同じだね』
探査ロボットをもってきて、軽くムギの体を調べていたマザーが言った。
「同じ?転移してきたってことか?」
『そうさ』
「……念の為にきくけど根拠ある?」
『とりあえず仮の保守契約を結んだ事で、各種履歴データにアクセス可能になったんだが。
時空転移が原因と思われる記録の乱れがあるのサ』
「へえ……もちょっと聞いていい?」
『ああ、いいともさ。
主観時間で約120年前、この子は地球にいたらしいよ。目的は不明だけどネ。
で、座標軸から突然に現在地ロスト。
ロスト前の最終地点も、わしの船が転移した位置に近い……おそらく同じ特異点が地表付近で揺れ動き、近郊にいたこの子を飲み込んだんだろ。
そして再び得られた位置情報はこの星の東大陸のものってわけだ』
「へ、おまえ地球にいたの?」
この、二本足で立ち歩く猫みたいなのが?
『だからいったろ目的は不明だと。
転移により大きな損傷を受けて、さらに主人はロスト。
この時に細かい記憶も飛んだようだね。
自己修復したけど主人には再会できず、百年過ぎたところで契約解除ってわけだネ』
「契約解除?」
『百年以上なんの理由もなく所在不明で連絡がつかない場合、死亡とみなされるのさ』
ああなるほど。
「百年か……じゃあ、その間に魔法も身につけたって事かな?」
『ん?魔法?』
「だってこの子、名前つけたら光の魔法陣たいなのが広がったんだぜ?
よくわからないけど魔法を使ってるって事だろ?』
例のエネルギーも出てるしな。
けどマザーには『それは違う』と言われた。
『それはボルダ式の魔術だね、おそらくだが。この星のものとは違うよ』
「ちょ、ちょっと待った!」
『ん?なんだい?』
「あの、ボルダって星にも魔法があるのか?
単にエネルギーを利用するのでなく?」
『ああ、あるよ。
そもそもボルダは銀河でも珍しい、魔科学という不思議な技術で発展している国なのさ』
な、なんだそりゃ?
どこぞの魔砲少女アニメか?
魔法と科学の融合なんて、物語としては面白いが現実にやるかぁ?
和服を着て靴をつっかけるなんてレベルじゃねーぞソレ?
『奇妙に思うだろ?
けどね、広い宇宙にはそんな星もあるのさ』
「へえ~……」
ずいぶん変わってるというか……そんな深夜アニメみたいな設定の星が現実にあるのかよ。
なんというか、宇宙は広いなオイ。
「まさかと思うけど。
資源が枯渇して色々とやらかしたあげく、たどり着いたのが魔法でしたなんて言わないよね?」
『……ほほう』
苦しまぎれに言ったはずのひとことだったのに、マザーは感心したように微笑んだ。
え?え?
『いい直感じゃないか』
「え、マジでそうなの?」
『詳しくは知らないが、とっくの昔に滅亡した惑星に不時着した移民船団が今のボルダの始まりなんだよ。
資源もなく汚れきった不毛の惑星で何とか生き延びようとした。
ま、普通なら全滅して終わってたんだろうね。
だけど最後の最後で何かが起きて……まぁ色々あって今に至るそうだよ』
「へえぇ~……」
すでに滅びた星に流れ着き、生き延びようと足掻いた元移民船団の子孫が今の国民で、新たに編み出した『魔法』により新たな文明を築いていると?
そんなドラマチックな歴史の星が実際にあるのか。
宇宙ってすげえなマジで。
『宇宙に興味がわいたかい?』
「ああ少し」
『そうかい……まぁ今後の展開によっては宇宙に行く可能性もあるだろうネ』
「え、あるの?」
意外な返答に驚いた。
だけどマザーの返答は、そんな俺の反応こそ意外と言わんばかりだった。
『そりゃあ、わしの本質は宇宙船だからネ。
しかも本来の兵装や戦士たちをすべて失っている今、戦士型で使える駒はあんたたちだけなんだよ?
今のあんたたちの旅は、探査だけでなくその体に慣れてもらう意味もあるんだ。
いずれ戦士端末が必要になったら、その時にはキリキリ働いてもらうよ?』
「おう、よろしく頼む。
だけどマザー、あんた大破したんじゃないのか?
壊れたのに宇宙で何すんだ?」
『おバカ、なんのためにわしが衛星軌道にいると思っているんだい?
残っていたアマルティアの施設のおかげで修復も進んでいるよ。
もっとも資材が足りない。
ここに残されている資材はあくまで、ここの維持管理のためのものだからね』
「なるほど……つまり資材を確保しに行く必要があるのか」
『近郊に小惑星帯があるようだから、そこに小型探査機を飛ばしてるよ』
「そんなんで足りるの?たしか以前は」
『以前のすべてを復活させる必要はないのさ。
あれの本体は恒星規模破壊戦用の工房と兵装だったからね』
「あ、そりゃ無用ですね」
『そういう事さ』
なるほど。
その後にはムギの調整などを軽く行い。
だがその後は公園の管理人室で遊んでいるうちに眠くなり、そのまま雑魚寝状態になってしまった。




