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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
交流
32/100

タシューナンの兄妹

 港に現れたアムダル王太子を、俺たちは車に積んでタシューナンの離宮に移動する事になった。

 ……あーうん、正直言うと、はじめての異世界の町を先に堪能したかったんだけどね。

 いくらなんでも、次期国王様じきじきのお願いを無碍にもできないだろ、仕方ないさ。

「はははは、こりゃすごい!ほんとに飛竜なみの速さだ!

 しかも……うーん、見たこともない装置ばかり。

 素晴らしい、なんて素晴らしいんだ!」

「ちなみに、その座席に座ったこの世界の人間は、殿下が史上初ですよ。

 ところで、乗り心地はどうです?」

「最高だよ!

 いやはや、これが商用の安物メカって本当なの?」

「はい、そうですよ。

 これで最高だなんて、もし地球の高級乗用車に乗ったらきっと驚きますよ?」

 アムダル王子は、地球の車には初めて乗るそうで……当たり前だけど超ハイテンションだった。

「しかし悪いね、アイリス嬢の席を借りてしまって。

 たしか、地球の車の場合、運転手の隣に座るのは客人でなく助手なんだろ?」

「普通はそうなんですけどね、こいつは後部座席に背もたれがありませんから」

「ん?ないと何かあるのかい?」

 俺は自分の頭を指さした。

「殿下、人間の頭には脳があるわけで、そしてその重さは首が支えてます。

 車が急な動作をした時、その重さで、まれにですが頭が引きずられ、首に負担をかける事があるんですよ。

 だからです。

 本当はお客様は後部座席というのが礼儀ですけど、安全のため、あえて助手席に座っていただきました」

「なるほど……そういう理由もあったのか」

 アムダルは俺の隣、アイリスが座っていた席で納得げにうなずいていた。

 ちなみにアイリスは後ろの席だ。

 畳んでいた後部座席を広げ、座らせている。

「けど、いまさらだけど、いいんですか?

 ひとりぼっちで、しかも初対面の外国人の車に同乗なんて。

 不用心じゃないです?」

「ああうん、不用心だよ。きっと戻れば、妹にドヤされるだろうね僕は」

 クスクスとアムダルは笑った。

「けどねハチ君、これは僕にとってもチャンスなのさ」

「チャンス?」

「コルテアの一件で今、君たちの立場は特殊でね、まぁいわば各国の利害の外にある状態なのさ。

 だってそうだろ?

 まず君たちは精霊分に汚染されておらず、当然、魔力も持っていない。

 この時点で、異世界人をとらえて魔力を絞りたい者たちに君らはなんの価値もない事になる。

 次に、持っている技術レベルが高すぎる事。

 何人かの研究者のコメントだが、アマルティア研究ですら足踏みしている我々では解析できないだろうって事だ。

 おそらく、この車を奪い取ったとしても、解析どころか動かす事すら無理なんだそうだ」

 そういうと、アムダルは肩をすくめた。

「この時点で、中央大陸国家の連中にも、技術的興味をもつ連中にも、君らは魅力的ではなくなった。

 おまけに、君たちの上位存在である『マザー』氏とやらは天空にいるんだろ?

 しかも、我々の通信網の修理と再整備を引き受けてくれているときた」

「ですね」

「だからね、僕らは考えたのさ。

 だったらまず友誼を結ぼうとね。

 よくわからない存在なら、まず知ればいい。

 敵対がこわいなら、友達になればいいじゃないか。

 だからこそ僕がきたのさ」

「……次期国王様みずから?」

「王太子の今だから、可能なのさ。

 僕は政治的にはお飾りでね、少なくとも現時点でどう動いたって、変な色眼鏡で見られる事はない。

 だけど、さすがに国王になっちまったら、いくらお飾りでもそういうわけにはいかないからね」

「あー……なるほど」

 立場が軽い今だからこそ、いきなり突撃も可能ってわけか。

「僕は政治の事はよくわからない。

 でも、それでも僕はこの国の王族なんだよ。

 だから、もし君が強い魔力を持っていて、多くの人が狙っているなら……さすがにこんな事はできなかったね。

 それどころか、もしかしたら積極的に君を確保し、利用しようとしたかもしれない」

「……」

「でも現実は違う。

 君に対しては各国は沈黙、もしくは、いち旅人として友好的に当たろうってところに意見が一致しつつある。

 それに、僕自身も君を見て、敵対するより友誼を結ぶべきって気持ちを強くしたよ」

「……」

「だからこそ、君たちを招待したんだ。

 僕は、君たちと友達になりたい。

 僕たちを、僕たちの国を知ってほしいんだ」

「……ストレートな次期王様だなぁ。それでいいの?」

「ふふ、うちは有能な妹がいるからね。

 僕はせいぜい理想を語り、看板役をすればいいのさ」

「……それ、いばること?」

「いばることさ!ははっ!」

 ケラケラとアムダルは笑った。

「殿下、パインアメいります?」

「ん?飴かい?」

「そそ、日本のやつ」

「ほう、それはぜひ!」

「了解、アイリス」

「うん……はい、殿下」

「ありがとう!」

 アムダルは、アイリスからパインアメを受け取ると口の中にいれた。

「おお……ほへは、はんほ、うまひアメだ!」

「どうも、でも、さすがによく聞こえないっす」

「この手の甘味なのに……くどさが……全然ないのも……ふ(・)ばらひ(・)い!」

 口の中でパインアメをコロコロやりながら、アムダルは楽しげに笑った。

 あーうん、すばらしいと絶賛してくれるのね。

 ありがとう、俺も好きなんだ、パインアメ。

「あ、そうだ、殿下質問」

「ん?なんだい?」

「俺たち、タシューナンへの入国手続きもしてないけど、いいのかな?」

「ああ、それは大丈夫」

「なんで?」

「僕を運んでたって言えば問題ないさ」

「あ、そっか」

 なるほど。

「ちなみにきくけど、コルテア側には上陸してないんだよね?」

「ああ、してない。シャリアーゼにも入ってないよ?」

「オーケー、だったら問題なしさ。

 コルテアを通さず、中央大陸の沿岸から直接我が国に入ったことになるからね。

 離宮についたら文官を呼ぶから、彼らに手続きさせよう」

「助かります」

「ははは、むしろ僕が面倒をかけてるんだ、問題ないさ。

 さ、それより急ごう!」

「え?」

 ちなみに今、エブリイが走っているのはハイウェイだ。

 どうも、中央大陸のあの道は海底トンネルを抜けたあと、そのまま南大陸を南下する道と東に向かう道に分離するらしい……で、その延長線上らしいのだ、この道は。

 つまり、結構なペースですでに走ってるんだが?

「いや実は、王宮にいるはずの妹が離宮に向かっている気がするんだ……こう、すごくね。

 ちなみに離宮まで、あとどれくらいかかるかな?」

「ちょっとまって……アイリス、ちょっとスマホだして」

「はい」

 後部座席からアイリスがスマホをつきだしてきたので、声をかけた。

「オーケーグー○ル【ピッ】タシューナンの離宮広場まで誘導してくれ【わかりました、グー○ルマップでタシューナン離宮広場まで誘導します】」

「!?」

 アムダルが驚いた顔でスマホを見ていた。

「それは?」

「俺の個人端末です」

 つーか、異世界の地図もグー○ルマップの名称なんかい。

 まさかとは思うけど、本当に地球のグーグルが作ってるわけじゃないよね?

「アイリス、マップに所要時間出たか?」

「あ、はい、約30分と出ました」

「だ、そうです殿下」

「な、なるほど……すまない、急いでくれ」

「了解!」

 俺はアクセルを踏み込んだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界人=搾取してもいい資源。 なんていう非・常識が無ければフレンドリィで良い殿下ですね。
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