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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
旅人と接敵
22/100

シャリアーゼに向かおう

 マザーに物騒な情報を告げられ、そして一夜が明けた。

「ん……」

 今朝は車中泊でなく、キャンプ場のテントサイトでの目覚めだ。

 といっても俺のテントじゃない。

 管理棟の裏に謎のゲル、遊牧民の家みたいなのがあって、何かと思ったら常設の貸しテントだったんだ。

 よくわからない封印みたいなものがなされていたが……管理棟で『一泊』の手続きをすると使えるようになったんだよね。

「……」

 鳥の声がきこえる。

 爆睡しているアイリスをそのままに、俺は簡易ベッドを抜け出した。

 

 外に出ると、さわやかな森林公園キャンプ場の風景。

 霧がたちこめていて、風にそよぐ木々の葉の音とか、そういう自然音だけが聞こえている。

「ああ、いいね」

 こんな朝は久しぶりだ。

 これが厳密に言うと車中泊だってんだから、宇宙人の科学ってのは本当にすごいもんだ。

 ──さて。

 しばし散歩をするのもいいが、その前にする事がある。

 俺は炊事場で顔を洗うと、管理棟に足を向けた。

 

 

 管理棟の奥には管理人室があり、そこには冷蔵庫がある。

 冷蔵庫の中には野菜類などの他、昨日運び込んだ処理済みの生魚、それに干物もあった。

 生魚は塩水につけた後、陰干しのようにして収納してあったが──。

「おー、ちゃんと一夜干しになってら」

 干物はわかるが、一夜干しは釣りのアニメで作ってるのを見ただけだ。

 完全に見様見真似(みようみまね)だったんだが……干物は冷蔵庫でも作れるって本当だったんだなぁ。

 視線を巡らせると、管理人室はそれだけで暮らせるようにもなってるようで、IHコンロにミニ炊飯器まであった。

 しかし。

「これ、保温機能ないじゃん……って俺のせいか」

 俺は仕事の関係で、帰宅時間が不安定になりがちだった。自炊のつもりだったのに買って帰る事もあった。

 それで、たくさん炊いて保温しておくのでなく、食べたい時に食べたいだけ炊くスタイルを採用したんだ。

 だからウチには、おひとりさま用にスパッと炊ける炊飯器具しかない。

 無洗米と組み合わせると、たしかに「食べたい時にすぐ炊ける」仕組みが出来上がったわけで……。

 俺の記憶から道具類を作っているんなら、そりゃあ、そうなるわな。

 とりあえず、1.5合炊きに米と水をいれ、炊飯スタート。

 次に、鍋に昨日食った魚たちの切れっ端を洗ってぶち込みIHコンロで煮る。

 だしの元もあるようだけど、ちょっと味付け程度にはなるだろう。

 これまた昨日使った野菜の切れっ端類を刻んでいると、お湯が湧いて魚のダシが出始めた。

「ふうむ……悪くないか?」

 ごそごそやっていると、ゲルもどきからアイリスが出てきた。

 アイリスは俺の居場所がすぐわかったのか、まっすぐ管理棟に近づいてきた。

 管理人室の窓をあけ、声をかけた。

「おはようアイリス」

「おはよう──パパ、わたしがやるぅ〜」

「ありがとよ、でもその前に手と顔を洗ってこい」

「わかったぁ〜」

 ふらふらと去っていくアイリスを見て、俺は作業を続けた。

 しばらくするとアイリスがやってきて、俺に何かをつきだした。

「なんだ?」

「パパ、歯磨き」

「あ」

「いってきて。やってるから」

「おう」

 

 

 言われるままに歯磨きをして戻ると、アイリスが俺のあとを引き継いでいた。

「これ飲んでて、もう少しかかる」

「……手伝うことないか?」

「お魚焼いてて」

「おう」

 はやっ!めっちゃ早っ!

 

 そんなことをしているうちに次々と完成し、ふたりで朝食となる。

 ごはん、焼き魚に簡単だが味噌汁……よしよし、人間らしい朝食だ。

「よし、いただきます」

「いただきます」

 朝食を開始。

 その席で、アイリスが口を開いた。

「ねえパパ、順調に行くとシャリアーゼまでどのくらい?」

「早ければ午前中、遅くとも昼すぎには着くだろうな、順調なら」

 残りは200kmくらいのはずだ。

 光学迷彩で隠してあるとはいえ、これ以上近づくと気づかれるかもしれない──そう思っての設定だった。

「確認するけど、外から見るだけだよね?」

「ああそうだ、市街には入らない。そういうのは東大陸までお預けだよ──ただ」

「ただ?」

「俺まだ、この星の文明をまったく見てないんだ。ただのひとつもね。

 だから是非、渡航前に見たいんだよ」

 いきなり砂漠からの旅だった。

 ルワンさんとの会話も砂漠の中だったし、あの少女の死んでたところも、要するにあれは昔の祭壇、要は遺跡ってやつだ。

 つまるところ、俺はこの世界のちゃんとした『町』を一度も見ていないんだよな。

「市街の写真だけ撮って、そして東に向かう街道に入る。

 南大陸の渡航方法は聞いてないが、きっとマザーのことだ……海上から迎えをよこすんじゃないかな?」

「あー……うん、たぶんそうだと思う」

「だよな、他にないもんな」

 俺は航空機ってやつを知らないし、試作したという話も聞いてない。

 来るとしたら、おそらくは船だろう。

「よし、食べ終わったら出発するぞ!」

「はーい……ねえパパ?」

「ん?」

「管理人室に、こんなのあったよ」

「お、パイン飴じゃん」

 こんなものまで再現されてんのか。

「いいね、それ舐めながらいこうぜ」

「え、それいいの?」

「ん?どゆこと?」

「え?」

 俺とアイリスは、なぜか見つめ合うことになった。

「あー……よくわからんけど、アイリスはもしかして、車に乗ってて飴をなめるのはダメだと思ってる?」

「えっとね……車に乗る時は口にものをいれたり、おしゃべりするのはマナー違反だし、だいいち危ないんだよ?」

「……それもしかして、あの女の子の記憶だよね?」

「うん」

 ああ、それで理解できた。

「ちなみにアイリス、レブル乗ってる時に俺とおしゃべりしてたのは、この世界にない乗り物だからだな?」

「うん」

 単車はもちろん自転車もないって話だもんな。

 つまり。

 アイリスが言ってるのはこの世界の、馬車のような乗り物でのマナーか決まりって事だな。

「マナー違反ってのはともかく、ものを口にいれたりおしゃべりすると危ないってのは、なんとなくわかったぞ」

「?」

「サスペンション、つまり衝撃吸収用のバネだよ」

 俺は簡単に説明した。

「車で砂利道から舗装路に出たら、車が揺れなくなったろ?

 けどな、あれでもだいぶサスペンションで揺れが軽減されてるんだぜ?

 もしサスペンションが全然なかったら……あの砂利道では、すごい事になってたと思うぞ。

 たぶん舌かんだり、何かこぼしたり」

「……」

「そういう事があって、そういうルールができたんじゃないかな?」

「……ありうる」

「だろ?」

「うん」

 俺たちは、うなずきあった。

 

 

 そして食事の約30分後。

 俺たちはシャリアーゼに向かって出発した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 外から見る程度ならドローン撮影とかできないかな? 望遠で撮影できればそれなりに情報は集まると思う まあ、それを探知できる方法が向こうさんにあったら困っちゃうけど 逆探とかされるかな
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