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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
ひとり旅から、ふたり旅へ
20/100

冷蔵庫と情報

 干物側が終わり、次は自分たちの食事の方だ。

 といっても今日は主食がないわけだが、試食会と思えばこんなものだろう。

「やる!」

 アイリスが、調理もすると宣言した。

 まぁなぁ、俺よりうまそうだしなぁ。

 俺はリーダーシップをとる事をすっぱりあきらめて、作ってもらう事にした。

 

 なるほどアイリスの技術は本物だった。俺にもすぐわかった。

 なんつーか、手際がいいんだ……って、あれ?

「ちょいまてアイリス」

「なに?」

「あれは何だ?」

 ちなみに炊事場はガスでなく、よくあるキャンプ場の「かまど」だ。

 アイリスが調理しているのは、魚をさばく関係で使った広い場所のかまどなんだけど……ちょっと離れた別のところでも、かまどに火が入っていて、小さい鍋が湯気をたてていた。

 いったい、いつのまに?

「ああ、パパが干物づくりしてる時に、ちょっと」

「ちょっとて」

 たしかに、慣れない魚に試行錯誤していたからなぁ。気づかなかったかも。

「あれ中身はなんだ?」

「お米」

 ……なに?

「米があったのか!?どこに?」

「これ、管理棟にあったよ」

「……無洗米じゃねーか」

 しかも、俺がいつも買ってたやつだ。

 野郎ひとりの炊事だろ、面倒くさいからって、いつもコシヒカリの無洗米を買ってたんだ。

 それがそのまんま、そこにあった。

「でも、どこに?倉庫は見たつもりだったけど」

「管理人室みたいなとこにあったよ?」

「あ」

 それって、もしかして正式な資材でなく、私物扱いってことか?

「あー……ああうん、わかった、なんかマザーらしいお茶目だわ」

 たぶんだけど、アイリスに発見させるためにわざと変な場所に置いたんだな?

 理由はわからんけど、なんともマザーらしいお遊びだった。

「それで、いくつあった?」

「四袋」

 俺がいつも買ってた袋だから、5kgのやつが4つ、つまり20kgか。

「んー、どれくらい食うかにもよるけど、そう長くはもたないな」

 ひとり頭10kgと考えたら、俺の昔の計算なら一ヶ月半もあればなくなったはずだ。

 一合の米は、だいたい150gってところだ。

 かりに10kgを150gで割ったとしたら、だいたい67食ってところになる。

 実際はおかずも食べるからと少なめに炊いたとしても、せいぜい70食が限度だろう。

 一日三食としたら、三週間と少しでなくなるわけだ。

 

 ただし、ひとり一食一合というのは、決して少なくない。

 俺はドライバーだし、アイリスも普段は座りっぱなしだ。

 その状況で二人、一食二合におかずまで食べていたら、おそらく確実に多すぎる気がする。

 この身体で太るかはわからないけど、その意味で言うと……適量はどうなんだろうな?

「んー、食べてみて決めるといいかも」

「だな、そもそもこの身体での食事の話だし、試してからの話か」

「わたしもそう思う!

 それに、なくなって他から入手できないなら、その時はまた別途相談すればいいし」

「あー、それもそうか」

 アイリスはにっこりほほえんで言いきった。

 

 

 やがて食事が完成した。

 しかし、計算違いがまた発生した。

「パパ、管理人室に冷蔵庫生えてた」

「……おい、冷蔵庫はタケノコじゃねえぞ。生えてくるわけが」

 わけがないと言おうとして、俺はふと思いついた。

 そう、ここはマザーの管理している空間だ。

 いつのまにか冷蔵庫作って置いてあったとしても、不思議はないな、うん。

「ま、まあいい……で、大根が入ってたと?」

「野菜室に色々入ってたよー」

 ははぁ、マザーの差し入れか。

 それはありがたいけど……けど、なんでかな?

「アイリス、マザーに冷蔵庫作ってって頼んだか?」

「ううん、頼んでないよ。パパが頼んだんじゃないの?」

「俺もまだ連絡してねえよ、直接通信は非常時だけだしな……アイリス、食事がすんだらスマホちょっと貸せ」

「はい」

 

 

 アイリスが使うようになってから、たいていスマホはアイリス用になっていた。

 食事がすんだ俺たちは「ごちそうさま」をした。

 そしてアイリスからスマホを受けとると、電話帳の「ま」の項目を開いて『まざぁ』とひらがなで書いている番号を呼び出した。

 当たり前だが電話はすぐに出た。

「マザー、ちょっといいか」

『いいよ、なんだい?』

「冷蔵庫なんだが、作ってくれたのか?」

『ああ作ったよ』

「いつ作った?

 俺たちが気づいたのはついさっきなんだけど、俺もアイリスも頼んだ記憶がないんだが?」

『そりゃあ、二人暮らしになったんだ。冷蔵庫くらいいるだろって思ってネ』

 あー……単に気を回してくれただけかぁ。

「そういうことか、わかった、ありがとう助かる。

 ついでに言うと、米とか大根もかな?」

『ああ、そうだよ。

 本来なら、例の管理ロボットたちに田んぼと畑を作らせてるんだけどネ……そっちはまだ時間がかかるんだよ。

 あんたのビークルと接続している以上、その空間の時間を早めるつもりはないからね。

 それに当面は現地人と交流しないって決めただろ?』

「あ、そっか……取引して食料購入できないもんな」

『ああ、そうだよ。

 交流するなと言ったのはわしだし、それで食料もなしってのは片手落ちだろう?』

「たしかに」

 なんとまぁ……ほんとマザーって、こういうとこ頼りになるね。

「マザー」

『なんだい?』

「すまん、ありがとう。本当なら俺から先に相談すべきだった」

『謝る必要はないさ。

 何せイレギュラーな状況だし、第一これは、わしの仕事の範疇だよ。

 ああそうだ、ちょうどいい。

 伝える事があったよ』

「え?伝えること?」

『ああ、そうさ。

 ハチだけでなくアイリスにも聞いてもらうよ?』

「じゃあ、ちょっとまってくれ、スピーカーに切り替えるわ」

 俺はスマホをスピーカーマイクに切り替えると、テーブルの上に置いた。

「いいぜ?」

『うむ、ではハチ、アイリスもよくお聞き。

 まずは、良いニュースだ。

 この世界にある各種職業ギルドおよび、主要国家との通信と交渉に一応だが成功したよ。

 一般旅行者と考えて対応してくれるそうだ。

 いくつかの国と地域を除けば、かなりの部分で安全が確保できたといっていい』

「え、ほんとに?」

『あくまで「かなり」だよ?まだ安心するには早いからね?』

「いやいやいや、それでもめっちゃ嬉しいですよ。

 それってつまり、全世界指名手配みたいな状態で旅しなくてもいいって事でしょ?」

『そうだね、その問題は回避できたろうネ。

 残った問題については後でアイリスに送信しておくからネ、好きにするがいいさ』

 そういうと、笑い声が聞こえた気がした。

 今、携帯でつながっているのは音声だけなんだけど、たぶんマザーは笑っている事だろう。

『で、だ……次は悪いニュースだ。

 コルテアの首長、アリア・マフラーンという女だが、ハチの暗殺司令を出したよ。

 しかも、直接命じるのでなく、暗に示唆して現場にやらせるという方法でね』

「な……え?」

 俺は一瞬、言われた意味がわからなかった。

「あ、あんさつ……暗殺?誰を?」

『あんただよハチ』

「なん・で?」

 いったい、どういうことだ?


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― 新着の感想 ―
[一言] アリアさんェ……もうアリャリャさんでいいな。
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