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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
ひとり旅から、ふたり旅へ
18/100

てやんでえ旅情[2]

 管理棟の中を探したら、ヘルメット、それにライディングブーツにカッパ、グローブ……そして何故か見覚えのある、長靴型安全靴まで出てきた。

 この安全靴、俺がブーツ代わりに何年も履いてたやつじゃん……思わず笑った。

 ちゃんとブーツを用意しながら、こっちも用意する……どっちを使うかは俺任せってか?

 この合理性よりメンタルを優先する思想。実にマザーらしい。

 しかし、本当にすごいもんだ。

 民宿の女将とか似合いそうだよな。

 

 え?警察もいないのにバイク用品なんかいらんだろって?

 あのさあ、バイク用品は警察対策でつけてんじゃねえんだよ。

 単車に乗る時は安全装備をつける。当然のことだろ?

 

 さて。

 心の中でマザーに礼を言いながら、俺はブーツでなく安全靴を履いた。

 だがもちろん、アイリスには安全なブーツを履かせるぞ。

「メットかぶってみろ……よしよし」

「おー」

 メットの感触に喜んでるアイリスに、ブーツと手袋をつけとけと渡し、俺は釣り道具と下着類・タオル・靴下を積む。

 釣り道具を後ろの大型サイドバッグにぶちこむ。釣り竿は当然はみ出るが、後ろに出した。

 まぁ対向車もないし、ゆっくり行くから問題ないだろ。

 さらに、すき間に細かいものを詰め込み、釣り道具が暴れないように。

 右側の小さいバッグには、からっぽの畳めるバケツとゴミ袋だけが入ってる。

「アイリス、入れるもんがあったら入れとけよ」

「ないよー」

「よし」

 レブルのエンジンをかけた。

 軽快だけど歯切れの良いシングルボイスは、騒々しくはないけど、自己主張はしっかりしている。

 おー。

 これも裏では電動化してるんだろうけど、こうしてる分には元のレブルと全然わからねえな。

「よし、後ろに……お」

 見れば、なぜかブーツでなく安全靴を履いたアイリスが。

 いやいやちょっと待て。

「おい、なんで安全靴履いてるんだ?

 ブーツ渡したよな?サイズ合わなかったか?」

 だけど、アイリスは渋い顔で言い切った。

「パパと同じがいい」

「え」

「ずるい」

「……あちゃー……そうきたか」

 あーうん、ダメだな。これは教育上よくない。

 俺は一度エンジンをとめて単車を降りた。

「わかったわかった、俺もブーツ履くから、おまえもブーツ履こう。それならいいだろ?」

「んー」

「んーじゃない、同じならいいんだろ?」

「……わかった」

 なんで不満そうなんだよ。

 ちなみに俺が安全靴を使う理由、そして本当はダメな理由について、念の為に説明しとくよ。

 

 一部例外もあるにはあるけど、まぁ多くの単車はシフトレバーを左足で蹴り上げたり、踏み降ろしてギアチェンジする。

 でも、ここに問題がひとつある。

 単車のシフトレバーってやつは、変速機のギアボックスから直接生えているに等しい代物なのだ。

 何が言いたいかというと、むきだしの『機械』の一部なのである。

 つまり堅く、ごつい。

 具体的に言うと、シフトレバーを蹴り上げる行為は多くの場合、ひどく堅い。やわな靴だとボロボロになってしまうほどだ。

 だからバイク用ブーツは、この部分が強化されているし、普通の靴に装着して蹴り上げに耐えられるようにするプロテクターも売られているほどだ。

 

 ところで安全靴は現場などでの怪我防止のため、つま先に金属板が入っている。

 これがとても頑丈なもので、当然、単車のシフトの蹴り上げにも平気なのである。

 しかも、ライディング用より圧倒的に安い。下手すると、ひと桁は値段が違う。

 実際、俺に安全靴で乗る事を教えてくれた人は、年季の入った安全靴ユーザーだった。

 

 だけど安全靴はあくまで現場作業用だから、単車で転倒時の安全までは考慮されてない。

 安全第一なら、やっぱりライディング用を買うべきなのだ。

 いやマジで。

 

 ふたりともブーツに変更した。

「歩きづらい……拘束目的?」

「アホなこといってないで乗れ」

「はーい」

 改めてまたがり、エンジンをかけた。

 クラッチを握り、ギアをローにぶちこんだ。

「しっかり捕まってろよ」

「うん!」

 

 

 適度に湿度をまとった山間の細い小道を、レブル250の軽快なエンジン音と共に俺たちは進んでいく。

 ちなみにアイリスは……。

『すごい!きれい!』

 めっちゃうれしそうな声が、ヘルメットの通信機を通して流れてきた。

 ははは、だろうな。

 さっきみた地図によると、この道の奥に湖があるらしい。そこは景観もあり、釣りには最適と書いてあった。

 しかし、この細道……なだらかではあるけど、これ狭いよなぁ。やっぱ車道じゃないのか?

 こんなんメンテどうすんだと思ったら。

「お」

 どうやら対向車きたっぽい、カーブミラーにヘッドライトの光が映ったぞ。

 路肩のふくらんでるとこに寄せて停め、待つ。

『どうしたの?』

「車がきたんだよ……ほら」

『あ』

「な?って、へえ……」

 やってきた車を見た俺は思わず二度見した。

「ミゼットかぁ……だろうな、狭い道だし」

 それは大昔のダイハツ・ミゼットにそっくり……要するに昭和中期の小さな三輪自動車だな。

 まぁ、さすがに2サイクル音はさせてなくて、スーパーカブみたいな音をたてているあたり、俺の記憶から作られたレプリカなんだろうな。

 俺は本物のミゼットに乗った事がないし、音も聴いたことがないから。

 ミゼットとすれ違った。

「おつかれー」

 プッとお礼のホーンを鳴らしてきたので、こっちも手をふって返答しておいた。

 そして再び走り出す。

『ねえパパ』

「ん?」

『だろうなって、何に納得してたの?』

「ああ、この道って狭いと思わないか?」

『狭いと思う』

「そうだろ、こんな細い道じゃあ、普通は車なんて使えない。

 けど、さっきのミゼットなら、横幅たったの1.2mだ。

 だから、なるほどミゼットかって納得したわけさ」

 

 たぶんこの小道、車幅は1.5mくらいしかない。

 はっきりいって、この幅で安全にすれ違えるのは歩行者だけだと言っていい。

 実際、ところどころに退避所があるのは、作った側も狭いと自覚しているって事だろう。

 そりゃあ、ミゼットが役立つわけだわ。

 

 そんな話をしているうちに、小さな峠のようなところを越えたらしい。

 頂上部にある細い隧道を、入り口のところでピッとホーンを鳴らしてから通過すると、その先は。

「うお……これは」

『すっごーい!』

 背中のアイリスが大喜びだが、俺も同感だ。

 こりゃーすごい。

 

 まさにこれは湖。

 立派な大きさの湖が、そこにあった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 一瞬、誰がミゼット運転してんの!?とか思ったけど、そういやアンドロイドが何体か管理してるんだったっけ。
[一言] たっ対向車! 誰が乗ってるの?
感想一覧
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